想定読者
- プロダクト開発に携わり、ユーザーのニーズを正確に機能に落とし込みたいと考えている方
- 新規事業のアイデアを具体化する段階で、開発チームとの連携に課題を感じている方
- アジャイル開発やリーンスタートアップの考え方を、実践に活かしたいと考えている方
結論:機能は手段、ユーザーの課題解決こそが目的
「この機能、本当に必要だったのかな…」 「作ったはいいけど、全然使われていない…」
もし、あなたが開発に携わっていて、そんな経験があるなら、それは開発の初期段階で「なぜ、この機能を作るのか?」という問いが、十分に深掘りされていなかったからかもしれません。私たちは、つい「どんな機能を作るか(What)」や「どうやって作るか(How)」にばかり意識が向きがちです。しかし、本当に重要なのは、その機能が「誰の、どんな課題を、なぜ解決するのか(Why)」という視点です。
開発は「機能」を作るのではありません。ユーザーの「課題を解決する」ために行うのです。 そして、その「Why」を明確にし、開発チーム全体でユーザー視点を共有するための強力なフレームワークが、「ユーザーストーリー」です。
この記事では、なぜ多くの開発が「機能を作るための機能」になってしまうのか、その原因を解き明かします。そして、開発の目的を明確にし、無駄な機能開発をなくすための「ユーザーストーリー」の書き方を解説します。ユーザーストーリーを使いこなすことで、あなたは本当にユーザーに価値を届けるプロダクトを創り、チームの生産性を劇的に向上させることができるでしょう。
なぜ、あなたの開発は「機能を作るための機能」になってしまうのでしょうか?
ユーザー視点が欠如した開発に陥る背景には、いくつかの共通する問題点があります。
1. 開発者視点での機能追加
開発者が「こんな機能があったら便利だろう」という自分たちの視点や、技術的な興味だけで機能を追加してしまうことがあります。しかし、それが必ずしもユーザーの課題解決に繋がるとは限りません。
2. 曖昧な要件定義
「ログイン機能」「検索機能」といった抽象的な言葉だけで開発を進めてしまうと、開発者と企画者の間で認識のズレが生じやすくなります。結果として、意図しない機能が作られたり、手戻りが発生したりします。
3. ユーザーの「声」を聞かない
ユーザーの課題やニーズを深く理解せず、競合の機能や流行を安易に模倣してしまうことがあります。ユーザーの「声」を聞かずに開発を進めると、誰も使わない「機能を作るための機能」が生まれてしまいます。
開発の「Why」を明確にする『ユーザーストーリー』とは?
ユーザーストーリーは、アジャイル開発において、ユーザーの視点から機能の要件を記述するためのシンプルなツールです。以下の3つの要素で構成されます。
As a [ユーザーの役割] I want to [機能] So that [価値/目的]
例えば、
- 悪い要件:「ログインボタンを設置する」
- 良いユーザーストーリー:「ユーザーとして、ログインすることで、自分の購入履歴を確認したい」
このシンプルな記述によって、開発チームは「誰のために」「何を」「なぜ」作るのかを明確に理解し、ユーザーに価値を届けることに集中できるようになります。
価値ある機能を生み出す「ユーザーストーリー」の書き方5つのポイント
ポイント1:【ユーザー視点】「誰が」その機能を使うのかを明確にする
「As a [ユーザーの役割]」の部分を具体的に記述しましょう。例えば、「顧客として」だけでなく、「初めて利用する顧客として」「ヘビーユーザーとして」「管理者として」など、その機能を使うユーザーの立場や状況を明確にすることで、より具体的なニーズが見えてきます。
ポイント2:【行動の明確化】「何をしたいのか」を具体的に記述する
「I want to [機能]」の部分は、ユーザーがその機能を使って「何をしたいのか」を具体的に記述します。システム側の機能名ではなく、ユーザーが達成したい行動を動詞で表現しましょう。例えば、「検索機能」ではなく「商品を探したい」のように記述します。
ポイント3:【価値の明確化】「なぜ、それをしたいのか」を明確にする
「So that [価値/目的]」の部分は、その機能を使うことでユーザーが「どんな価値を得られるのか」「どんな目的を達成できるのか」を記述します。この「Why」が、開発の目的を明確にし、チームのモチベーションを高めます。この部分が最も重要です。
ポイント4:【簡潔性】「会話のきっかけ」として活用する
ユーザーストーリーは、詳細な仕様書ではありません。開発チームがユーザーのニーズについて議論し、理解を深めるための「会話のきっかけ」として活用しましょう。詳細な仕様は、開発の過程でチームが協力して作り上げていきます。
ポイント5:【テスト可能性】「テストできる」形で記述する
ユーザーストーリーは、その機能が完成したかどうかをテストできる形で記述されている必要があります。例えば、「ユーザーとして、ログインすることで、自分の購入履歴を確認したい」というストーリーであれば、「ログイン後、購入履歴ページにアクセスできるか」というテストが可能です。
ユーザーストーリーは、チームの「共通言語」です
ユーザーストーリーは、単なる要件定義のツールではありません。それは、企画者、開発者、デザイナー、マーケターなど、異なる役割を持つチームメンバーが、ユーザー視点という共通の言語で対話し、協力して価値を創造するための強力なツールです。ユーザーストーリーを使いこなすことで、無駄な機能開発をなくし、本当にユーザーに価値を届けるプロダクトを創り、チームの生産性を劇的に向上させることができるでしょう。
よくある質問
Q: ユーザーストーリーを書くのが難しいです。何から始めれば良いですか?
A: まずは、ご自身のサービスや製品のユーザーを具体的にイメージし、そのユーザーがどんな「困りごと」を抱えているかを書き出してみましょう。そして、「As a [ユーザー] I want to [解決したいこと] So that [得られる価値]」のテンプレートに当てはめて、簡単なものから書いてみることをおすすめします。完璧を目指すのではなく、まず書いてみることが大切です。
Q: ユーザーストーリーは、全ての機能について書く必要がありますか?
A: はい、原則として全ての機能についてユーザーストーリーを書くことが推奨されます。特に、ユーザーに直接影響を与える機能や、新しい価値を提供する機能については、必ずユーザーストーリーを作成しましょう。これにより、開発の目的が明確になり、無駄な機能開発を防ぐことができます。
Q: ユーザーストーリーを書いた後、どうすれば良いですか?
A: ユーザーストーリーは、開発チーム全体で共有し、議論の材料として活用しましょう。チームメンバー全員がユーザーのニーズを理解し、その解決に向けて協力して取り組むことが重要です。また、開発の進捗に合わせて、ユーザーストーリーを更新したり、新しいストーリーを追加したりすることも必要です。
Q: ユーザーストーリーとユースケースの違いは何ですか?
A: ユースケースは、システムとユーザーの相互作用を詳細に記述するもので、システムが提供する機能の範囲や、ユーザーの操作手順などを明確にします。一方、ユーザーストーリーは、ユーザーの視点から「何をしたいか」「なぜしたいか」という価値に焦点を当てた、より簡潔な記述です。ユーザーストーリーは、ユースケースを作成する前の、アイデア出しや優先順位付けの段階で活用されることが多いです。
筆者について
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