想定読者

  • 会議で発言するのが、いつも同じメンバーであることに悩んでいるリーダー
  • 声の大きい人の意見に、議論が支配されてしまう状況を本気で改善したい方
  • 内向的なメンバーが持つ、質の高い意見やアイデアを引き出したいと考えているファシリテーター

結論:最高の議論は「沈黙」の中で生まれる

あなたの会社の会議は、本当に「全員」で議論しているでしょうか。それとも、一部の「声が大きい人」の独壇場と化し、他の多くのメンバーは、ただの「観客」になってしまってはいないでしょうか。

私たちが信じてきた「活発な議論=声が飛び交う会議」という常識は、実は、多様な意見を封殺し、思考の質を低下させる罠だったのかもしれません。

今回紹介する「サイレント・ミーティング」は、あえて「会話」という制約を取り払うことで、参加者全員の思考を解放し、声の大きさではなく、アイデアの質そのもので議論することを可能にする、革命的な会議手法なのです。

あなたの会議が「一部の人の独壇場」になる理由

従来の会議が抱える、最も根深い問題。それは、「発言権の奪い合い」が、常に発生していることです。話すのが得意な人、役職が上の人、あるいは単純に声が大きい人の意見ばかりが場を支配し、議論の方向性を決めてしまう。こうした光景は、どこの組織でも見られます。

その一方で、内向的な人や、じっくりと考えてから発言したいタイプの人は、どうでしょうか。彼らは、頭の中に優れたアイデアや、的確な指摘を持っていたとしても、この「早い者勝ち」の議論のペースについていけず、発言のタイミングを逸し続けます。結果、彼らは会議への貢献を諦め、思考を停止した「観客」になってしまうのです。組織は、彼らの持つ貴重な知見を、会議のたびに、みすみすドブに捨てているのと同じなのです。

サイレント・ミーティングとは?「書く」ことで議論する会議術

この問題を、根本から解決するのが「サイレント・ミーティング」です。その名の通り、会議の一定時間、あるいは会議の全体を通じて、参加者は一切の会話をせず、テキストベースで議論や意見交換を行う会議手法を指します。

基本的な進め方は、以下の通りです。 まず、会議の主催者は、事前に、議論のテーマとなるドキュメント(Google Docsのような、共同編集可能なもの)を準備し、参加者に共有します。そして、会議の冒頭でファシリテーターがゴールを説明した後、例えば15分から20分程度の「沈黙の作業タイム」を設けます。

参加者は、その時間、一切話すことなく、共有されたドキュメントを各自で読み込み、自分の意見や質問、アイデアを「コメント機能」などを使って、テキストでどんどん書き込んでいきます。

そして、設定した時間が来たら、その書き込まれたコメントを一つずつ全員で確認しながら、声に出しての議論を開始するのです(会議の目的によっては、最後までテキストベースで完結させることもあります)。これは、Amazonの「6ページャー」の思想を、より手軽に、そして汎用的にした会議手法とも言えるでしょう。

なぜ「沈黙」が、議論の質を劇的に高めるのか

この一見、奇妙にも思える「沈黙」の時間が、なぜ議論の質を劇的に高めるのでしょうか。

その最大のメリットは、発言の機会が、完全に「平等」になることです。声の大きさも、役職も、話すスピードも関係ありません。全員が、自分の考えを、同じ重みを持つ「テキスト」として、表明することができます。これにより、普段は発言の機会が少なかった内向的なメンバーの、深く考え抜かれた意見や、鋭い指摘を、確実に拾い上げることが可能になります。

次に、全員が「同時に」思考し、発言できるという、驚異的な効率性です。通常の会議では、一人が話している間、他の人は基本的に「聞く」しかありません。しかし、サイレント・ミーティングでは、全員が同時にドキュメントに自分の思考を書き込んでいくため、会議時間全体の思考の総量が、物理的に何倍にもなるのです。

さらに、感情的な対立を避け、論理的な議論を促進するという効果も見逃せません。テキストベースのコミュニケーションは、声のトーンや表情といった非言語情報が削ぎ落とされます。そのため、自然と「誰が言ったか(Who)」よりも「何を言ったか(What)」に焦点が当たりやすくなります。感情的な反発や、その場の雰囲気ではなく、アイデアそのものの合理性や価値を、冷静に評価する土壌が生まれるのです。

サイレント・ミーティング、3つの実践パターン

  • パターン1: ブレインストーミング型 共有ドキュメントに「来期の新サービスのアイデア」といった議題を一つ書き、あとは参加者が、付箋を貼るような感覚で、アイデアを自由に、そして大量に書き込んでいく。他人のアイデアに触発されて、新たなアイデアが生まれる相乗効果も期待できます。
  • パターン2: 文書レビュー型 企画書や報告書のドラフトを共有し、参加者にレビューコメントを書き込んでもらう。誤字脱字の指摘といった細かい点から、内容の論理的な矛盾への鋭い質問まで、短時間で質の高いフィードバックを、多角的に得ることができます。
  • パターン3: ハイブリッド型 これが最も導入しやすく、効果を実感しやすい方法です。会議の冒頭15分だけをサイレント・ミーティングとし、そこで出た意見や質問をアジェンダとして、残りの時間は、そのアジェンダに沿って声に出して議論する。これにより、議論の質と効率を両立させることができます。

よくある質問

Q: 全員が黙っていると、気まずい雰囲気になりませんか?

A: 最初は、少し奇妙に感じるかもしれません。しかし、それは「沈黙=気まずいもの」という、私たちの思い込みに過ぎません。ファシリテーターが冒頭で「この沈黙は、全員が深く思考するための、非常に生産的な時間です」と宣言することで、参加者は安心して「思考の素潜り」に集中できます。静かなBGMを流すのも良いでしょう。

Q: テキストでのコミュニケーションは、冷たい印象を与えたり、誤解を生んだりしませんか?

A: 確かに、テキストは感情が伝わりにくい側面があります。だからこそ、相手の意見を否定する際には、「〇〇というご意見、ありがとうございます。一方で、△△というリスクも考えられますが、その点はいかがでしょうか?」のように、敬意と配慮を持った言葉を選ぶ、といったテキストコミュニケーションの作法が重要になります。

Q: タイピングが遅い人がいると、不公平になりませんか?

A: サイレント・ミーティングは、タイピングの速さを競うものではありません。重要なのは、思考の「量」や「質」です。もし、タイピングが苦手な人がいる場合は、手書きのメモを写真に撮って共有する、といった代替手段も考えられます。ツールの差が、意見の価値を左右しないような配慮が必要です。

Q: どんな会議でも、サイレント・ミーティングは有効ですか?

A: 万能ではありません。例えば、チームビルディングを目的とした、メンバー同士の人間関係を深めるための会議や、緊急のトラブル対応など、即時の口頭でのコミュニケーションが求められる場面には不向きです。アイデア出し、文書レビュー、論点の洗い出しなど、「深く、多角的に考える」ことが求められる会議で、最大の効果を発揮します。

筆者について

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