逆転の発想:売ってから作る方が売れやすい理由
本日は、多くの開発者が思わず「逆だろ!!」とツッコミたくなるような話をしてみたいと思います。それは「作ってから売るよりも売ってから作った方が売れやすい」という考え方です。
一見すると常識に反するこの手法ですが、実は多くの成功事例に裏打ちされた確実な方法なのです。
従来の「作ってから売る」アプローチの問題点
一般的な開発の流れ
これまで多くの開発者が取ってきたアプローチは以下のような流れです:
- アイデアを思いつく
- 商品やサービスを開発する
- 完成後に「こんな商品作りました、どうですか?」と売り込む
この流れは確かに自然で、多くの人が「当たり前」だと考えているでしょう。
なぜ「作ってから売る」は失敗しやすいのか
しかし、この従来のアプローチには大きな落とし穴があります。それは作り手の自分よがりな発想に陥りやすいということです。
開発者は往々にして以下のような思考パターンに陥りがちです:
- 既存サービスの一部を改良すれば売れるだろう
- この技術を使えば競合に勝てるはず
- 自分が欲しいと思うものは他の人も欲しがるはず
しかし現実は厳しく、このような発想から生まれたアイデアは意外と刺さらないことが多いのです。買ってもらえない、お金を出してまで使いたいほどのソリューションではない、というのがほとんどのケースです。
時間とお金の無駄を防ぐために
作り手が自分よがりなものを作ってしまいがちなのは、ある意味で自然な現象です。しかし、作るのに使った時間やお金を無駄にしないためには、この思考パターンから脱却する必要があります。
「売ってから作る」の具体的な実践方法
先にお客さんを見つけるということ
「売ってから作る」とは、文字通り先にお客さんを見つけるということです。特にサービス開発や事業開発を考えている方は、「こんなものを作ったら売れるんじゃないか」と考えてすぐに作り始めるのではなく、まずアイデアを人に話してみることが重要です。
アイデア検証の重要性
作る前にアイデアを検証するために、以下のような人たちに話を聞いてみましょう:
- お客さん候補になりそうな方
- その課題を抱えていそうな方
- 業界に詳しい知り合い
- 様々な背景を持つ人たち
もちろん、すぐにカタチにしてみる行動力も大切です。これはケースバイケースで判断する必要がありますが、まずは人に話すことから始めることを強く推奨します。
アイデアを話すことのメリット
自分のアイデアが正しかったとしても、間違っていたとしても、人に聞きに行く・話すことには大きなメリットがあります:
アイデアが良かった場合:
- ニーズがあることを確認できる
- そのまま作り始める自信を得られる
- 初期ユーザー候補を獲得できる
アイデアがイマイチだった場合:
- 時間と労力の無駄を防げる
- もう少し考え直すきっかけになる
- その場でより良いアイデアをもらえる可能性がある
いずれにしても、人に聞きに行く、アイデアを話すことは、アイデアの出し方や発展にもつながるので非常におすすめです。
受託開発:「売ってから作る」の典型例
受託開発への偏見を捨てよう
個人開発者や開発者の方にぜひおすすめしたいのが受託開発です。
受託開発と聞くと、「ビジネスとして堅いけどあまり面白くない」というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし、私は受託開発に非常に肯定的な立場を取っています。
受託開発が「売ってから作る」の典型である理由
受託開発は売ってから作るの典型的な例です。クライアント企業が「このサービスが欲しい」「この課題を解決したい」と明確にニーズを示し、契約を結んでから開発が始まるからです。
開発者のアイデアレベルの現実
正直に言うと、開発したい前提で出てくる私たちのアイデアのレベルは、ほとんどが実用的ではないのが現実です。
- 全然刺さらない
- 実際には使えない
- 誰かがお金を払ってまでそれを使いたいか?と言われると使わない
こんなサービスになりがちです。これは私以外にも、多くの開発者が経験していることではないでしょうか。
受託開発から学べること
一方、受託開発で扱うのは企業が安くないお金をかけてまで開発したいと判断したサービスです。これは非常に参考になります。
たとえ受託したサービスがあまり筋が良くなかった場合でも、他者目線でそれを見て開発したり、提案をしてみたりすることには大きな意味があります。
受託開発での学びを活かす方法
受託開発で学んだ経験や技術、そして何より他者視点での課題発見能力を活かして、自分のアイデアを練り直してみてください。
