想定読者
- 新商品の売上が途中から伸び悩んでいる方
- 一部の熱心な顧客には刺さるのに広がらないと感じている方
- 自社の商品が今どの段階にあるのか整理したい方
結論
新商品が一部の人にしか売れないのは、商品が悪いからとは限りません。 初期に買ってくれる人と、その後に広がる主流の顧客では、求めているものが大きく違うからです。
この断絶を説明するのがキャズム理論です。 最初の支持を得ることと、一般市場へ広がることは別の課題です。 ここを見誤ると、初期の成功があっても途中で失速しやすくなります。
キャズム理論とは何か
キャズム理論は、新しい商品やサービスが市場に広がる時に、途中で大きな壁があることを示す考え方です。 特に重要なのは、初期に飛びつく人たちと一般的な顧客の間に深い溝があるという点です。
この溝がキャズムです。 英語のchasmは、深い谷や裂け目という意味です。 つまり、最初の顧客に売れたからといって、そのまま自然に大きな市場へ広がるわけではない、ということです。
市場には5つの顧客層がある
キャズム理論を理解するには、顧客が同じではないことを知る必要があります。 新しいものへの反応の速さによって、市場は大きく5つに分けて考えられます。
イノベーター
新しいものを誰よりも早く試したい人たちです。 技術そのものや新しさに価値を感じやすく、多少未完成でも試します。
アーリーアダプター
新しいものに敏感で、周囲への影響力も持ちやすい層です。 新商品を使うことで先に進める、差別化できる、といった価値に反応します。
アーリーマジョリティ
ここから主流市場に入ります。 新しさよりも、実用性や安心感を重視する人たちです。 他社の導入事例や、失敗しにくさを見て判断します。
レイトマジョリティ
かなり慎重な層です。 多くの人が使っていることが前提になってから動きます。
ラガード
最も保守的な層です。 新しいものへの抵抗感が強く、最後まで導入しないこともあります。
なぜ一部の人から広がらないのか
新商品が最初に売れる時、多くの場合はイノベーターやアーリーアダプターが反応しています。 この人たちは、新しさや可能性に価値を感じるため、多少の不便さがあっても受け入れます。
しかし、その後に広がるためには、アーリーマジョリティに届かなければなりません。 ここで問題になるのが、両者の価値観の違いです。
初期顧客は新しさを求める
初期の顧客は、次のような点に魅力を感じやすくなります。
- 業界初である
- 新しい技術が使われている
- まだ誰も使っていない
- 先に試すこと自体に価値がある
この層に向けた訴求は、勢いがあり、尖っていても通用します。
主流顧客は安心を求める
一方で、主流市場の顧客は次のような点を重視します。
- 本当に使えるのか
- 導入して失敗しないか
- 他社でも使われているか
- サポートはあるか
- 手間なく運用できるか
つまり、初期顧客に刺さった言葉が、そのまま主流市場に刺さるとは限りません。 ここに大きな断絶があります。
キャズムはどこで起きる?
キャズムは、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にあるとされます。 ここが最も危険なポイントです。
初期の顧客に評価されていると、売れている感覚が生まれます。 ですが、その成功体験のまま次へ進もうとすると、主流市場には響かず、急に伸びが止まることがあります。
よくある兆候は次の通りです。
- 最初の反応は良かったのに、その後が続かない
- 感度の高い人には評価されるが、一般層に広がらない
- 商品説明をしても、導入の不安ばかり聞かれる
- 新しさを訴えても反応が鈍い
- 広告の反応が急に落ちる
この状態は、努力不足というより、売る相手と伝え方がずれている可能性があります。
キャズムを越えるための考え方
キャズムを越えるには、初期市場でうまくいったやり方をそのまま続けないことが大切です。 必要なのは、新しさを売る発想から安心して使える価値を売る発想への切り替えです。
訴求を変える
主流市場に向けては、革新性だけでは弱くなります。 伝えるべきなのは、次のような内容です。
- どんな課題を解決するのか
- 導入すると何が楽になるのか
- どんな実績があるのか
- どんなサポートがあるのか
新しいことより、使った後の安心感を見せる必要があります。
商品の見せ方を変える
初期顧客は、多少未完成でも使いこなしてくれます。 ですが、主流市場はそうではありません。
そのため、商品単体ではなく、使い始めやすい状態まで含めて考える必要があります。
たとえば、次のような要素です。
- 導入マニュアル
- 初期設定の支援
- 問い合わせ対応
- 活用事例
- 周辺サービス
売るのは機能だけではなく、安心して使える仕組み全体です。
狙う市場を絞る
主流市場全体を一気に取りにいこうとすると、メッセージがぼやけます。 そのため、まずは特定の業種や課題に絞って、強く刺さる場所を作ることが有効です。
たとえば、
- 特定業界向けに導入事例を作る
- ある課題に特化した訴求をする
- 小さな市場で圧倒的な実績を作る
こうして実績を積むことで、次の市場にも広げやすくなります。
自社がキャズム前後にいるか見極める視点
今の自社がどこにいるかを見極めるには、顧客の反応を見るのが有効です。
次のような違いがあります。
| 状態 | よく出る反応 |
|---|---|
| 初期市場で刺さっている段階 | 新しさや技術への関心が高い |
| キャズム前後 | 実績、導入事例、サポート体制を聞かれる |
| 主流市場に入り始めた段階 | 他社利用、費用対効果、運用負荷を重視される |
もし今、技術の話よりも、導入後の安心や実績ばかり聞かれるなら、売り方を変えるタイミングかもしれません。
よくある質問
Q: キャズム理論はBtoBでも使えますか?
A: 使えます。むしろBtoBでは、導入実績やサポート体制、失敗しにくさが重視されるため、キャズムの考え方が当てはまりやすい場面が多くあります。
Q: 初期顧客に売れているなら成功ではないのですか?
A: 初期の成功は大切ですが、それだけで主流市場に広がるとは限りません。初期顧客と一般顧客では、判断基準が大きく違うためです。
Q: キャズムを越えるには何から始めれば良いですか?
A: まずは、今の顧客が何に反応しているかを整理することです。そのうえで、新しさ中心の訴求から、実績、安心、導入後の価値を伝える方向へ見直すのが基本になります。
Q: ニッチな商品でもキャズムは起きますか?
A: 起きます。市場が小さくても、初期に飛びつく人と慎重な人の差は存在します。むしろニッチな商品ほど、どこで広がりが止まるかを意識することが重要です。
筆者について
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