想定読者

  • 社内の年功序列や、旧態依然とした評価制度に強い限界を感じている経営者
  • 実力や成果を上げているにも関わらず、年齢や社歴を理由に正当に評価されていないと感じる若手・中堅社員
  • 多様なバックグラウンドを持つ人材を登用し、組織を活性化させたいと考えている人事担当者やマネージャー

結論:組織の最大の資産は「経験年数」ではなく「熱量」である

あなたの会社では、誰が、どのような基準で評価されていますか。勤続年数が長いだけで、変化を嫌うベテラン社員が高い地位に安住してはいないでしょうか。あるいは、高い能力と意欲を持つ若手が年功序列の壁に阻まれ、その才能を腐らせてはいないでしょうか。

幕末の風雲児・高杉晋作が、長州藩に創設した「奇兵隊」。この組織が旧来の武士団を凌駕する、最強の戦闘集団となり得た理由。その核は、「身分や年齢、過去の実績を一切問わず、ただ未来を変えようとする『熱量』と、目の前の戦いで結果を出す『実力』のみを評価する」という、徹底した実力主義にありました。組織の真の力とは、過去の経験の蓄積ではありません。未来へ向かうエネルギーの総量です。この記事では、奇兵隊の仕組みから、年功序列という名の呪縛を破壊し、社員の熱量を最大化する人事評価制度の作り方を学びます。

なぜ「奇兵隊」は、革命的な組織だったのか

江戸時代の武家社会は、厳格な身分制度によって成り立っていました。戦場で戦うのは「武士」の特権であり義務。農民や町人が、武器を持って戦うことなど常識では考えられないことでした。

高杉晋作は、この「常識」を完全に破壊しました。彼が創設した奇兵隊は、武士だけでなく農民、町人、神官、僧侶に至るまで、身分を問わず志願してきた者すべてで構成された、日本初の「民兵組織」でした。家柄や生まれ育ちが、その人間の価値を決めるのではない。国を憂い、自らの力で未来を変えたいと願う「志」さえあれば、誰でもヒーローになれる。奇兵隊は、まさに幕末の日本に現れた、革命的な人事制度そのものだったのです。

幕末最強集団を作り上げた「実力主義」3つの原則

奇兵隊の強さの秘密は、その人事システムの細部に隠されています。

1. 採用の原則:「過去」を問わず「未来」を買う

奇兵隊の入隊資格は、ただ一つ、「藩のために命を懸けて戦う意志があるか」でした。過去にどんな身分であったか、どんな経歴を持っているかは一切問われませんでした。これは、現代の採用活動における「ポテンシャル採用」や、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に登用する「ダイバーシティ採用」の考え方に通じます。

多くの企業が、いまだに学歴や職歴といった「過去のスペック」で人材をフィルタリングしています。しかし、本当に重要なのは、その人物が自社の未来にどれだけの「熱量」と「可能性」をもたらしてくれるか、ではないでしょうか。奇兵隊は、スペックではなくポテンシャルを買うことで、埋もれていた多くの才能を発掘したのです。

2. 評価の原則:「身分」ではなく「功績」で測る

隊内での評価基準も、極めてシンプルでした。それは、戦場での「功績」です。どれだけ敵を倒したか、どれだけ困難な任務を成功させたか。その、誰の目にも明らかな「成果」だけが評価の対象でした。たとえ元が武士であっても、臆病で成果を上げられなければ評価されず、元が農民であっても勇敢に戦い、功績を上げれば最大限に称賛されました。

あなたの会社には、成果とは関係のない曖昧な評価基準が残っていませんか。「協調性」や「勤務態度」といった、上司の主観でどうにでもなる項目が評価の大部分を占めてはいないでしょうか。明確なKPI(重要業績評価指標)を設定し、その達成度に基づいて評価する。この、当たり前であるべき原則を徹底することが、実力主義の第一歩です。

3. 報酬・昇進の原則:「年功」ではなく「成果」で報いる

奇兵隊では、功績を上げた者は身分に関係なく、隊長などの役職に抜擢されました。給与(給料)も身分ではなく、その役職と働きに応じて支払われました。農民出身の隊長が、武士出身の部下を持つという、当時ではありえない光景がそこにはありました。

組織において、社員のモチベーションを最も左右するのは、「正当に報われているか」という感覚です。成果を出した人間が、年齢や社歴に関係なく役職や報酬で、きちんと報われる。この「当たり前」が、組織に健全な競争と成長への意欲を生み出すのです。

実力主義が陥りがちな「副作用」と、その対策

しかし、奇兵隊の仕組みも完璧ではありませんでした。その「副作用」から、現代の我々が学ぶべき教訓もあります。

  • 過度な成果主義の罠: 個人の功績を重視するあまり、チームワークが疎かになったり、兵士が手柄を焦って無謀な突撃をしたり、といった弊害も生まれました。現代の企業においても、個人のインセンティブを追求しすぎると、部署間の連携が失われたり、短期的な成果ばかりを追い求めたりといった問題が発生します。対策として、個人の成果だけでなく「チームへの貢献度」や「他部署との連携」といった項目も、評価に加えることが重要です。
  • カリスマへの依存: 奇兵隊は、高杉晋作という圧倒的なカリスマによって、その熱量が保たれていました。彼が病で戦線を離れると、組織は一時的に統制を失いかけます。これも、スタートアップなどでよく見られる創業者への過度な依存のリスクです。対策は、リーダーの思想やビジョンを単なる精神論ではなく、誰もが理解し実践できる「行動規範」や「評価制度」という「仕組み」に落とし込むことです。

よくある質問

Q: 年功序列にも、組織の安定や、技術の継承といったメリットがあるのでは?

A: おっしゃる通りです。年功序列のすべてを、否定するわけではありません。重要なのはバランスです。長年の経験が価値を持つ職種や、安定性が求められる部署では年功的な要素を残しつつ、一方で成果が重要な営業部門や、新しい発想が求められる開発部門では実力主義の比重を高める、といった「ハイブリッド型」の評価制度が現実的な解決策となります。

Q: 公平な評価制度を作ったつもりでも、結局、社員から不満が出ます。

A: 評価制度に、全員が100%満足するという状態はありえません。しかし、不満を最小限にすることは可能です。重要なのは、評価の「透明性」と「納得感」です。なぜこの評価になったのか、その根拠となる事実(データ)を示し、本人と対話し次の成長への期待を伝える。この丁寧なフィードバックのプロセスこそが、制度への信頼を生みます。

Q: ベテラン社員からの抵抗が、どうしても避けられません。

A: 奇兵隊も、長州藩の正規軍(武士たち)からは当初「百姓兵」と見下され、多くの抵抗に遭いました。高杉晋作は、彼ら正規軍を遥かに凌駕する「圧倒的な成果」を戦場で見せつけることで、その抵抗を黙らせました。新しい制度の有効性を示すには、言葉だけでなく小さな成功事例(モデルケース)を作り、その「成果」を社内に見せつけることが、最も効果的なのです。

Q: 奇兵隊のような組織は、平和な時代には、むしろ扱いにくい存在になりませんか?

A: まさに、その通りです。奇兵隊は、幕末という「動乱期」だからこそその真価を発揮しました。これは、企業経営においても同様です。市場が安定し事業が成熟期に入れば、求められる人材のタイプも組織のあり方も変わってきます。重要なのは、自社が今どのような市場環境(動乱期か、安定期か)に置かれているのかを冷静に見極め、それに合わせて人事制度も柔軟に変化させていくことです。

筆者について

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