想定読者

  • LTVという言葉は聞いたことがあるが、正確な意味は分からない、というビジネスオーナー
  • 新規顧客の獲得ばかりに目が行きがちで、既存顧客の重要性を見過ごしている方
  • サブスクリプションビジネスや、リピート購入が重要な事業を運営している方

結論:LTVとは、顧客とあなたの「長期的な関係性」を測る指標

あなたのビジネスにとって、「良い顧客」とは、どのような顧客でしょうか?「一度に、たくさんのお金を使ってくれる顧客」でしょうか。それも一つの答えですが、もっと重要な視点があります。

それが、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)という考え方です。

LTVとは、非常にシンプルに言えば、「一人の顧客が、あなたのビジネスと取引を始めてから、関係が終わる(離脱する)までの全期間にわたって、あなたのビジネスにどれだけの利益をもたらしてくれるか」という総額を示す指標です。

この指標が重要なのは、私たちのビジネスに対する視点を、「一回一回の取引(点)」から、「顧客一人ひとりとの永続的な関係(線)」へと、劇的に変えてくれるからです。目先の売上だけを追うのではなく、顧客と長期的に、良好な関係を築くことこそが、ビジネスを安定させ、成長させる。LTVは、そのあまりにも重要な事実を、具体的な「数字」として示してくれるのです。

「その顧客、本当に儲かっていますか?」―LTVの基本的な考え方

LTVの概念を、近所のカフェで考えてみましょう。

  • Aさん: 旅行客。たまたま店に立ち寄り、コーヒーを一杯(500円)買って、二度と来なかった。
  • Bさん: 近所で働く会社員。毎週5日間、必ず朝のコーヒー(一杯500円)を買いに来てくれる。

Aさんの、この店における売上は500円です。一方で、Bさんはどうでしょうか。一日あたりの売上はAさんと同じ500円ですが、一週間では2,500円、一ヶ月(4週)では10,000円、一年(52週)では130,000円もの売上をもたらしてくれます。この「130,000円」という数字が、BさんのLTVの基本的な考え方です。

この時、もしAさんとBさんを「獲得」するために、一人あたり1,000円の広告費(CAC:顧客獲得コスト)をかけていたとしたらどうでしょう。Aさんの取引は、500円の赤字です。一方で、Bさんの取引は、長期的には莫大な利益を生み出します。

ビジネスが健全であるための絶対的な条件は、LTV > CAC、つまり「顧客一人から生涯にわたって得られる利益」が、「顧客一人を獲得するためにかかったコスト」を上回っていることです。この大原則を無視して、目先の新規顧客獲得ばかりに奔走すると、事業は「儲かっているように見えて、実は赤字を垂れ流している」という、危険な状態に陥ってしまうのです。

なぜ、今LTVがこれほどまでに重要なのか?

このLTVという指標は、現代のビジネス環境において、ますますその重要性を増しています。

第一に、新規顧客の獲得コストが、あらゆる業界で高騰しているからです。インターネット広告の競争は激化し、かつてのように安価に新しい顧客を見つけることは、年々難しくなっています。だからこそ、一度掴んだ顧客を手放さず、長く関係を続けることの価値が、相対的に高まっているのです。

第二に、サブスクリプションモデルの普及も大きな要因です。月額課金制のビジネスにとって、顧客にいかに長く契約を継続してもらうか(=LTVを最大化するか)が、事業の生命線そのものです。

そして何より、高いLTVを誇るビジネスは、安定した収益基盤を持つことができます。毎月、毎年、決まって収益をもたらしてくれる優良顧客の存在は、売上の浮き沈みを吸収し、会社を不況に強い、安定した状態へと導いてくれるのです。

あなたのビジネスのLTVを高める、3つの基本的な方法

LTVは、分解すると「顧客単価」「購入頻度」「継続期間」という3つの要素から成り立っています。つまり、LTVを高めるには、この3つのいずれか、あるいは複数を改善すれば良いのです。

  1. 顧客単価を上げる (Increase Average Order Value) 一度の購入で、より多くの金額を使ってもらうための工夫です。
  • アップセル: より高価な上位プランや、松竹梅の「竹」や「松」を魅力的に見せる工夫で、より高い商品を選んでもらう。
  • クロスセル: メインの商品と一緒に、関連商品を提案する。「ハンバーガーに、ポテトはいかがですか?」が典型例です。
  1. 購入頻度を高める (Increase Purchase Frequency) 顧客が、より頻繁にあなたの商品やサービスを思い出して、購入してくれるための工夫です。
  • 定期的な接触: メールマガジンやSNSで、顧客にとって有益な情報を発信し、関係を維持する。
  • 再購入のきっかけ作り: ポイントカードや、リピーター限定の割引、新商品の案内などで、再訪を促す。
  1. 契約期間を延ばす(解約率を下げる) (Extend Customer Lifetime / Reduce Churn) 顧客が、あなたのサービスを長く使い続けてくれるための工夫です。サブスクリプションビジネスでは特に重要です。
  • 優れた顧客体験: 商品の使いやすさはもちろん、購入後の手厚いカスタマーサポートで、顧客をファンに変える。
  • 継続的な価値向上: 顧客の声に耳を傾け、サービスを定期的にアップデートし、「使い続けるほど、もっと良くなる」という期待感を醸成する。

よくある質問

Q: LTVの正確な計算式が、難しくて分かりません。

A: 最初から、複雑で正確な計算式にこだわる必要はありません。まずは、LTV = (平均顧客単価) × (平均購入頻度) × (平均継続期間) という、ごく簡単な式で捉えてみましょう。大切なのは、完璧な数字を出すことではなく、「単価・頻度・期間」という3つの要素を意識し、それぞれを改善する視点を持つことです。

Q: うちのビジネスは、顧客が一度しか買わないのですが、LTVは関係ありますか?

A: 住宅販売や、結婚式場のように、一度きりの購入が基本となるビジネスでも、LTVの考え方は非常に重要です。その場合、LTVを「一人の顧客が生み出す価値の総体」と捉え直し、紹介(リファラル)による価値も含めて考えます。満足した顧客が、次の新しい顧客を3人紹介してくれれば、その人のLTVは、実質的に4倍になる、と考えることができるのです。

Q: CAC(顧客獲得コスト)は、どうやって計算するのですか?

A: シンプルに計算するなら、CAC = (ある期間のマーケティング・営業費用の合計) ÷ (その期間に獲得した新規顧客数) です。例えば、ある月に広告費を10万円使い、10人の新規顧客を獲得できたなら、CACは1万円となります。

Q: LTVを高めるのに、一番手っ取り早い方法は何ですか?

A: 最もコストが低く、効果が出やすいのは、既存の、特に満足してくれている優良顧客に集中することです。感謝を伝える手紙を送る、ささやかなプレゼントを贈る、新商品を一番に案内する、といった行動は、低コストながら顧客との関係性を劇的に深め、LTVの向上に直結します。

筆者について

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