想定読者
- 社員が受け身で、組織が前に進まないと感じている経営者
- 任せても自走せず、結局自分が抱え込んでしまうリーダー
- 主体性のあるチームを作りたいマネージャー
結論
社員に当事者意識がないのではありません。当事者意識が生まれない組織になっているだけです。
仕事の目的が見えない。判断材料がない。決める権限もない。失敗すると責められる。この環境で主体的に動く人は増えません。むしろ、動かないほうが合理的です。
当事者意識は、気合や責任感で生まれるものではありません。情報、裁量、評価の設計で決まります。社員が動かない会社には、必ず構造上の理由があります。
社員が動かない会社の共通点
社員が受け身になる会社には、似た特徴があります。本人の性格ややる気の問題に見えても、実際には組織の作り方に原因があります。
ひとつは、仕事の意味が共有されていないことです。何のための業務なのか、どこにつながるのかが見えないと、仕事はただの作業になります。作業になった瞬間、人は最低限しか動きません。
もうひとつは、責任だけ渡して権限を渡していないことです。任せたと言いながら、判断は上司が握っている。やり方も細かく決められている。この状態では、自分で考える余地がありません。
さらに、失敗への反応も大きく影響します。挑戦した結果より、失敗した事実だけが強く責められる会社では、誰も前に出ません。安全策だけが残ります。
社員が動かない会社には、
- 仕事の目的が共有されていない
- 判断に必要な情報が届いていない
- 権限がなく責任だけ重い
- 失敗に対する許容がない
- 評価が結果だけに偏っている
といった共通点があります。
この条件がそろうと、社員は考えなくなるのではありません。考えても意味がないと学習します。ここが深刻です。
当事者意識を奪う経営者の言動
当事者意識を持ってほしいと願う経営者ほど、逆の行動を取っていることがあります。良かれと思ってやっていることが、社員の主体性を奪っています。
典型なのは、任せたと言いながら途中で口を出すことです。方向修正のつもりでも、社員から見ると、結局最後は上が決めるという学習になります。これが続くと、自分で考える意味が消えます。
また、会議で答えを先に言ってしまうのも同じです。意見を求めているようで、実際には正解を当てる場になっていると、社員は黙ります。考えるより、上司の意図を読むほうが得になるからです。
さらに危険なのが、当事者意識を持てと繰り返すことです。この言葉は便利ですが、具体性がありません。何をどう変えればいいのかが伝わらず、責任だけが個人に返されます。
経営者の言動で主体性を奪う例として、
- 任せた後に細かく修正する
- 会議で先に結論を言う
- 失敗時に本人の姿勢を責める
- 情報を出さずに判断だけ求める
- 当事者意識を持てと精神論で押す
といったものがあります。
社員が動かない時に見るべきなのは、社員の態度ではありません。経営者の関わり方です。
当事者意識が育つ組織設計
当事者意識は、個人の資質ではなく組織設計で育ちます。社員が自分ごととして動く会社には、共通する土台があります。
情報が開かれている
人は、判断材料がある時に初めて考えます。逆に、情報が閉じていると、指示待ちになります。何を優先すべきか、何が問題なのか、何を目指しているのかがわからないからです。
共有すべきなのは、きれいな理念だけではありません。現状の課題、数字、顧客の反応、会社の方針まで含みます。情報が開かれると、社員は自分の仕事を全体の中で捉えられるようになります。
たとえば、
- 今月の重点課題
- 売上や利益の状況
- 顧客からの評価
- 今後の方針
といった情報が共有されるだけでも、仕事の意味は大きく変わります。
情報を持つ人だけが考える会社では、当事者意識は広がりません。
裁量が渡されている
当事者意識には、自分で決められる感覚が欠かせません。やり方も順番も全部決められている仕事では、責任感は生まれても主体性は育ちません。
必要なのは、丸投げではなく裁量です。目的と期待値は明確に伝えたうえで、進め方には余白を残す。この余白があると、人は自分の仕事として向き合います。
裁量を渡す時に重要なのは、
- 何を達成するか
- どこまで任せるか
- 困った時に誰へ相談するか
を明確にすることです。
責任だけ渡して支援がない状態は、裁量ではなく放置です。ここを混同すると逆効果になります。
挑戦が評価される
社員が動く会社は、結果だけで人を見ていません。挑戦したか、考えて動いたか、改善を試したかを見ています。
結果だけで評価すると、社員は失敗しない行動を選びます。すると、新しい提案も改善も減ります。これでは当事者意識は育ちません。
評価で見るべきなのは、
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 行動 | 自分で考えて動いたか |
| 提案 | 改善案や意見を出したか |
| 学習 | 失敗から何を得たか |
| 協働 | 周囲を巻き込んだか |
といった部分です。
挑戦が報われる会社では、社員は自分の仕事に踏み込みます。ここで初めて、自分ごととしての感覚が育ちます。
社員を自走させる打開策
社員が動かない時に必要なのは、気合を入れ直すことではありません。組織の前提を変えることです。打開策は、日々の運営の中にあります。
目的から伝える
指示だけを出すと、社員は作業者になります。目的から伝えると、社員は判断者になります。この差は大きいです。
たとえば、資料を作ってほしいではなく、商談でこの課題を解決したいから資料が必要だと伝える。これだけで、社員は内容を考え始めます。
目的が共有されると、指示がなくても補完が起きます。ここが自走の起点です。
小さく任せて成功体験を積む
いきなり大きな裁量を渡す必要はありません。むしろ、小さく任せて成功体験を積ませるほうが効果的です。
たとえば、
- 会議の進行を任せる
- 顧客対応の改善案を考えてもらう
- 小さな施策の判断を任せる
といった段階があります。
自分で考えて動き、結果が返ってくる経験を重ねると、社員は自分の仕事に手応えを持ちます。この積み重ねが当事者意識につながります。
経営者が答えを急がない
社員を育てるうえで、経営者が最も我慢すべきなのは、すぐ答えを言わないことです。答えを出すほうが早くても、それを続けると社員は育ちません。
必要なのは、問い返すことです。
- あなたはどう考えるか
- 何が課題だと思うか
- 他に方法はあるか
こうした問いがあると、社員は考えます。考えた経験が増えるほど、自分で動く力が育ちます。
当事者意識は、任せた瞬間に生まれるものではありません。考え、決め、動いた経験の積み重ねで育ちます。
よくある質問
Q: 当事者意識がないのは本人の性格ではないのですか?
A: 性格だけでは決まりません。情報がなく、裁量もなく、失敗が許されない環境では、誰でも受け身になります。組織設計の影響が大きく出ます。
Q: 権限を渡すと失敗が増えませんか?
A: 増えることはあります。ですが、失敗を避ける運営を続けると、社員は育ちません。小さく任せて学習を積むほうが、長期では組織の力になります。
Q: 当事者意識を持てと伝えるのはだめですか?
A: それだけでは不十分です。言葉だけでは行動は変わりません。情報、裁量、評価の仕組みが変わらない限り、社員は動きません。
Q: 社員が意見を言わない時はどうすればいいですか?
A: 先に経営者が答えを言わないことです。さらに、意見を出した時に否定から入らないことも重要です。発言が歓迎される経験が増えると、意見は出始めます。
Q: 小さな会社でも当事者意識は育てられますか?
A: むしろ育てやすいです。経営者との距離が近く、情報共有も速いため、仕組みを変えた時の影響が出やすいからです。
筆者について
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