想定読者

  • 部下との1on1や顧客との商談で、会話が弾まず、深い話ができないと感じている方
  • 会議で意見を引き出したり、話をまとめたりするのが苦手なリーダー
  • 相手の潜在的なニーズを引き出し、提案の質を高めたい営業・企画職の方

結論:質問力とは「広げる」と「絞る」の使い分けである

優れたコミュニケーターは、例外なく「質問」の達人です。そして、その核心は「オープンクエスチョン(開かれた質問)」「クローズドクエスチョン(閉じた質問)」という、たった2種類の質問を自在に使い分ける能力にあります。

相手に自由に語らせて話を広げるオープンクエスチョンと、「はい/いいえ」で答えてもらい話を絞るクローズドクエスチョン。この2つの役割を理解し、意識的に使い分けるだけで、あなたの対話の質は劇的に向上し、望む成果を手にすることができます。

第1章:あなたの質問が「尋問」になっていないか? - 会話が深まらない理由

部下との1on1、顧客へのヒアリング、チーム会議…。あなたは、こんな質問をしていないでしょうか。

「〇〇の件、順調に進んでいますか?」 「はい」 「何か問題は起きていませんか?」 「いえ、特に」 「分かりました。では、次…」

このやり取りは、クローズドクエスチョンを連発してしまった典型的な失敗例です。相手は「はい/いいえ」で答えるしかなく、思考が停止してしまいます。これでは、相手の真意や潜在的な課題、あるいは新しいアイデアを引き出すことはできません。会話は表面的な事実確認に終始し、深まることはありません。

第2章:対話の基本 - 2種類の質問が持つ役割と心理的効果

質問には、大きく分けて2つの種類があります。それぞれの質問が持つ役割と、相手の心理に与える影響を理解することが、質問力向上の第一歩です。

1. クローズドクエスチョン(閉じた質問)

「はい/いいえ」や、限定された選択肢で答えられる質問です。相手の思考を特定の方向に誘導し、明確な答えを引き出すことに特化しています。

役割と目的:

  • 事実確認: 状況や情報の正確性を素早く確認する。
  • 意思決定の促進: 複数の選択肢から一つを選んでもらう。
  • 話の方向づけ: 議論が脱線しそうな時に、本筋に戻す。
  • 会話のテンポアップ: スムーズに次の話題へ移る。
  • 相手の理解度確認: 「ここまでで、ご不明な点はございませんか?」

心理的効果: 相手に明確な答えを促し、思考の範囲を限定します。答えやすいため、会話のハードルが低いと感じさせます。

キーワード: 5W1Hのうち、When, Where, Who, Which など。「〜ですか?」「〜ますか?」「〜できますか?」

具体例:

  • 「この施策は、来週から開始でよろしいですか?」
  • 「A案とB案、どちらが良いと思いますか?」
  • 「この件の担当は、〇〇さんで間違いないですね?」

2. オープンクエスチョン(開かれた質問)

相手が自由に、自分の言葉で答えられる質問です。相手の思考を刺激し、多様な情報やアイデア、感情を引き出すことに特化しています。

役割と目的:

  • 相手の考えや感情の引き出し: 表面的な情報だけでなく、背景にある意図や感情を理解する。
  • 潜在ニーズの発見: 顧客自身も気づいていない課題や願望を引き出す。
  • アイデアの発散: ブレインストーミングなどで、多様な意見を募る。
  • 信頼関係の構築: 相手に「自分のことを理解しようとしてくれている」と感じさせる。

心理的効果: 相手に思考の自由を与え、自己開示を促します。話すことで、相手自身も考えが整理される効果があります。

キーワード: 5W1Hのうち、What, Why, How など。「どう思う?」「もし〜だとしたら?」「例えば?」

具体例:

  • 「この課題について、どうすれば解決できると思いますか?」
  • 「今回の結果を見て、率直に何を感じましたか?」
  • もし予算が倍あるとしたら、どんなことができますか?」

第3章:実践!質問の「黄金継投」をマスターする - 会話の広げ方とまとめ方

本当に重要なのは、この2つの質問をリズミカルに組み合わせることです。状況に応じて使い分けることで、会話を意図的に「広げたり」「絞ったり」できるようになります。

パターン1:クローズドで焦点を絞り、オープンで深掘りする(深掘り型)

これは、顧客の潜在ニーズを探る営業ヒアリングや、部下の抱える課題を深掘りする1on1で非常に有効です。

あなた:「現在、毎月の報告書作成に時間がかかっていますか?」(クローズド:現状確認相手:「はい、実はそうなんです」 あなた:具体的に、どのような点に最も時間を取られていますか?」(オープン:課題の深掘り相手:「AとBのデータを集計して、グラフにするところですね。手作業なのでミスも多くて…」 あなた:「なるほど。もしその作業が自動化されるとしたら、どのくらい時間が削減できそうですか?また、その時間で他にどんなことができるようになりますか?」(オープン:未来の可能性を探る

