想定読者
- 日々の利益追求や規模の拡大に、どこか虚しさや疑問を感じ始めている経営者
- 自社の存在意義(パーパス)を明確にし、経営の揺るぎない軸を打ち立てたい方
- 給与や待遇だけではない「働きがい」を組織に生み出し、優秀な人材から選ばれたいと考えているマネージャーや人事担当者
結論:「何のために戦うのか」その答えが、人を、組織を、最強にする
織田信長が「天下統一」という壮大なビジョンを掲げ、武田信玄が「風林火山」という緻密な戦略を駆使したのに対し、上杉謙信は、ただひたすらに「義」のために戦い続けました。彼の戦いは、領土拡大や私利私欲のためではありません。助けを求める者がいれば、たとえそれが利益にならなくとも、時には危険を冒してでも駆けつける。その一貫した姿勢は、現代の経営における「パーパス経営」そのものです。
パーパスとは、企業の存在意義。「私たちは、何のために存在するのか」という根源的な問いへの答えです。多くの企業が利益やシェアといった「目に見える成果」を追い求める中で、謙信の生き様は、「利益や条件を超えた、揺るぎない理念こそが、最も強力な競争優位性になる」という真実を教えてくれます。なぜなら、明確なパーパスは、優秀な人材を惹きつけ、組織を一つにし、顧客や社会からの絶大な信頼を勝ち取る、最強の引力となるからです。この記事では、謙信の「義」の経営を紐解き、あなたの会社を「利益を生む機械」から「人々が集う旗印」へと昇華させる方法を探ります。
なぜ謙信は「戦の天才」なのに天下を取らなかったのか?
利益度外視の戦いと「敵に塩を送る」精神
上杉謙信は、生涯70回以上の戦でほとんど負けを知らない「戦の天才」でした。しかし、彼はその強大な軍事力を、自らの領土拡大のために積極的に使うことはありませんでした。彼が出陣する理由の多くは、北条氏に攻められた関東の諸将や、武田信玄に追われた村上義清など、助けを求めてきた他者を救うためでした。
特に有名なのが「敵に塩を送る」という逸話です。敵対する武田信玄が、今川氏によって塩の供給を絶たれ、領民が苦しんでいると知った謙信は、「戦は兵をもって行うもので、塩で苦しめるのは本意ではない」として、自国の塩を武田領に送ることを許可しました。利益や合理性だけを考えれば、到底ありえないこの行動こそ、彼の行動原理が「義」にあったことを象徴しています。
「義」こそがパーパス経営の原点
謙信の行動は、現代の「パーパス経営」の考え方と完全に一致します。パーパス経営とは、利益の最大化を企業の唯一の目的とするのではなく、自社の事業を通じて、社会や顧客に対してどのような価値を提供するのか、という存在意義(パーパス)を経営の中心に据える考え方です。謙信にとっての「義」とは、まさに越後という国、そして上杉家という組織の存在意義そのものだったのです。
「義」がもたらす3つの経営的メリット
一見、非合理的で利益にならない「義」の経営は、実は組織に計り知れないメリットをもたらします。
1. 優秀な人材を惹きつける「採用力」
謙信の元には、彼の「義」に共感した多くの武将や家臣たちが、自らの意思で集まってきました。彼らは、領地や金銭のためだけでなく、「義のために戦う」という崇高な目的に、自らの人生を捧げたいと願ったのです。
現代の採用市場においても、優秀な人材ほど、給与や待遇といった条件面だけでなく、「この会社で働く意味」や「社会への貢献実感」を重視します。企業のパーパスが明確で、それが社会的に意義のあるものであれば、優秀な人材は自ずと集まってきます。これは、高額な採用コストをかけるよりも、はるかに強力な採用戦略です。
2. 組織の結束を高める「求心力」
戦国の世において、裏切りや内紛は日常茶飯事でした。しかし、上杉家は比較的、家臣団の結束が固かったと言われています。なぜなら、彼らは「私利私欲のためではなく、義のために戦っている」という共通の目的意識を持っていたからです。この大義名分が、困難な戦況においても、兵士たちの士気を高く保ち、組織を一つにまとめました。
企業のパーパスも同様の役割を果たします。日々の業務が、会社の大きな目的のどの部分を担っているのかを社員が理解できれば、仕事へのモチベーションは格段に上がります。パーパスは、組織の向かうべき方向を示す「北極星」となり、社員の心を一つにするのです。