この流れで開発を始めると、精度の高い課題を持ってこれるようになります。自分の経験上も、いくつかの受託開発を経験し、現在進行形でも取り組んでいますが、アイデアの出し方として非常に有効だと感じています。
受託開発で身につく重要なスキル
1. 市場ニーズの見極め力
受託開発を通じて、「本当に求められているもの」と「作り手が作りたいもの」の違いを肌で感じることができます。
2. 他者視点での課題発見
自分の視点だけでなく、クライアントの立場、エンドユーザーの立場など、多角的に物事を見る力が身につきます。
3. 実用性重視の開発思考
技術的な面白さよりも、実際に使われる・役に立つという観点での開発思考が身につきます。
4. コミュニケーション能力
クライアントとの要件定義や提案を通じて、技術者以外の人との効果的なコミュニケーション能力が向上します。
5. プロジェクト管理能力
決められた予算と期間内で確実に成果を出すプロジェクト管理能力が身につきます。
実践のための具体的なステップ
ステップ1:アイデアの言語化
まず、あなたのアイデアを他人に説明できるレベルまで言語化してください。
ステップ2:ターゲットの特定
そのアイデアが解決する課題を抱えていそうな人を具体的に特定しましょう。
ステップ3:ヒアリングの実施
特定したターゲットに実際に話を聞きに行きます。この時、アイデアを押し付けるのではなく、まず課題感を聞くことから始めてください。
ステップ4:フィードバックの分析
得られたフィードバックを冷静に分析し、アイデアの修正点を見つけましょう。
ステップ5:改良と再検証
アイデアを改良したら、再度ヒアリングを行い、より精度の高い検証を重ねていきます。
よくある質問
Q: アイデアを話すと盗まれてしまいませんか?
A: この心配をする方は多いのですが、実際にはアイデア単体の価値はそれほど高くありません。重要なのは実行力と継続的な改善です。むしろアイデアを秘密にして検証せずに開発を進める方がリスクが高いといえます。
Q: 受託開発の案件はどうやって見つければいいですか?
A: 最初はクラウドソーシングサイトや知人の紹介から始めることをおすすめします。小さな案件から実績を積み重ねて、徐々に良い案件を獲得できるようになります。
Q: 個人開発者でも受託開発は可能ですか?
A: もちろん可能です。個人だからこそのフットワークの軽さやコストの安さは大きな武器になります。最初は自分のスキルレベルに合った案件から始めましょう。
Q: 技術力に自信がない場合はどうすればいいですか?
A: 受託開発は学習しながら報酬を得られる絶好の機会でもあります。スキルレベルを正直に伝えた上で、学習期間を設けることを提案すれば、多くのクライアントは理解を示してくれます。
Q: ヒアリングで良い反応が得られない場合は?
A: それは非常に価値のあるフィードバックです。市場ニーズが低い、ターゲットが間違っている、解決策がズレているなどの可能性があります。早めに方向転換できることがこの手法の大きなメリットです。
Q: 「売ってから作る」と「作ってから売る」、どちらを選ぶべきですか?
A: 特に経験の浅い開発者や、これまで思うような結果が出せていない方には「売ってから作る」アプローチを強く推奨します。行動力も大切ですが、方向性を間違えると努力が無駄になってしまいます。
Q: 受託開発と自社開発のバランスはどうすれば?
A: 最初は受託開発で経験を積み、市場感覚を身につけてから自社開発の比重を高めていくのがおすすめです。受託開発で得た知識とネットワークは自社開発にも大いに活かせます。
Q: 短期間でスキルアップするコツはありますか?
A: 受託開発では様々な技術や業界に触れる機会があります。一つ一つのプロジェクトで新しい技術にチャレンジし、学んだことを次の案件に活かすサイクルを作ることが重要です。
まとめ:成功への近道は顧客の声から始まる
「売ってから作る」というアプローチは、一見すると常識に反するように思えるかもしれません。しかし、これこそが多くの成功事例に共通する重要な要素なのです。
受託開発は、この考え方を実践的に学べる絶好の機会です。企業が実際にお金を払う価値があると判断した課題に取り組むことで、真の市場ニーズを理解できるようになります。
次回新しいプロジェクトを始める際は、いきなりコードを書き始めるのではなく、まずは潜在的な顧客との対話から始めてみてください。その小さな変化が、あなたの開発者としての成功確率を大幅に向上させることになるでしょう。
アイデアの出し方として、ぜひこの手法を参考にしてみてください。きっと今まで以上に価値のあるサービスを作れるようになるはずです。