想定読者

  • 自社商品の営業トークやプレゼンテーションの説得力を高めたい方
  • 広告やWebサイトのコピーライティングを改善したいマーケター
  • 顧客とより誠実で長期的な信頼関係を築きたいすべてのビジネスパーソン

結論:誰に何をどう伝えるか。メッセージの「側面」が説得の成否を分ける

あなたは自社の商品やサービスを顧客にプレゼンテーションしています。その時あなたは何を語るでしょうか。

多くの人はその商品の素晴らしい点、優れている点、競合にはないユニークな利点だけを熱心に語ろうとするでしょう。これが説得における「片面提示」です。

一方で商品の利点を語るだけでなく、あえて「しかしこういう欠点もあります。なぜなら…」といくつかの不利な情報も同時に開示するアプローチがあります。これが「両面提示」です。

どちらがより説得力を持つのでしょうか。答えは「常にこちらが正しい」という万能な正解は存在しないということです。説得の成否はあなたが「誰に」話しているのかという聞き手の状況によって完全に決まってしまうのです。

すでにあなたのファンである顧客には片面提示が有効かもしれません。しかしあなたのことをまだ信頼していない、あるいは懐疑的な顧客に対しては、良いことばかりを並べ立てるメッセージはうさんくさい「宣伝文句」として一瞬で見抜かれてしまいます。

そのような相手の固く閉ざされた心の扉を開く鍵。それが誠実な「弱み」の開示、すなわち「両面提示」なのです。

「片面提示」と「両面提示」とは何か

まず二つのアプローチを明確に定義しましょう。

  • 片面提示(One-Sided Message) 主張のポジティブな側面だけを提示する手法です。メリット、利点、強みだけを伝え、デメリットや競合の存在といったネガティブな情報は一切無視します。 例:「この新しいソフトウェアは業界最高の機能と美しいデザインを兼ね備えています!」
  • 両面提示(Two-Sided Message) 主張のポジティブな側面と同時にネガティブな側面も意図的に提示する手法です。ただし提示したネガティブな情報を打ち消す、あるいはそれを上回るポジティブな情報で締めくくるのが一般的です。 例:「この新しいソフトウェアは確かに競合製品よりも価格は高いです。しかしそれは長期的に見てあなたの時間を2倍以上節約してくれる高度な自動化機能に投資しているからなのです」

あなたの顧客はどちらのタイプか

この二つの手法をどう使い分けるべきか。その分岐点は聞き手である顧客の「状態」です。この理論は第二次世界大戦中にアメリカ軍が兵士の士気を高めるためのプロパガンダ研究の中で、心理学者カール・ホブランドらによって体系化されました。

片面提示が有効な相手

  • すでにあなたに好意的な顧客 あなたの会社のファンであったり、あなたの主張にもともと賛成している人々です。彼らにとってネガティブな情報は不必要な「迷い」を生むだけです。ポジティブな情報だけを力強く伝える方が、彼らの確信をより強固にします。
  • その分野の知識レベルが低い顧客 複雑なメリット・デメリットの比較は彼らを混乱させてしまいます。シンプルで分かりやすいポジティブなメッセージの方が、理解しやすく受け入れられやすい傾向があります。

両面提示が有効な相手

  • あなたに懐疑的な、あるいは反対の意見を持つ顧客 彼らに良いことばかりを伝えても「どうせ宣伝だろう」と聞く耳を持ちません。まず「おっしゃる通り〇〇という懸念点がありますよね」と相手の視点を受け入れる。その上でこちらの主張を展開することで、初めて相手はあなたを「フェアな対話相手」だと認識します。
  • 知識レベルが高い聡明な顧客 彼らはどうせあなたが言わなくてもその商品の長所も短所も自分自身で調べ上げるか、あるいはすでに知っています。その相手に長所だけを伝えるのは「何かを隠している」あるいは「自分を見くびっている」という不信感を与える最悪の行為です。
  • 将来競合のメッセージに触れる可能性が高い顧客 あらかじめこちらから弱点を提示しそれに対する反論を示しておく。これは顧客に競合からの未来の攻撃に対する「免疫」を与えるようなものです。これを心理学では「接種理論」と呼びます。

よくある質問

Q: 自分の商品の「弱み」をわざわざ言うなんて怖いです。

A: その感覚は自然なものです。しかし長期的な信頼関係を築きたいのであれば、その恐怖は乗り越えるべき壁です。顧客が後から自分で弱点を発見した場合、彼らは「騙された」と感じます。しかしあなたが先回りして誠実に弱点を開示した場合、彼らは「この人は正直で信頼できる」と感じ、あなたが語る「強み」の部分にもより耳を傾けてくれるようになります。

Q: 広告ではどちらを使うべきですか?

A: 目的と媒体によります。不特定多数にブランドのポジティブなイメージを瞬時に伝えたいテレビCMのような短い広告では、片面提示が有効な場合が多いでしょう。一方で専門家向けの商品詳細なスペックを解説するWebサイトやLP(ランディングページ)では、競合製品との公平な比較や顧客レビューの良い点・悪い点の両方を掲載する両面提示がはるかに高い信頼性を生み出します。

Q: プレゼンや商談の冒頭で使うべきですか?

A: 相手が懐疑的であると予測される場合には非常に強力な武器となります。「おそらく皆様が最も懸念されているのは価格のことだと思います。はい、弊社の製品は他社よりも高価です。本日はまずなぜその価格設定になっているのか、そしてなぜそれが長期的には皆様にとって最も経済的な選択となるのか、その理由からご説明させてください」このように切り出すことで相手の心のガードを一気に解き、議論の主導権を握ることができます。

Q: どんな「弱み」を伝えれば良いのでしょうか?

A: 最も効果的なのは「あなたのターゲット顧客にとってはそれほど重要ではない弱み」「裏を返せば強みになる弱み」を開示することです。例えば「弊社のソフトは競合製品ほど多機能ではありません。なぜなら我々は一つの本質的な機能にすべての開発リソースを集中させているからです」と語る。これは「機能の少なさ」という弱みを「専門性と品質の高さ」という強みの裏返しとして顧客に認識させることができる、洗練された両面提示の技術です。

筆者について

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