想定読者

  • 商品やサービスの価格設定に悩んでいる経営者、マーケター
  • 顧客の購買心理を理解し、より効果的な販売戦略を学びたい方
  • 「松竹梅」の法則の裏にある、人間の心理的なメカニズムを知りたい方

結論:人は「極端」を避ける。真ん中を選ぶ心理を理解し、顧客を「賢く」誘導せよ

あなたは、レストランでメニューを見た時、あるいは家電量販店で製品を選んでいる時、なぜか真ん中の価格帯のものを無意識に選んでしまう、という経験はありませんか?

これは、あなたの優柔不断さのせいではありません。人間の心理に深く根ざした**「おとり効果」、別名「極端回避性」**と呼ばれる心理現象が働いている証拠です。3つ以上の選択肢が提示された場合、人は極端な選択肢(最も高価、最も安価)を避け、真ん中の選択肢を選びやすいというものです。

この記事では、この強力な「おとり効果」のメカニズムを解き明かし、顧客の購買心理を巧みに誘導し、売上を最大化する価格戦略の秘密を解説します。ただし、その利用には倫理的な配慮と、顧客を欺かない誠実さが不可欠です。

「松竹梅」の法則は、なぜ強力なのか?おとり効果の正体

「極端回避性」とは何か?

行動経済学の分野で提唱された概念で、人は、選択肢が複数ある場合、最も極端な選択肢(最高級品や最低価格品など)を避け、中間の選択肢を選びやすいという心理傾向を指します。これは、「損をしたくない」「失敗したくない」という心理や、意思決定の負担を減らしたいという欲求に根ざしています。

身近な例で理解する

  • レストランのメニュー: 「松(高価)」「竹(中価格)」「梅(安価)」の3つのコースがあると、多くの人が「竹」を選びます。松は高すぎる、梅は安すぎて質が不安、という心理が働くためです。
  • 家電量販店の製品ラインナップ: 性能や価格が異なる3つのモデルがあると、真ん中のモデルが最も売れる傾向にあります。

おとり効果が、顧客の購買行動に与える「3つの心理メカニズム」

メカニズム1:損失回避の心理

人は、何かを得る喜びよりも、何かを失うことへの痛みを強く感じます。高すぎる選択肢を選んで「損したくない」、安すぎる選択肢を選んで「失敗したくない」という心理が働き、結果的にリスクの少ない真ん中の選択肢を選びがちになります。

メカニズム2:意思決定の負担軽減

選択肢が多いと、人は迷い、意思決定に大きなエネルギーを消費します。真ん中の選択肢を選ぶことは、深く考える手間を省き、思考のエネルギーを節約できるため、心理的な負担が軽減されます。

メカニズム3:相対的な価値の認識

比較対象があることで、真ん中の選択肢の価値が相対的に高く見えます。例えば、非常に高価な「松」があることで、「竹」が「意外とリーズナブルで、しかも質も良さそうだ」と感じられるようになります。これは、単独で提示された場合よりも、魅力的に映る効果があります。

おとり効果をビジネスに応用する具体的な方法

商品ラインナップの設計

最も売りたい商品やサービスを「竹」の位置に配置し、その上下に「松」と「梅」の選択肢を置きます。これにより、顧客の視線を自然と「竹」に誘導し、購入を促すことができます。

価格設定

「松」の価格を意図的に高く設定することで、「竹」の価格をより魅力的に見せる効果があります。ただし、「松」も全く売れないような価格ではなく、ごく一部の顧客には選ばれるような、現実的な価格設定にすることが重要です。

メニュー構成

飲食店でのコース料理、サービスのプラン、ソフトウェアの料金体系など、様々な場面で応用できます。顧客が迷った時に、自然と誘導したいプランを選んでもらえるように設計しましょう。

ウェブサイトでの表示

ウェブサイトのプラン比較ページなどで、推奨プランを「人気No.1」や「おすすめ」として強調表示するだけでなく、その上下に高価格帯と低価格帯のプランを配置することで、おとり効果を狙うことができます。

倫理的配慮と、信頼を失わないための注意点

おとり効果は強力なツールですが、その利用には細心の注意が必要です。誤った使い方をすると、顧客の不信感を招き、ブランドを毀損する可能性があります。

「おとり」の選択肢は、本当に価値のないものであってはならない

「おとり」として設定する選択肢も、顧客にとって全く価値のないものであってはなりません。あくまで、顧客が「選択肢の一つ」として検討に値するものでなければ、不信感に繋がります。

顧客を欺く目的で利用しない

おとり効果は、顧客を「賢く」誘導するためのものであり、顧客を「欺く」ためのものではありません。顧客に不利益を与えたり、不必要なものを買わせたりする目的で利用することは、絶対に避けるべきです。

長期的な信頼関係を築くためには、誠実さが不可欠

短期的な売上を追求するあまり、顧客に不信感を与えてしまえば、長期的な信頼関係は築けません。常に顧客の利益を第一に考え、誠実なコミュニケーションを心がけましょう。

よくある質問

Q: 「おとり」の選択肢は、売れなくても良いのですか?

A: はい、売れなくても構いません。おとりの選択肢の主な目的は、他の選択肢の魅力を引き立てることだからです。ただし、全く売れないと、その選択肢の存在意義が薄れてしまうため、ごく一部の顧客には選ばれるような、現実的な価格設定にすることが望ましいです。

Q: 顧客に「操作されている」と思われませんか?

A: 倫理的な範囲で適切に活用すれば、そう思われることはありません。顧客は、自分にとって最適な選択肢を求めています。おとり効果は、その選択を助けるための「ヒント」として機能します。不誠実な利用や、過度な誘導は、すぐに顧客に見抜かれてしまいます。

Q: サービスや商品が少ない場合でも、おとり効果は使えますか?

A: はい、使えます。例えば、商品が2種類しかない場合でも、意図的に「おとり」となるような、少し割高なオプションやセットプランを設定することで、もう一方の商品の魅力を引き立てることができます。

Q: 価格設定以外でも、おとり効果は応用できますか?

A: はい、可能です。例えば、採用活動において、あえて少しハードルの高いポジションを提示することで、本命のポジションの魅力を引き立てる。あるいは、セミナーのコース設定で、最も参加してほしいコースを真ん中に配置するなど、様々な場面で応用できます。

筆者について

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