想定読者
- 重要な決断を前に、いつも「メリット・デメリット」を並べるだけで、なかなか結論が出せない方
- 「リスクを取る」という言葉に漠然とした不安を感じ、現状維持を選びがちな方
- 不確実な時代において、より合理的で、未来の可能性を最大化する意思決定を行いたいと考えているリーダー
結論:未来は、メリット・デメリットの羅列では見えない。リスクとリターンという名の「羅針盤」でしか見えない。
あなたは、重要な決断を迫られた時、まず「メリット・デメリット」を書き出していませんか? 一見、合理的で慎重な姿勢に見えます。しかし、そのリストは、本当にあなたの未来を照らす羅針盤になっているでしょうか。残念ながら、「メリット・デメリット」という思考法は、不確実な未来の事象を評価するには、あまりにも不十分です。なぜなら、そこには「不確実性」という最も重要な要素が抜け落ちているからです。真に合理的な意思決定とは、「リスク(損失の可能性)」と「リターン(利益の可能性)」という視点を取り入れ、未来の可能性を最大化すること。これこそが、不確実な時代を乗りこなすための、最も強力な羅針盤なのです。
なぜ、あなたの「メリット・デメリット」リストは機能しないのか?
多くの人が意思決定の際に使う「メリット・デメリット」リスト。なぜ、それが機能しないのでしょうか。その理由は、このフレームワークが持つ、いくつかの致命的な欠陥にあります。
まず、「不確実性の無視」です。メリット・デメリットは、あたかもそれが「確実」に起こるかのように記述されます。しかし、未来は常に不確実です。そのメリットが本当に実現するのか、そのデメリットが本当に発生するのか、その「可能性」が考慮されていません。例えば、「売上が上がる」というメリットは、それが100%確実なのか、それとも10%の可能性なのかで、その価値は全く異なります。
次に、「感情的な判断への誘導」です。リストアップされた項目に、人は無意識のうちに主観的な重み付けをしてしまいます。自分が望む結果に繋がるメリットを過大評価し、都合の悪いデメリットを軽視してしまう。これにより、客観的な判断が歪められ、感情的な選択に流れやすくなります。
そして、「機会損失の見落とし」です。ある選択肢を選んだ場合、選ばなかった他の選択肢で得られたはずの利益(機会損失)が、このリストには考慮されません。これにより、最善の選択肢を見逃してしまうリスクが高まります。
このフレームワークは、過去の事実を整理するには良いかもしれません。しかし、未来の不確実な事象を評価し、最適な意思決定を下すには、あまりにも力不足なのです。
「リスク・リターン」思考が、未来の不確実性を乗りこなす
では、どうすれば不確実な未来を、より客観的に評価できるのでしょうか。そこで登場するのが、「リスク・リターン」思考です。
- リスク: その選択をした場合に発生しうる「損失の可能性(確率)」と「その損失の大きさ」。
- リターン: その選択をした場合に発生しうる「利益の可能性(確率)」と「その利益の大きさ」。
重要なのは、それぞれの「可能性(確率)」を考慮に入れることです。例えば、新規事業への投資を考えてみましょう。
従来のメリット・デメリット思考:
- メリット:市場拡大、売上増
- デメリット:初期投資、失敗リスク
リスク・リターン思考:
- リスク:失敗確率30%で1億円の損失
- リターン:成功確率70%で3億円のリターン
この場合、期待値は (3億円 × 0.7) + (-1億円 × 0.3) = 2.1億円 - 0.3億円 = 1.8億円となります。この「期待値」という数字を算出することで、感情や直感に流されず、より客観的で合理的な判断を可能にするのです。
「リスク・リターン」で判断するための3つのステップ
この思考法を、あなたの意思決定にどう組み込むか、具体的なステップを見ていきましょう。
まず、「最悪のシナリオ」と「最高のシナリオ」を具体的に想像することです。その選択をした場合に、何が起こりうるか、その両極端を具体的に言語化します。これにより、漠然とした不安や期待を、具体的なイメージに変えることができます。
次に、それぞれのシナリオの「発生確率」を推測することです。過去のデータ、専門家の意見、類似事例などを参考に、主観的で構わないので、パーセンテージで確率を割り振ります。この「数字にする」行為が、感情的な判断にブレーキをかけ、より冷静な思考を促します。
そして最後に、「期待値」を計算し、複数の選択肢を比較することです。期待値=(リターン × 成功確率)+(リスク × 失敗確率)。この計算をすることで、最も合理的な選択肢が浮かび上がります。たとえリスクが高く見えても、期待値がプラスであれば、それは「取るべきリスク」であると判断できるのです。
「リスクを取る」とは、無謀な挑戦ではない。合理的な選択である。
「リスクを取る」という言葉は、しばしば無謀な挑戦や、ギャンブルのようなものと誤解されがちです。しかし、リスク・リターン思考における「リスクを取る」とは、決して無謀な挑戦を意味しません。それは、リスクを「理解し、管理し、適切に取る」ための思考法なのです。
不確実な時代において、リスクを取らないことは、最大の「リスク」である、という逆説的な真実があります。なぜなら、現状維持は衰退を意味するからです。この思考法を身につけることで、あなたは感情に流されず、未来の可能性を最大化するための、より大胆で、しかし合理的な意思決定ができるようになるでしょう。
よくある質問
Q: 確率を正確に推測する自信がありません。
A: 完璧な確率を推測することは、誰にもできません。重要なのは、完璧な数字を出すことではなく、「数字にしてみる」という行為そのものです。数字にすることで、漠然とした不安や期待が具体化され、感情的な判断にブレーキがかかります。まずは、大まかな「高・中・低」や「〇〇%くらい」という感覚から始めてみましょう。
Q: リスクばかりに目が行ってしまい、行動できません。
A: それは、人間の脳が「損失回避性」という性質を持っているからです。この場合は、リターンを過小評価している可能性があります。リターンを具体的に想像し、その喜びを強く意識することで、リスクとのバランスを取ることができます。また、リスクを最小化するための「ヘッジ戦略」も同時に考えるようにしましょう。
Q: 小さな決断でも、リスク・リターンで考えるべきですか?
A: 全ての決断で厳密に計算する必要はありません。しかし、この思考法を習慣化するためには、日常の小さな決断でも意識的に使ってみることが有効です。例えば、「このランチに〇〇円のリスクを払って、〇〇というリターンが得られるか?」のように、ゲーム感覚で試してみましょう。
Q: リスク・リターン思考は、冷たい判断になりませんか?
A: 冷たい、と感じるかもしれませんが、それは感情を排除するということではありません。感情に流されず、客観的なデータに基づいて判断することで、結果的に、より多くの人を幸せにする可能性が高まります。感情は、意思決定の「燃料」にはなりますが、「羅針盤」にはなり得ません。
筆者について
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