想定読者

  • 既存施策の成果が鈍ってきたと感じる経営者
  • 頑張っているのに伸びない組織に悩む管理職
  • 成長の頭打ちを打開する考え方を知りたい事業者

結論

同じ努力を続けても、成果は同じようには増えません。ある地点を超えると、追加の努力に対する成果が小さくなるからです。これが収穫逓減の法則です。

最初は効いた施策が、途中から鈍る。広告費を増やしても売上の伸びが追いつかない。残業を増やしても生産量が伸びない。こうした現象は、気合い不足ではありません。同じやり方の限界です。

だから必要なのは、もっと頑張ることではありません。努力の向き先を見直すことです。

収穫逓減の法則とは?

収穫逓減の法則とは、ある要素を追加し続けても、そこから得られる成果の増加分が次第に小さくなる考え方です。

もともとは農業の考え方です。限られた土地に労働や肥料を増やしていくと、最初は収穫が増えます。ですが、ある地点を超えると伸びが鈍り、やがて効率が落ちます。

この考え方はビジネスでもそのまま当てはまります。

たとえば、

  • 広告費を増やす
  • 営業人数を増やす
  • 労働時間を増やす
  • 既存商品に投資を続ける

といった行動です。

最初は成果が出ます。ですが、同じやり方を続けるほど、追加分の成果は小さくなります。ここで多くの会社は、成果が鈍った理由を努力不足だと考えます。ですが実際には、同じ投入先に資源を集めすぎていることが原因です。

成果が鈍る会社の共通点

収穫逓減は、特別な会社だけに起きるものではありません。むしろ、うまくいった会社ほど陥ります。成功体験があるからです。

成功施策への依存

一度うまくいった施策は、社内で正解になります。すると、同じ施策に予算も人も集まり続けます。

たとえば、

  • リスティング広告で伸びたから広告費を増やし続ける
  • 展示会で成果が出たから毎回同じ出展を続ける
  • 特定商品が売れたからその商品だけを押し続ける

といった動きです。

最初は合理的です。ですが、同じ施策はやがて飽和します。反応の良い顧客を取り切った後は、効率が落ちます。それでも過去の成功が強いほど、やり方を変えられません。

努力の量で解決しようとする

成果が鈍ると、多くの組織は量を増やします。

  • もっと広告を出す
  • もっと電話をかける
  • もっと会議をする
  • もっと残業する

ですが、ここで必要なのは量ではありません。投入量を増やしても、追加成果が小さくなっているなら、効率は悪化します。

この段階で量を増やすと、利益率が落ち、現場も疲弊します。頑張っているのに報われない感覚が広がるのは、この構造があるからです。

収穫逓減が起きる3つの領域

収穫逓減は、会社のあらゆる場所で起きます。特に影響が大きいのは、マーケティング、労働、事業投資です。

マーケティング投資

広告や販促は、最初ほど効きます。反応の良い層から取れるからです。ですが、予算を増やすほど、反応の薄い層にも届けることになります。

その結果、

投入先初期後半
広告費少額でも成果が出る追加費用に対する成果が鈍る
SNS運用新鮮さで反応が出る同じ訴求では反応が落ちる
セール施策短期売上が伸びる値引き待ちが増える

といった変化が起きます。

数字だけでなく、追加投資に対する伸び率を見ることが重要です。

労働時間

長く働けば成果が増えるのは途中までです。一定ラインを超えると、集中力が落ち、判断ミスが増え、手戻りも増えます。

その結果、

  • 1時間あたりの生産量が落ちる
  • ミス対応で余計な時間がかかる
  • 離職や疲弊で組織全体の損失が増える

といった問題が出ます。

労働時間の追加は、ある地点から利益ではなくコストになります。

既存事業への投資

成功事業にも寿命があります。市場が伸びる時期は、投資がそのまま成果につながります。ですが、成熟すると話は変わります。

  • 市場が飽和する
  • 競合が増える
  • 差別化が難しくなる
  • 値下げ圧力が強まる

こうなると、同じ商品に同じ投資を続けても伸びません。にもかかわらず、過去の主力事業ほど予算が集まり続けます。ここで会社全体の成長が鈍ります。

頭打ちを抜ける戦略転換

収穫逓減を避けることはできません。ですが、早く気づけば打ち手はあります。必要なのは、同じ場所に資源を積み増すことではなく、配分を変えることです。

追加成果で判断する

見るべきなのは、売上の総額だけではありません。追加で入れた資源に対して、どれだけ成果が増えたかです。

たとえば、

  • 広告費を10万円増やして売上はいくら増えたか
  • 人員を1人増やして粗利はいくら増えたか
  • 残業時間を増やして生産量はどれだけ伸びたか

といった見方です。

総額だけを見ると、伸びているように見えることがあります。ですが、追加成果で見ると、すでに鈍っていることがよくあります。

投資先を分散する

ひとつの施策に頼り切ると、逓減の影響をまともに受けます。だから投資先を分散します。

たとえば、

  • 広告だけでなく紹介導線も育てる
  • 既存商品だけでなく新商品も試す
  • 既存顧客向け施策と新規獲得施策を分ける

といった配分です。

分散の目的は保険ではありません。次の伸びしろを探すことです。

次の柱を早く育てる

最も危険なのは、今の事業が鈍ってから次を探すことです。その時には余力が減っています。

だからこそ、主力事業がまだ回っているうちに、

  1. 小さく新施策を試す
  2. 新商品を検証する
  3. 新チャネルを育てる

という動きが必要です。

次の柱は、困ってから作るものではありません。余力がある時に育てるものです。

よくある質問

Q: 収穫逓減が始まったかどうかは何で判断できますか?

A: 追加投資に対する成果の伸びで判断します。広告費、人件費、労働時間を増やしても、増加分の成果が小さくなっているなら、収穫逓減が始まっています。

Q: 成果が鈍った時は努力不足ではないのですか?

A: 努力不足とは限りません。同じ投入先に資源を集め続けると、追加成果は小さくなります。その段階では、量より配分の見直しが必要です。

Q: 中小企業でもこの考え方は必要ですか?

A: 必要です。むしろ資源が限られる中小企業ほど重要です。効率が落ちた施策に資源を入れ続けると、打てる手が減ります。

Q: 既存事業がまだ利益を出していても新しいことを始めるべきですか?

A: 始めるべきです。利益が出ている時こそ、次の柱を育てる余力があります。鈍ってからでは遅れます。

Q: 収穫逓減を完全に防ぐ方法はありますか?

A: 完全には防げません。ですが、早く気づき、追加成果で判断し、投資先を分散すれば、成長の鈍化を小さくできます。

筆者について

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