想定読者
- 営業成績に伸び悩んでおり、新しい突破口を探している営業担当者
- 「話すこと」に自信はあるが、それが成果に結びついていないと感じる方
- 顧客から「信頼されるパートナー」として選ばれたいすべてのビジネスパーソン
結論:二流は製品を売り、一流は解決策を売る。そして解決策は、顧客の口からしか生まれない
「あの営業マンは、口がうまくてすごいな」
もし、あなたがそう評価されているなら、注意が必要です。なぜなら、現代のビジネスにおいて、単に「話がうまい」だけの営業は、残念ながら二流で終わってしまうからです。
情報が溢れる現代、顧客は製品のスペックや機能説明を求めていません。そんなものは、インターネットで調べればすぐに分かります。顧客が本当に求めているのは、自社の課題を深く理解し、最適な「解決策」を提示してくれる信頼できるパートナーです。
そして、その「解決策」のヒントは、すべて顧客の言葉の中に隠されています。一流の営業は、自分が話すことよりも、顧客に話させること、すなわち「聞く」ことに全神経を集中させます。なぜなら、それが顧客の信頼を勝ち取り、成果に繋がる最短ルートだと知っているからです。
なぜ「話がうまい」だけでは、モノが売れない時代なのか?
かつて、情報が限られていた時代では、製品の魅力を雄弁に語れる営業が重宝されました。しかし、時代は変わりました。
雄弁さが生む「売り込まれている」という警戒心
一方的に製品の魅力を語られれば、顧客は「売り込まれている」と直感的に感じ、心のシャッターを下ろしてしまいます。人は、自分で決定したい生き物であり、他人から説得されることを嫌うのです。
二流が陥る「機能説明」という罠
多くの営業が、「自社製品の優れた機能を伝えなければ」という思い込みに囚われています。しかし、顧客が知りたいのは「機能」ではありません。その機能が、自分の「課題」をどう解決してくれるのか、という「価値」だけです。
二流の営業が「話し」、一流の営業が「聞く」3つの理由
理由1:課題の特定精度が、全く違う
二流の営業は、自分の思い込みや仮説に基づいて「きっとこれが課題だろう」と話を進めます。一方、一流の営業は、徹底的にヒアリングすることで、顧客自身も気づいていない「潜在的なニーズ」や「真の課題」を掘り起こします。この課題特定の精度が、提案の質を決定的に左右します。
理由2:信頼関係の構築レベルが、全く違う
二流は、あの手この手で顧客を「説得」しようとします。これは、営業と顧客を対立関係に置く行為です。一方、一流は、顧客を「理解」しようと努めます。顧客は、自分を深く理解してくれる相手を「パートナー」として認識し、絶大な信頼を寄せるのです。
理由3:提案の「納得感」が、全く違う
一流の営業が最後に行う提案は、まるで顧客が自分で考え出したかのような錯覚を覚えるほど、顧客の言葉で構成されています。なぜなら、それは徹底的なヒアリングから生まれた、顧客のためのオーダーメイドの解決策だからです。「まさに、これが欲しかったんだ」という強い納得感が、スムーズな意思決定を促します。
【独自考察】トップセールスは、なぜ「質問」にこだわるのか?
