想定読者
- 自分のビジョンや想いが、部下やチームにうまく伝わっていないと感じるリーダー・経営者
- 商品の良さを説明しているのに、顧客の心に響かず、購入に繋がらないと悩んでいる営業・マーケティング担当者
- 自分の仕事に意義を見出し、周囲を巻き込みながら大きなことを成し遂げたいと願う、すべてのビジネスパーソン
結論:人は「何を」に動かされず、「なぜ」に心を動かされる
あなたは、自分の商品や企画の魅力を伝える時、何から話し始めますか?多くの人は「何を(What)」、つまり「私たちの商品はこんなに素晴らしい機能があります」ということから話し始めます。しかし、人を本当に動かすリーダーや企業は、例外なく「なぜ(Why)」から語り始めます。
「なぜ私たちはこの仕事をしているのか」「私たちの信念は何か」。この根源的な目的(Why)こそが、人の感情を揺さぶり、熱狂的な共感を生み、そして強力な行動を促すのです。これは、単なる精神論ではありません。人間の脳の仕組みに根ざした、普遍的なコミュニケーションの法則なのです。
第1章:「伝わらない」コミュニケーションの構造
なぜ、論理的に正しいはずの説明が、相手に響かないのでしょうか。それは、多くのコミュニケーションが「What→How→Why」の順番で組み立てられているからです。
- What(何を): 私たちは、最新のAIを搭載した会計ソフトを開発しました。
- How(どうやって): 請求書の自動読み取りや、リアルタイムでの収支分析が可能です。
- Why(なぜ): (特に語られないか、「業務効率化のため」といった機能説明に留まる)
この伝え方は、聞き手の脳の「理性を司る部分(大脳新皮質)」には届きます。聞き手は「なるほど、高性能なソフトなのだな」と理解はします。しかし、それだけです。行動や忠誠心、信頼といった感情を司る「本能の脳(大脳辺縁系)」には全く響いていないため、「理解はしたが、心が動かない」という状態に陥るのです。
第2章:心を動かす「ゴールデンサークル」という逆転の発想
優れたリーダーや企業は、この順番を完全に逆転させます。つまり、「Why→How→What」の順で語りかけるのです。
- 円の中心:Why(なぜ) - あなたの目的、信念、存在理由。
- その外側:How(どうやって) - 「Why」を実現するための具体的な方法、独自性、強み。
- 一番外側:What(何を) - 「How」の結果として生み出される製品やサービス。
この伝え方は、まず相手の「本能の脳(大脳辺縁系)」に直接語りかけ、感情的な共感を生み出します。「この人たちの信念は、素晴らしいな」と感じさせた後で、その信念を裏付ける具体的な方法(How)と製品(What)を提示することで、聞き手は理性的にも納得します。感情で惹きつけ、論理で納得させる。これが、人を動かすコミュニケーションの核心です。
事例:キング牧師は「計画」ではなく「夢」を語った
歴史的な演説として知られるキング牧師の演説は、「私には計画がある(I have a plan)」では始まりませんでした。彼は「私には夢がある(I have a dream)」と、自らの信念(Why)から語り始めたのです。人種平等の実現という壮大な「Why」に、多くの人々が心を揺さぶられ、人種や肌の色を超えて、その場に集まったのです。もし彼が、具体的な政策や法案(What)から話し始めていたら、あれほどの熱狂と共感は生まれなかったでしょう。
第3章:あなたの「Why」を見つけ、言語化する実践ワーク
「Whyが重要だとは分かったが、自分のWhyが分からない」という方も多いでしょう。Whyは、無理に作り出すものではなく、自分の中から発見するものです。以下のワークを通じて、あなたのWhyを掘り下げてみましょう。
ワーク1:過去の最高の瞬間を振り返る
- これまでの仕事人生で、最も充実感や達成感を感じた瞬間はいつですか?
- その時、あなたは誰のために、何を成し遂げましたか?
- なぜ、その瞬間に心を動かされたのでしょうか?
ワーク2:貢献したい相手を定義する
- あなたが、自分の仕事を通じて、最も幸せにしたい、あるいは助けたいと感じる相手は誰ですか?(顧客、同僚、社会など)
- その相手が抱えている、どんな「不満」「不安」「不便」を、あなたは解決したいですか?
ワーク3:「もしも」の質問に答える
- もし、お金の心配が一切ないとしたら、どんな仕事で世の中に貢献したいですか?
- あなたがいなくなった時、周囲の人に「あの人は〇〇な価値を遺してくれた」と言われるとしたら、それは何だと思いますか?
これらの問いの答えを書き出し、共通するキーワードや感情を探していくと、あなたの「Why」の輪郭が見えてきます。それは「挑戦する人を支えたい」「無駄な時間をなくし、創造的な時間を増やしたい」「テクノロジーで、人々の生活を豊かにしたい」といった、あなただけの信念のはずです。
第4章:「Why」を組織の力に変える方法
個人のWhyが見つかったら、次はそれをチームや顧客に語り、組織の力へと変えていくステップです。
- 会議の冒頭で語る: プロジェクトのキックオフミーティングで、タスク(What)の話に入る前に、まず「なぜ、私たちはこのプロジェクトをやるのか」という目的(Why)を、あなたの言葉で熱く語りましょう。メンバーの当事者意識が格段に変わります。
- 採用面接で問いかける: 候補者のスキル(What)だけでなく、「なぜ、数ある会社の中から、私たちの会社を選んだのですか?」と問いかけ、候補者のWhyと会社のWhyが一致しているかを確認しましょう。スキルは後からでも教えられますが、Whyの不一致は、後々大きな問題となります。
- 顧客への提案で語る: 製品の機能説明(What)から入るのではなく、「私たちは、お客様のビジネスにおける〇〇という課題を、△△という信念(Why)で解決したいと考えています」というストーリーから始めましょう。顧客は、単なる業者としてではなく、信頼できるパートナーとして、あなたを見てくれるようになります。
よくある質問
Q: 自分のWhyが、会社のWhyと違う場合はどうすれば?
A: 素晴らしい質問です。まずは、会社のWhyと、自分のWhyの重なる部分を探してみましょう。完全に一致しなくても、「会社の『顧客第一主義』というWhyは、自分の『人を助けたい』というWhyと、この部分で繋がっている」というように、自分なりに解釈し、接続点を見つけることが重要です。
Q: BtoBの取引でも、感情的なWhyは有効なのですか?
A: 法人取引であっても、最終的な意思決定を下すのは「個人」です。担当者は、価格やスペック(What)といった論理的な比較検討資料を上司に提出しますが、その際に「私は、この会社の〇〇という考え方(Why)に共感しており、長期的なパートナーとして信頼できると思います」という一言を添えられるかどうか。その感情的な後押しが、最終決定に大きな影響を与えます。
Q: 「Why」を語るのが、なんだか気恥ずかしいです。
A: 最初は誰でもそうです。それは、あなたが本心から語ろうとしている証拠です。完璧で、格好良いWhyを語る必要はありません。不器用でも、あなた自身の言葉で、正直な想いを語ること。その誠実さこそが、人の心を動かします。
筆者について
記事を読んでくださりありがとうございました! 私はスプレッドシートでホームページを作成できるサービス、SpreadSiteを開発・運営しています! 「時間もお金もかけられない、だけど魅力は伝えたい!」という方にぴったりなツールですので、ホームページでお困りの方がいたら、ぜひご検討ください! https://spread-site.com