想定読者
- 「結論から話せ」を実践しているが、相手の反応が薄いと感じているビジネスパーソン
- プレゼンや部下指導で、相手の心を掴み、行動を促したいと考えているリーダー
- ロジカルな説明だけでなく、共感力も身につけたいすべてのビジネスパーソン
結論:論理の「PREP」、共感の「SDS」。使い分けが真の伝達力を生む
ビジネスコミュニケーションの基本として、私たちは「PREP法」を学びます。結論から話すこの方法は、確かに効率的で強力な武器です。しかし、人は論理だけでは動きません。
本当に相手を動かし、深い納得感を生み出すためには、聞き手の感情に寄り添い、共感から入る**「SDS法」**というもう一つの武器を使い分ける視点が不可欠です。目的と相手に応じて最適な「伝え方の型」を選択することこそが、あなたのコミュニケーションを飛躍的に向上させます。
第1章:なぜあなたの「正しい話」は響かないのか? - 脳の仕組みから理解する
あなたは、論理的に正しいはずの説明をしているのに、なぜか相手の反応が薄い、話が響いていないと感じたことはないでしょうか。その原因は、あなたの話す順番にあるかもしれません。
多くのビジネスパーソンが学ぶ「PREP法」は、以下の構造で話を展開します。
- Point: 結論
- Reason: 理由
- Example: 具体例
- Point: 結論(再確認)
この方法は、報告や議論など、効率と正確性が求められる場面で非常に有効です。しかし、この「正しさ」が、時として「冷たさ」として受け取られることがあります。なぜなら、PREP法は主に人間の脳の「理性を司る部分(大脳新皮質)」に働きかけるからです。聞き手は「なるほど、理解はできる」と感じますが、行動を促す「感情を司る部分(大脳辺縁系)」には、なかなか響きません。結果として、「頭ではわかるけど、心が動かない」という状態に陥ってしまうのです。
第2章:共感と納得を生むもう一つの武器「SDS法」 - 感情に語りかける構造
そこで登場するのが、聞き手の感情に寄り添い、共感から入る「SDS法」です。
- Summary: 全体像の共有(要約)
- Details: 詳細の説明
- Summary: 全体像の再確認(まとめ)
PREP法が「結論」という鋭い点から入るのに対し、SDS法は「話の全体像」という面から入るのが最大の特徴です。
最初のSummary(全体像)で、「今日は何について話すのか」「この話が聞き手にとってなぜ重要なのか」「話の背景や目的」などを共有します。
これにより、聞き手は「これは自分に関係のある話だ」と認識し、安心して話を聞く準備ができます。これが共感と納得感を生むための入り口となるのです。
SDS法が感情に響く理由
SDS法は、まず聞き手の「本能の脳(大脳辺縁系)」に語りかけます。話の全体像や、聞き手にとってのメリットを最初に提示することで、「これは自分にとって大切な情報だ」という感情的なフックをかけます。感情が動いた後で詳細(Details)を説明するため、聞き手はより積極的に情報を吸収し、最終的な結論(Summary)にも深く納得するのです。
第3章:PREP法 vs SDS法 - 場面に応じた「伝え方」使い分けの技術
PREP法とSDS法は、どちらが優れているというものではありません。それぞれに得意な場面があり、目的と相手に応じて使い分けることが、真のコミュニケーション強者への道です。
PREP法が輝く場面
目的: 迅速な報告、問題解決、時間のない中での意思決定
相手: 結論を急ぐ上司、専門知識を共有している同僚、事実確認をしたい相手
会話例:
- 「部長、〇〇の件、結論から申し上げますと計画は前倒しで進行可能です。理由は、AとBの課題を解決できたためです。具体的には…」
- 「この問題の解決策はC案です。なぜなら、費用対効果が最も高いからです。データをご覧ください…」
SDS法が輝く場面
目的: 新規企画のプレゼン、部下への指導・フィードバック、馴染みのない相手への説明、行動変容を促したい時
相手: 予備知識のない聞き手、変化に対して不安を感じている相手、心を動かしたい相手
会話例:
- 「(プレゼンの冒頭で)本日は、皆様の毎日の業務時間を30分短縮し、より創造的な仕事に集中できる新しい情報共有の仕組みについてご提案します。…(詳細説明)…このように、この仕組みを導入することで、私たちはもっと本質的な価値創造に時間を使えるようになります。」
- 「(部下へのフィードバック)〇〇さん、最近のあなたの成長には目を見張るものがありますね。特に△△のプロジェクトでの貢献は素晴らしいです。今日は、その素晴らしい能力をさらに伸ばすために、一つだけお伝えしたいことがあります。…(詳細説明)…この点を意識することで、あなたはさらに大きな成果を出せるはずです。」
PREPは「報告・連絡・相談」、SDSは「提案・説得・教育」 と覚えると、判断しやすくなるでしょう。
第4章:PREPとSDSを組み合わせる「ハイブリッド型」コミュニケーション
PREP法とSDS法は、単独で使うだけでなく、組み合わせて使うことで、さらに強力なコミュニケーションが可能です。
1. プレゼン全体の構成はSDS、各論はPREP
例えば、新規事業のプレゼンテーションでは、全体の構成をSDS法で組み立てます。
- Summary(全体像): 「本日は、皆様のビジネスを次のステージへ導く、画期的なソリューションをご紹介します。」
- Details(詳細): 各論(市場分析、製品概要、導入効果など)は、それぞれPREP法でロジカルに説明します。
- Summary(まとめ): 「このソリューションが、皆様の未来をどう変えるか、改めてお伝えします。」
2. 議論の導入はSDS、本題はPREP
会議の冒頭で、まずSDS法で「なぜこの会議が必要なのか」「この会議で何を目指すのか」という全体像を共有し、参加者の意識を統一します。その後、具体的な議題に入ってからは、PREP法で効率的に議論を進める、といった使い方も有効です。
よくある質問
Q: SDS法の「全体像」とPREP法の「結論」は何が違うのですか?
A: PREP法の「結論」は、話の最終的な答えや要点そのものです。一方、SDS法の「全体像」は、話の地図や予告編のようなもの。「これからこういう話をしますよ、あなたにはこんなメリットがありますよ」と示すことで、相手を話の世界に招き入れる役割を果たします。結論は「点」、全体像は「面」と考えると分かりやすいでしょう。
Q: 上司にSDS法で話したら「結論から言え」と怒られそうです。
A: その通りです。相手がPREP法を求めている(時間がない、結論だけ知りたい)場合は、SDS法は不向きです。相手の状況や性格を見極めることが重要です。ただし、その上司に何かを「提案」し、じっくり考えてほしい場合は、「本日は〇〇の件で、少しお時間をいただきご提案があります」と前置きした上で、SDS法で話すのが有効です。
Q: プレゼンが長くなってしまいそうなのが心配です。
A: SDS法は、必ずしも話を長くするものではありません。最初のSummaryで「本日は3つのポイントに絞ってお話しします」と宣言するなど、話の構成を最初に示すことで、聞き手はむしろ安心して、効率的に内容を理解できます。話の全体像を最初に示すことで、聞き手は迷子にならず、むしろ集中して聞くことができます。
Q: 相手の共感ポイントがわからない場合はどうすればいいですか?
A: 相手の立場に立って、どんな課題や悩みを抱えているかを想像することから始めましょう。日頃から相手の話を注意深く聞く、質問をする、相手の業界や職種について学ぶ、といった地道な努力が、共感ポイントを見つける鍵となります。
筆者について
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