想定読者
- 若手社員の採用に苦戦している中小企業・スタートアップの経営者
- 「最近の若者は根性が足りない」「俺たちの若い頃は…」と、つい愚痴をこぼしてしまうマネージャー層
- これからの時代に、本当に人が集まり、定着する組織を作りたいと考えているすべてのリーダー
結論:若者は「夢」を諦めているのではない。「現実」とのバランスを見ているだけだ
「うちはまだ小さいから、給料はたくさん出せない。でも、デカい夢がある。一緒に見ないか?」
かつては、この言葉に心を動かされた若者がいたかもしれません。しかし、令和の時代において、この殺し文句は、もはや通用しないどころか、若者から「やりがい搾取だ」と見なされる危険すらあります。
彼らは、決して夢や情熱を否定しているのではありません。むしろ、その夢の実現性と、自分の人生を預けるに値するかどうかを、驚くほど冷静に、そして現実的に見極めているのです。
彼らが求めているのは、雲を掴むような大きな夢よりも、日々の仕事における**「納得感」と「成長実感」**。この記事では、その具体的な中身と、小さな会社でも実践できる組織づくりのヒントを解説します。
なぜ「夢ややりがい」だけでは通用しなくなったのか?
終身雇用の崩壊:会社に人生を捧げる時代の終わり
もはや、一つの会社に定年まで勤め上げるのが当たり前の時代ではありません。若者たちは、自分のキャリアは自分で築くものだと考えています。会社は「忠誠を誓う対象」ではなく、「自分の市場価値を高めるためのプラットフォーム」の一つ。だからこそ、その会社で働くことが、自分の将来にとって具体的にどうプラスになるのかをシビアに判断します。
情報の民主化:隣の芝生は、いつでも青く見える
SNSや口コミサイトを見れば、他社がどれくらいの給料を払い、どんな福利厚生があり、どのような働き方をしているのか、簡単に知ることができます。「うちの業界では、これが当たり前だ」という常識は、もはや通用しません。魅力的な選択肢が可視化された今、相対的に魅力のない会社からは、人が去っていくだけです。
価値観の多様化:「会社のために」から「自分の人生のために」へ
仕事だけが人生のすべて、という価値観は過去のものとなりました。プライベートの時間、趣味、家族、副業…。多様な価値観を持つ彼らにとって、仕事はあくまで「自分の人生を豊かにするための一要素」。ワークライフバランスを犠牲にするような働き方は、敬遠されて当然なのです。
令和の若者が本当に求める「4つの要素」
では、彼らは具体的に何を求めているのでしょうか。それは、以下の4つに集約されます。
①公正な報酬と評価
まず大前提として、生活を維持し、将来への不安なく働けるだけの「公正な報酬」は不可欠です。その上で、自分の貢献がどのように評価され、給与に反映されるのか、そのプロセスが透明であることが求められます。「社長のさじ加減」ではなく、納得感のある評価制度が、信頼の土台となります。
②成長できる環境
「この会社にいれば、市場価値の高いスキルが身につく」という実感は、金銭的な報酬と同じくらい、あるいはそれ以上に強力な動機付けになります。挑戦的な仕事を任せ、失敗を許容し、適切なフィードバックを与える文化。書籍購入費やセミナー参加費の補助など、具体的な学習支援も有効です。
③心理的安全性
「こんなことを言ったら、馬鹿にされるんじゃないか」「失敗したら、激しく叱責されるんじゃないか」といった不安がなく、誰もが安心して自分の意見を言える職場。上司や同僚との人間関係のストレスが少なく、自分らしくいられる環境は、メンタルヘルスが重視される現代において、極めて重要な要素です。
④時間と場所の柔軟性
画一的な働き方の強制は、優秀な人材を遠ざけます。個人の事情や価値観を尊重し、リモートワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方の選択肢を提供できる企業が選ばれています。
小さな会社でも「選ばれる組織」になるために
「大企業のような条件は提示できない」と諦める必要はありません。小さな会社だからこそできることがあります。
- 給与以外の報酬を設計する: 社員に大きな裁量権を与え、自分の判断で仕事を進める経験を積ませる。経営者と近い距離で働き、意思決定のプロセスを間近で見せる。これらは、大企業では得難い、貴重な「経験報酬」です。
- 徹底的に情報をオープンにする: 会社の売上、利益、抱えている課題、そして経営者自身の悩みまで、包み隠さず共有する。誠実な情報公開は、社員の当事者意識を育み、強い信頼関係を築きます。
- 「辞めること」を前提とした関係性を築く: 「うちに一生いろ」ではなく、「いつかうちを卒業して、どこに行っても通用する人材になってほしい」というスタンスで、社員のキャリア形成を本気で応援する。その姿勢こそが、逆説的に「この会社でもっと頑張りたい」という気持ちを引き出します。
それでも、経営者は「夢」を語るべきか?
はい、語るべきです。しかし、順番が重要です。
社員が安心して生活でき、成長を実感でき、自分らしく働ける。そんな信頼関係の土台を築いた上で語る「夢」だからこそ、人の心を動かすのです。そして、語るべきは「俺の夢」についてきてくれ、ではありません。
会社のビジョン(夢)と、そこで働く個人の成長や目標が、どうすれば重なるのか。その重なりしろを、社員一人ひとりと一緒に探し、「俺たちの夢」として語る。それこそが、令和の時代に求められるリーダーの姿です。
よくある質問
Q: 大企業のような高い給料は、どうしても払えません。
A: 無理に合わせる必要はありません。重要なのは「なぜ、その給与額なのか」を、事業の状況や評価制度と合わせて、誠実に説明できることです。そして、給与以外の魅力(成長環境、裁量権、働きやすさなど)を、どれだけ具体的に提示できるかが鍵になります。
Q: リモートワークを導入すると、サボる社員が出そうで不安です。
A: その不安は、「管理しないと人は働かない」という性悪説に基づいています。人を信じ、明確な役割と目標を与え、成果で評価する。性善説に基づいたマネジメントへの転換が求められています。それができないのであれば、残念ながら、優秀な人材はあなたの会社を選ばないでしょう。
Q: 厳しいことを言うと、すぐに辞めてしまうのではないかと心配です。
A: 「厳しいこと」と「人格否定」を混同してはいけません。相手の成長を心から願った、客観的な事実に基づくフィードバック(指摘)は、むしろ若者が求めているものです。感情的に怒鳴ったり、他の人と比較したりするのではなく、あくまで「行動」に対して、冷静に、具体的に伝えることが重要です。
Q: 会社のビジョンや理念が、なかなか社員に浸透しません。
A: それは、ビジョンが「他人事」になっているからです。ビジョンを作る過程に社員を巻き込む、ビジョンと日々の業務の繋がりを繰り返し説明する、ビジョンに沿った行動をした社員をきちんと評価するなど、ビジョンを「自分ごと」化するための、地道な働きかけが必要です。
筆者について
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