パターン2:オープンで発散させ、クローズドでまとめる(合意形成型)

これは、アイデアを求めるブレインストーミングや、複数の意見をまとめる会議で力を発揮します。

あなた:「このプロジェクトを成功させるために、他にどんなアイデアがあるでしょうか?どんな些細なことでも構いません」(オープン:アイデアの発散相手A:「〇〇という方法はどうでしょう」 相手B:「△△の視点も重要だと思います」 あなた:「ありがとうございます。素晴らしい意見ですね。では、いただいた意見を踏まえて、まずはA案とC案のどちらから検討を進めるのが現実的でしょうか?」(クローズド:選択肢の絞り込み

このように、「広げて、絞る」「絞って、広げる」のリズムを意識することが、生産的な対話を生み出す鍵となります。

第4章:やってはいけないNGな質問と、質問力を高める実践トレーニング

質問力を高めるためには、良い質問の型を学ぶだけでなく、避けるべきNGな質問も理解しておく必要があります。

NGな質問の典型例

  • 誘導尋問: 「このA案、素晴らしいと思いませんか?」のように、相手に特定の答えを期待する質問。相手は本音を言えなくなり、信頼関係を損ねます。
  • 多重質問: 「〇〇の進捗はどう?あと、△△の件で問題は起きてない?それと、□□の件も教えて」のように、一度に複数の質問を投げかける。相手は混乱し、結局何も答えられなくなります。
  • 抽象的すぎるオープンクエスチョン: 「何か意見はありますか?」だけでは、相手は何を話せばいいか迷います。「この施策の『リスク』について、何か気づいた点はありますか?」のように、少し焦点を絞ることで、相手は答えやすくなります。
  • 「なぜ?」の乱用: 「なぜできなかったんだ?」という詰問口調の「なぜ」は、相手を追い詰めます。代わりに「何がそうさせたのですか?」「どういう背景があったのですか?」のように、WhyをWhatやHowに変換して聞くと、相手は事実や背景を話しやすくなります。

質問力を高める実践トレーニング

  1. ニュース記事で「質問」を考える: 毎日新聞やWebニュースを読みながら、「この記事の筆者は、読者に何を伝えたいのだろう?」「もし自分がこの問題の担当者だったら、誰に、どんな質問をするだろう?」と自問自答する癖をつけましょう。
  2. 会話を「実況中継」する: 普段の会話中、「今、自分はクローズドクエスチョンを使ったな」「次はオープンで広げてみよう」と、心の中で実況中継する練習をします。意識することで、自然と使い分けができるようになります。
  3. 質問の「引き出し」を増やす: 普段から、良い質問に出会ったらメモを取る習慣をつけましょう。例えば、テレビのインタビューや、ビジネス書で感銘を受けた質問などです。

よくある質問

Q: 相手が無口な場合、オープンクエスチョンをしても答えてくれませんか?

A: 無理にこじ開けようとする必要はありません。相手も緊張しているのかもしれません。そんな時は、質問が漠然としすぎている可能性があります。「何か意見は?」ではなく、「この案の『リスク』について、何か気づいた点はありますか?」のように、少しだけ焦点を絞ったオープンクエスチョンを試してみてください。また、沈黙を恐れず、相手が考えるのを待つ姿勢も重要です。

Q: 逆に、話が長すぎてまとまらない相手にはどうすればいいですか?

A: クローズドクエスチョンの出番です。「ありがとうございます。よく理解できました。つまり、現時点での一番の課題は〇〇ということでよろしいですか?」と、こちらで要約してクローズドクエスチョンで確認することで、話の主導権を握り、議論を前に進めることができます。相手の話を遮るのではなく、一旦受け止めてから要約し、確認する姿勢が重要です。

Q: 1on1で効果的な質問の仕方はありますか?

A: 1on1では、相手の成長を促すオープンクエスチョンが特に有効です。「最近、仕事で最もやりがいを感じたことは何ですか?」「今後、どんなスキルを身につけていきたいですか?」といった質問で、相手の自己認識を深め、内発的な動機付けを引き出しましょう。傾聴の姿勢も非常に重要です。

Q: 「なぜ?」という質問は、相手を追い詰めるようで使いにくいです。

A: 確かに「なぜできなかったんだ?」という詰問口調の「なぜ」は、相手を追い詰めます。そんな時は、「何がそうさせたのですか?」「どういう背景があったのですか?」のように、WhyをWhatやHowに変換して聞くと、相手は事実や背景を話しやすくなります。相手を責めるのではなく、状況を理解しようとする姿勢が伝わります。

Q: 質問の練習をする良い方法はありますか?

A: 日々のニュース記事やビジネス書を読みながら、「もし自分がこの問題の担当者だったら、誰に、どんな質問をするだろう?」と自問自答する癖をつけるのがおすすめです。また、実際の会話で「今日はオープンクエスチョンを3回使ってみよう」など、小さな目標を立てて実践することも効果的です。ロールプレイングも有効な練習法です。

筆者について

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