赤字のサービスを終了しても共通費が減るとは限らない
サービス別の収支表で赤字が出ていると、そのサービスを終了すれば会社全体の利益も増えると考えがちです。しかし、本社の家賃や管理部門の費用を各サービスへ割り当てている場合、終了したサービスの赤字額だけ利益が増えるとは限りません。売上は失われても、会社が支払う家賃や給与は変わらない場合があるためです。
複数のサービスで発生する本社費などを共通費、それを一定の基準で各サービスの費用に割り当てることを配賦と呼びます。 収支表への割当額と、終了によって実際に減る支払額は異なります。 髙野総合会計事務所も、店舗別の赤字に共通費が含まれる場合、店舗の閉鎖が全社利益を減らす例を紹介しています。(撤退と投資の判断基準)
終了の採算を計算するには、終了で失う売上と、支払わずに済む費用を比べます。以下の架空例で、サービスの赤字と会社の利益の変化を計算します。
月10万円の赤字をなくすと全社利益が20万円減る例
同じ会社がサービスAとBを提供していると仮定します。次の表は、継続した場合の翌月の収支予測です。金額の単位は万円、すべて税抜きです。例を単純にするため、収益と費用は同じ月の入出金に一致し、減価償却や税金などは計算に含めません。
変動費は外注作業など売上に伴って発生する費用、専用固定費はサービス専用の月額契約などの費用とします。本社の家賃と管理部門の給与の合計80万円を、Aに50万円、Bに30万円配賦したとします。
| 翌月の収支予測 | サービスA | サービスB | 会社全体 |
|---|
| 売上 | 300 | 100 | 400 |
| 変動費 | 180 | 60 | 240 |
| 専用固定費 | 40 | 20 | 60 |
| 共通費控除前の利益 | 80 | 20 | 100 |
| 配賦された共通費 | 50 | 30 | 80 |
| 共通費控除後の利益 | 30 | −10 | 20 |
Bの収支は100−60−20−30=−10万円です。しかし、共通費を引く前には20万円の利益があり、会社全体の共通費80万円の支払いに充てられています。
Bを翌月から終了すると、売上100万円と変動費60万円がなくなり、専用固定費20万円も全額支払わずに済むと仮定します。一方、Aの売上と費用、本社の家賃と管理部門の給与は変わらないとします。終了費用も発生しないとします。
終了後の会社全体の利益は、300−180−40−80=0万円です。 Bの月10万円の赤字を消しても、全社利益は20万円から0万円へ減ります。 Bに配賦していた30万円の支払いが会社に存続し、Bが共通費の支払いに充てていた20万円も失うためです。
配賦額を変更しても会社の支払額は変わらない
Bの終了後に共通費80万円をすべてAの費用へ計上すると、Aの利益は80−80=0万円になります。配賦方法を変えても、本社の家賃や管理部門の給与80万円は同じです。
ACCAの解説でも、既存固定費の配賦方法を変えるだけでは入出金は変わらず、終了判断には実際に増減する売上と費用を使うと説明しています。(Relevant costs)
この例での終了による利益の増減は、次のように計算できます。
利益の増減=支払わずに済む費用−失う売上−終了に伴う追加費用
Bでは60+20−100−0=−20万円です。Bに配賦した共通費30万円は、支払わずに済む費用へ加えていません。
給与をBの費用からAの費用へ移しても、同じ給与を払い続けるなら会社の費用削減はゼロです。専用契約の月額料金も、翌月の支払いが契約上必要なら、その月の削減額はゼロになります。費目名より、 どの支払いが何月から何円減るか を契約や勤務計画と照合します。
共通費も削減できるなら終了の採算は変わる
同じBでも、本社費を実際に減らせるなら答えは変わります。次の表は、先ほどの終了例に、共通費の削減を追加した別の仮定です。Aの売上と仕事の遂行には影響がないとします。
| Bを終了する際の仮定 | 継続する場合と比べた翌月の全社利益の増減 |
|---|
| 共通費は減らない | −20万円 |
| 共通費の支払いを翌月から25万円減らせる | +5万円 |
| 共通費を25万円減らせるが終了費用15万円も翌月に発生する | −10万円 |
共通費を25万円減らせるなら、終了の効果は60+20+25−100=+5万円です。ただし、同じ月に解約などの終了費用15万円が発生すれば、翌月の効果は5−15=−10万円になります。
終了費用が一度だけで、その後も毎月5万円の改善が続く仮定なら、6か月の累計効果は5×6−15=+15万円です。 翌月の利益と6か月の合計では判断が変わる ため、比較する期間をそろえて計算します。
他のサービスへの影響も金額に加えます。Bの利用者がAも購入しており、Bの終了でAの売上も減るなら、Aで失う売上から減少する変動費を引いた金額を、終了の不利益へ加算します。一方、Bの担当者が別の受注を担当できるなら、その受注の売上と追加費用から利益の増加額を見積もります。人が空くこと自体を、そのまま給与の削減額に換算しないようにします。
終了後の会社全体の利益で継続と比較する
赤字のサービスを終了すると利益が増えるかは、配賦後の赤字額だけでは判断できません。本文の最初の例では、Bは月10万円の赤字でも、終了によって会社全体の利益が月20万円減りました。共通費が減らず、共通費の支払いに充てていた利益を失うためです。
実際の判断では、継続と終了それぞれについて、同じ期間の売上、支払う費用、終了費用を収支表へ記入します。翌月に減らせない費用と、契約満了後に減らせる費用は、減額が始まる月を明記して計算してください。これにより、帳簿上の赤字を消すことと、会社全体の利益を増やすことを区別できます。
サービスの終了や変更を実施する際には、ホームページに新規受付の終了日、契約済みの顧客への提供期間、問い合わせ先を記載すると、顧客が利用できるサービスと日程を把握できます。
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