一流の営業は、「聞く」ために「質問」の技術を磨き上げます。それは、質問が単なる情報収集のツールではないことを知っているからです。
質問は、顧客の思考を促し、課題を「自分ごと化」させる
優れた質問は、顧客に「そういえば、なぜうちはこうなっているんだろう?」と考えさせ、課題を自分自身の問題として認識させる力を持っています。営業が解決策を提示するのではなく、顧客自らが質問に答える中で、課題の深刻さや解決の必要性に気づくのです。これにより、顧客は自発的に「変わりたい」と思うようになります。
「聞く」とは、顧客を「教育」するプロセスである
例えば、世界的に有名な営業手法「SPIN話法」は、状況質問(Situation)→問題質問(Problem)→示唆質問(Implication)→解決質問(Need-payoff)という構造になっています。これは、単に聞くだけでなく、質問の順番を工夫することで、顧客の認識を「現状維持」から「課題解決」へと導く、一種の「教育プロセス」なのです。一流の営業は、このプロセスを通じて、自社のソリューションが唯一の解決策であると、顧客に自然な形で気づかせます。
「聞く営業」に変身するための具体的な4ステップ
ステップ1:準備段階で「質問リスト」を作成する
商談に臨む前に、製品説明の練習をするのではありません。顧客のビジネスを調べ、仮説を立て、「何を聞くべきか」という質問リストを作成することに時間を使いましょう。
ステップ2:冒頭で「聞く姿勢」を明確に伝える
商談が始まったら、すぐに製品の話を始めるのではなく、「本日は、御社の〇〇について、ぜひ詳しくお話をお聞かせいただけますでしょうか」と、まずは相手の話を聞きたいという姿勢を明確に伝えます。
ステップ3:「話す:聞く」の比率を「3:7」で意識する
自分が話す時間を意識的に減らし、顧客が話す時間を最大限に確保しましょう。目安は「自分3割、相手7割」です。自分が話している時間が長いと感じたら、それは危険信号です。
ステップ4:要約と確認で「合意」を形成する
顧客の話が一段落したら、「お話を伺っていると、〇〇という点が最も大きな課題、という認識でよろしいでしょうか?」と、自分の理解が正しいかを確認しましょう。この小さな合意形成の積み重ねが、最終的な大きな合意へと繋がります。
【応用編】「聞く力」は、営業以外でも最強の武器になる
この「聞く力」は、営業だけの特殊スキルではありません。
- 商品開発: 顧客の不満や要望を聞くことで、本当に市場に求められる製品が生まれます。
- マーケティング: 顧客が使う言葉や表現を広告やウェブサイトに反映させることで、コンバージョン率は劇的に改善します。
私も、この「聞く力」を信じています。私が開発した「SpreadSite」も、従来のホームページ作成ツールに対する「専門的で難しい」「更新が面倒」といったユーザーの「声」を聞くことから全てが始まりました。専門家の理屈ではなく、使う人のリアルな声こそが、最高のプロダクトを生み出すと確信しています。
よくある質問
Q: 無口な顧客や、あまり話してくれない相手から話を引き出すにはどうすれば?
A: まずは「はい/いいえ」で答えられる簡単な質問から始め、相手が話しやすい雰囲気を作りましょう。そして、相手のわずかな発言の中に含まれるキーワードを拾い上げ、「その点について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?」と、関心を示して深掘りしていくのが有効です。
Q: 予算や決裁権限など、聞きにくいことはどう質問すれば良いですか?
A: 単刀直入に聞くのではなく、「もし仮に、この課題を解決するご提案を差し上げた場合、最終的なご判断はどなたがされることになりますか?」といった仮定の話や、「一般的に、皆様このくらいの規模の投資で始められることが多いのですが」といった一般論を交えながら聞くと、相手は答えやすくなります。
Q: 傾聴しすぎると、商談時間が足りなくなり、製品をアピールできません。
A: 傾聴は、時間を無駄にすることではありません。むしろ、最初に課題を正確に特定することで、無駄な説明を一切省き、最も響くポイントだけに絞って製品をアピールできるため、結果的に商談時間は短縮されます。
Q: 結局、製品の良さをアピールしないと売れないのではないでしょうか?
A: もちろん、最終的には製品の価値を伝える必要があります。しかし、そのタイミングが重要です。顧客が自らの課題を深く認識し、「解決策を知りたい」と心から思った後でなければ、どんなに優れた製品アピールも響きません。「聞く」のは、その最高の舞台を整えるための準備なのです。
筆者について
記事を読んでくださりありがとうございました! 私はスプレッドシートでホームページを作成できるサービス、SpreadSiteを開発・運営しています! ホームページでお困りの方がいたら、ぜひご検討ください! https://spread-site.com