生産時間が足りないときは1時間当たりの限界利益を比べる
1個売ると6,000円の限界利益が生じる商品と、4,000円の商品があるとします。前者を多く生産すれば、工場全体の利益も増えるでしょうか。両方を必要な数だけ作れないほど機械時間が不足しているなら、1個当たりの金額だけでは答えられません。6,000円の商品に2時間、4,000円の商品に1時間かかると、同じ時間で得られる金額が逆転するためです。
限界利益は、販売価格から販売数量に応じて増減する変動費を引いた金額です。ACCAの解説では、不足する資源の配分を考える際に、商品1個の限界利益を、その1個が消費する資源量で割る方法を説明しています。機械時間が不足する工場なら、分母はその機械の使用時間です。(Throughput accounting)
1個当たりの限界利益と、不足する機械の1時間当たりの限界利益を比較すること が、生産数量を考える手掛かりになります。
商品Aは1個6,000円でも1時間では商品Bを下回る
以下は、数値と費用構造を仮定した計算例です。ある月に、同じ機械で商品AとBを作り、その月にすべて販売するとします。金額は税抜きの円です。変動費には材料や販売ごとの梱包費などを含め、担当者の月給は固定費へ計上します。
| 比較する項目 | 商品A | 商品B |
|---|
| 1個の販売価格 | 10,000円 | 6,000円 |
| 1個の変動費 | 4,000円 | 2,000円 |
| 1個の限界利益 | 6,000円 | 4,000円 |
| 1個に必要な機械時間 | 2時間 | 1時間 |
| 機械1時間当たりの限界利益 | 3,000円 | 4,000円 |
| 当月に販売できる上限数量 | 50個 | 60個 |
Aの1時間当たりの限界利益は6,000÷2=3,000円、Bは4,000÷1=4,000円です。 1個当たりではAが2,000円上回り、1時間当たりではBが1,000円上回ります。
機械を使える時間は月100時間とします。Aを50個、Bを60個作るには、50×2+60×1=160時間が必要なので、両商品の販売上限を同時に満たせません。この例では、材料、担当者、他の工程の能力は十分で、この機械の時間だけが不足しています。
計算上、1個ごとの機械時間と変動費は一定で、商品を切り替える段取り時間、不良品、最低生産ロットはないとします。販売上限以内であれば作った数量をすべて販売でき、既存の納品約束や最低供給数量もないものとします。
同じ100時間でも商品構成によって利益が6万円変わる
Aを先に50個作ると、2×50=100時間を使い切り、Bは作れません。限界利益の合計は6,000×50=30万円です。
Bを先に60個作ると60時間を使い、残り40時間でAを20個作れます。限界利益の合計は4,000×60+6,000×20=36万円です。
| 当月の生産計画 | Aを先に50個作る | Bを先に60個作る |
|---|
| Aの生産販売数 | 50個 | 20個 |
| Bの生産販売数 | 0個 | 60個 |
| 機械時間の合計 | 100時間 | 100時間 |
| 売上高 | 500,000円 | 560,000円 |
| 変動費の合計 | 200,000円 | 200,000円 |
| 限界利益の合計 | 300,000円 | 360,000円 |
| 当月の固定費 | 200,000円 | 200,000円 |
| 固定費を引いた利益 | 100,000円 | 160,000円 |
固定費はどちらの計画でも月20万円と仮定します。したがって、利益は10万円と16万円になり、Bを60個作る計画の方が6万円多くなります。
この差は、Aを30個減らして空く60時間を、Bの60個へ使うことで生じます。Aの限界利益を18万円失い、Bの限界利益を24万円得るので、差額は6万円です。機械の稼働時間を増やさず、同じ100時間で販売する商品構成を変えています。
商品Bを売れる数が20個なら生産数量も変わる
時間当たりの限界利益が高くても、販売できる数を超えてBを作っても、その月の売上にはなりません。先ほどの例でBの販売上限だけが20個へ下がったとします。
Bを20個作ると20時間を使い、残り80時間でAを40個作れます。限界利益は4,000×20+6,000×40=32万円、固定費20万円を引いた利益は12万円です。Bを60個売れる仮定の16万円とは異なります。
実務では、受注数量と販売見込みを区別して生産数量へ反映します。Bを60個売れるという予測が20個へ下がれば、Bの時間当たり4,000円という計算値が変わらなくても、生産計画は変わります。完成品を作った時点で、その全数量を販売済みとして利益へ計上しないようにします。
さらに、AもBも作るたびに別工程の担当者の時間を使い、その時間も不足するなら、この機械だけの順位では十分ではありません。各生産案が使う機械時間と担当者の時間を両方計算し、両方の上限内に収まる案の利益を比べます。ロット単位の生産や商品切替の時間がある場合も、その制約を加えて数量を再計算します。
月給を時間単価へ換算して変動費に加えない
費用の分類を変えると、時間当たりの限界利益も変わります。今月の生産数量を変更しても同額を払う担当者の月給は、この例では固定費20万円の一部です。月給を機械時間で割った金額を、商品1個の変動費にも加算すると、同じ費用を二重に引いてしまいます。
一方、生産案によって残業代や外注費が増えるなら、その増加額を反映します。たとえば、Bを60個作る案だけに追加費用7万円が必要なら、利益16万円から7万円を引いて9万円となり、Aを50個作る案の10万円を下回ります。
ACCAは、販売価格から直接材料費を引くスループット会計と、変動費を引く限界利益の計算を区別しています。本稿は、材料以外にも販売数量に応じた費用がある仮定なので、限界利益を使っています。(Throughput accounting)
販売できる数量と不足する時間から月全体の利益を計算する
1個当たりの限界利益が高いAを増やしても、機械時間が不足する本稿の例では、月全体の利益は増えませんでした。Bを60個、Aを20個作ると、Aを50個作る案より利益が6万円多くなります。
生産計画を比較する際は、 販売できる数量を超えず、不足する機械時間に収まる商品構成で、月全体の利益を計算 してください。時間当たりの金額は配分を考える手掛かりであり、販売上限や追加費用を省略する理由にはなりません。
生産計画に合わせて新規受注の受付を変更するなら、ホームページにも受付中の商品、注文数量の上限、納品予定を掲載します。顧客へ案内する数量と日程を、実際に生産・販売する計画と一致させるためです。
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