3. 顧客やパートナーからの「信頼」
「困った時は、上杉謙信を頼れば助けてくれる」。彼の「義」を貫く姿勢は、戦国時代において、比類なき「信頼」というブランドを築き上げました。この信頼があるからこそ、多くの大名が彼を頼り、越後の国は安定したのです。
企業もまた、自社のパーパスに沿った誠実な活動を続けることで、顧客や社会からの信頼を勝ち取ることができます。目先の利益のために顧客を裏切らない、環境や社会に配慮した製品を作る。こうした一貫した姿勢が、価格競争に巻き込まれない強力なブランドロイヤルティを育むのです。
あなたの会社に「義」を打ち立てる3つのステップ
では、どうすれば自社のパーパス、すなわち現代の「義」を打ち立てることができるのでしょうか。
Step1: パーパスを発見する
パーパスは、ゼロから作り出すものではなく、自社の中にすでに存在するものを見つけ出す作業です。以下の問いを、経営陣や社員と議論してみてください。
- 「もし、明日から自社がなくなったら、顧客や社会は、具体的に何を失うだろうか?」
- 「私たちは、事業を通じて、誰を、どのように幸せにしているか?」
- 「創業者は、どんな想いでこの会社を立ち上げたのか?」
これらの問いを深掘りすることで、自社の事業の核にある「社会的な価値」が見えてきます。
Step2: パーパスを言語化する
発見したパーパスを、誰もが理解でき、共感できる、シンプルで力強い言葉に磨き上げましょう。それは、経営理念や社是といった、額縁に飾るためのお題目ではありません。社員が日々の判断に迷った時に立ち返れる、行動の拠り所となる言葉であるべきです。謙信の「義」のように、短く、覚えやすく、そして心を震わせる言葉を目指しましょう。
Step3: パーパスを体現する
最も重要なのが、このステップです。言語化したパーパスを、経営のあらゆる場面で一貫して体現し続ける。採用基準、人事評価、事業計画、マーケティング、日々のコミュニケーション。その全てが、パーパスと一直線に結びついている状態を目指します。経営者自らが、誰よりもパーパスを信じ、行動で示す「パーパスの伝道師」になる覚悟が求められます。
よくある質問
Q: パーパスなんて、結局は綺麗事ではないですか?
A: パーパスを「儲けるための手段」と捉えると、それは綺麗事になります。しかし、パーパスを「企業の存在理由そのもの」と捉え、誠実に追求するなら、それは強力な経営戦略となります。なぜなら、本物のパーパスは、人の心を動かし、行動を促し、結果として利益をもたらすからです。
Q: 小さな会社でもパーパス経営は可能ですか?
A: むしろ、小さな会社にこそパーパス経営は不可欠です。大企業のように、給与やブランド力で勝負することはできません。しかし、「社会をこう良くしたい」という経営者の熱い想い、すなわちパーパスこそが、大企業にはない最大の武器となり、優秀な人材や共感してくれる顧客を引きつけるのです。
Q: 社員がパーパスに共感してくれません。どうすれば良いですか?
A: パーパスは、トップダウンで押し付けるものではありません。まず、Step1の「パーパスを発見する」プロセスに、社員を巻き込むことが重要です。そして、パーパスを体現した社員をきちんと評価し、称賛する文化を作りましょう。言葉だけでなく、行動と評価を通じて、パーパスの重要性を伝え続ける必要があります。
Q: 「義」やパーパスを、どうやって利益に繋げるのですか?
A: パーパス経営は、ボランティアではありません。社会的な価値と経済的な価値を同時に追求する「CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)」という考え方が基本です。例えば、環境に配慮した製品(社会的価値)が、結果として新しい顧客層を獲得し、売上向上(経済的価値)に繋がる。パーパスの追求が、結果として長期的な利益を生む好循環を作り出すのです。
筆者について
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