想定読者
- 飲み会や雑談の場で、面白い話をしようとしてスベってしまうビジネスパーソン
- プレゼンや商談で、聞き手の興味を引きつけ、記憶に残る話をしたい方
- 話が長い、要点が分からない、と指摘されたことがある経営者
結論:面白い話とは、面白い出来事の話ではなく、出来事を面白く伝える「技術」の話です。
あなたの話が面白くないのは、あなたの人生に面白い出来事が起きていないからではありません。それは、起きた出来事を物語として再構築し、聞き手の脳内に感情のジェットコースターを作り出すための、科学的な構成術を知らないだけなのです。面白い話は、才能ではなく、誰でも後天的に習得できるスキルです。
なぜ、あなたの話は「スベる」のか?物語なき、ただの出来事報告
面白い話と、ただの出来事報告の決定的な違い
「この前、出張で大阪に行ったんですよ。そしたら、駅で偶然、高校時代の同級生に会って。いやー、びっくりしましたね」。
多くの人は、このような話し方をします。これは、面白い話ではありません。単なる出来事の報告です。この話には、聞き手の感情を揺さぶるための仕掛けが、一つも施されていません。
聞き手の脳内で何が起きているか。それは、「へえ、そうなんだ」という、極めて低いレベルの認知処理だけです。感情は一切動かず、記憶にも残りません。
一方で、話が面白い人は、同じ出来事を経験したとしても、全く異なる語り方をします。彼らは、無意識のうちに、あるいは意識的に、聞き手の脳をハッキングするための、ある普遍的な物語の構成に沿って、話を再構築しているのです。
「すべらない話」の構造分析。面白い話の黄金フレームワーク
テレビ番組「人志松本のすべらない話」は、面白い話の構造を学ぶための、最高のケーススタディです。あの番組で語られる話の多くが、実はある共通のフレームワークに沿って構成されています。
ステップ1:フリ。「日常」と「共感」の舞台設定
面白い話は、必ずフリから始まります。フリの役割は、物語の舞台設定を行い、聞き手に共感の土台を築かせることです。
「僕、普段から結構忘れ物が多いタイプなんですけど…」
「うちの会社の〇〇部長って、普段はすごく厳しい人で有名じゃないですか…」
このフリは、聞き手に「ああ、分かる分かる」「うんうん、それで?」と、物語の世界にスムーズに入ってもらうための導入です。ここで重要なのは、非日常的な話ではなく、誰もが経験したことがあるような、あるいは容易に想像できる日常的な風景を描写することです。この共感の土台があるからこそ、その後に起こる非日常的な出来事が際立つのです。
ステップ2:緊張。「違和感」と「期待」の醸成
次に、その平穏な日常に、小さな違和感や異変を投入します。これが、物語における緊張を生み出すプロセスです。
「その日も、案の定スマホを家に忘れて出かけたんですけど、なぜか全く焦らなかったんですよ。むしろ、清々しい気分で…」
「その厳しい部長が、その日に限って、朝からやけにニコニコしていて…」
この違和感は、聞き手の脳内に「ん?何かがおかしい」「これから何が起こるんだ?」という予測活動を強制的に引き起こします。物語はここで一度坂道を上り始め、聞き手の期待感は高まっていきます。
ステップ3:オチ。「予測の裏切り」と「緊張の解放」
そして、物語はクライマックスであるオチへと向かいます。面白いオチの本質は、ただ面白い結末であることではありません。それは、ステップ2で聞き手の脳内に醸成された予測を、鮮やかに裏切ることです。
この予測と結果のギャップこそが、驚きや笑いといった強い感情の源泉なのです。
「…清々しい気分で会社に着いて、カバンを開けたら、スマホじゃなくてテレビのリモコンが入ってたんですよ」
「…部長がニコニコしていた理由は、ズボンのチャックが全開だったからなんです」
このオチによって、それまで高まっていた緊張が一気に解放されます。この緊張から緩和への急激な落差が、私たちの脳に強い快感をもたらす。これが、面白い話の基本的な科学的メカニズムです。
あなたの話を「すべらない話」に変える3つの技術
この黄金フレームワークを、あなたの話に応用するための具体的な技術を紹介します。
技術1:ディテールの描写で「解像度」を上げる
聞き手を物語の世界に引き込むためには、話の解像度を上げることが不可欠です。
「この前、カフェに行ったんですよ」ではなく、
「この前、駅前の、いつも混んでるスターバックスの、窓際の席に座ったんですよ」
このように、具体的な固有名詞や情景描写を加えるだけで、聞き手は頭の中にその風景を鮮明にイメージすることができます。このイメージの共有こそが、共感の第一歩です。
技術2:登場人物になりきる「一人称の感情」
出来事を客観的に報告するのではなく、その時のあなたの感情を、一人称で語りましょう。
「同級生に会って、びっくりしました」ではなく、
「え、嘘だろ?って、思わず声が出そうになって。心臓がバクバクしてるのが自分でも分かりました」
このように、その瞬間の心の声や身体的な反応を語ることで、聞き手はあなたに感情移入し、物語の当事者として、ハラハラドキドキを共有してくれるのです。
技術3:不要な情報を削ぎ落とす「編集能力」
面白い話とは、足し算ではなく、徹底的な引き算によって生まれます。物語の本筋であるフリ→緊張→オチに関係のない情報は、聞き手にとってはノイズでしかありません。
「その同級生は、確か鈴木って名前で、高校時代は野球部で…」といった、オチに全く関係のない情報は、たとえ事実であっても、容赦無くカットする。この編集能力こそが、話が長いと言われる人と、面白い話ができる人を分ける、決定的な違いです。話す前に、頭の中で「この情報は、オチを際立たせるために本当に必要か?」と自問する癖をつけましょう。
よくある質問
Q: 話にオチがない、と言われるのですがどうすれば良いですか?
A: それは、話の最後に面白い結末がない、という意味ではありません。多くの場合、話の構造に「フリ」と「緊張」がなく、聞き手がどこに向かっているのか分からないまま、単なる出来事報告で終わってしまっている、ということです。まずは、話の最初に共感できる「フリ」を作ることを意識してみてください。
Q: 面白い話をするには、ユーモアのセンスが必要ですか?
A: 必ずしも必要ではありません。面白い話には、笑える話だけでなく、感心する話、意外な話、少し怖い話など、様々な種類があります。重要なのはユーモアではなく、聞き手の予測を裏切り、感情を動かす「物語の構造」です。
Q: プレゼンや商談で、この技術はどう応用できますか?
A: 非常に有効です。例えば、プレゼンの冒頭で「フリ」として顧客が抱える共通の課題を提示し、「緊張」としてその課題がもたらす深刻な未来を語り、「オチ」として自社の製品がその問題をいかに鮮やかに解決するかを提示する。この構成は、聞き手の当事者意識を最大限に高めます。
Q: 途中で話の着地点が分からなくなり、しどろもどろになってしまいます。
A: それは、話す前に「オチ」が明確に定まっていないことが原因です。話が上手い人は、必ず話の最後(オチ)から逆算して、そこに至るまでの最短ルートを設計しています。まずは、この話で一番伝えたい結末は何か、を一言で決めることから始めましょう。
Q: そもそも、話すような面白いネタがありません。
A: 面白いネタは、探すものではなく「見つける」ものです。日常に潜む小さな違和感や、自分の失敗談、ちょっとした発見などにアンテナを張る癖をつけましょう。「これは話のネタになるかもしれない」という視点で日常を観察するだけで、世界は面白いネタで溢れていることに気づくはずです。
筆者について
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