想定読者

  • 優秀な営業担当者に売上が依存している状況から脱却したい経営者
  • 営業チームの生産性を向上させ、組織全体の営業力を底上げしたいマネージャー
  • 勘や経験だけに頼らない、データに基づいた営業戦略を構築したいスモールビジネスオーナー

結論:営業は、もはや気合と根性の勝負ではない。

あなたの会社では、今でも営業を個人の才能や努力といった、不確かなものに頼ってはいませんか。

「今月の目標達成は、あのエースに任せるしかない」
「とにかく足で稼いで、熱意で顧客の心を掴んでこい」

このような精神論は、かつての日本では美徳とされたかもしれません。
しかし、現代のビジネス環境において、その考え方は極めて危険です。

なぜなら、顧客の購買行動が根本的に変わってしまったからです。
現代の顧客は、営業担当者に会うずっと前から、インターネットで情報を収集し、競合製品を比較検討し、SNSで口コミを調べています。営業担当者が初めて接触する頃には、顧客の心は8割方決まっている、と言っても過言ではありません。

このような状況で求められるのは、闇雲な訪問や電話ではなく、適切な顧客に、適切なタイミングで、適切な情報を届けるという、科学的なアプローチです。

それを実現するのが、SalesTech(セールステック)です。

セールステックは、営業(Sales)と技術(Technology)を組み合わせた造語であり、AIやクラウドなどのテクノロジーを活用して、営業活動全体をデータに基づいて効率化・最適化する手法やツール群を指します。

この記事では、セールステックがなぜ今必要なのか、そして、中小企業がこの強力な武器を使いこなし、属人的な営業から脱却して、組織として継続的に売上を伸ばすための具体的な方法を、順を追って解説していきます。

なぜ、あなたの会社の営業は非効率なのか?-従来の営業が抱える3つの病-

セールステックの価値を理解するために、まずは多くの企業が陥っている従来型の営業が抱える構造的な問題点を直視する必要があります。これらの問題は、企業の成長を阻害する深刻な病巣となり得ます。

病巣1:営業活動のブラックボックス化

あなたの会社では、各営業担当者が、いつ、どの顧客に、どのような提案をしているか、正確に把握できているでしょうか。多くの場合、その活動内容は担当者の頭の中や、個人の手帳の中にしか存在しません。これが営業活動のブラックボックス化です。

この状態では、なぜ受注できたのか、あるいはなぜ失注したのか、その原因を客観的に分析することができません。トップ営業担当者の優れたノウハウが組織に共有されることもなく、彼が退職すれば、会社の売上は一気に傾きます。営業が個人のスキルに依存している限り、組織としての安定的な成長は望めないのです。

病巣2:勘と経験に頼る非科学的な意思決定

ブラックボックス化された営業活動は、必然的に勘と経験に頼った意思決定を生み出します。どの見込み客に優先的にアプローチすべきか、どのような切り口で提案すれば響くのか、その判断基準が営業担当者個人の主観に委ねられてしまいます。

もちろん、ベテランの勘は貴重な財産です。しかし、市場環境や顧客ニーズが目まぐるしく変化する現代において、過去の成功体験が常に通用するとは限りません。データという客観的な根拠に基づかない意思決定は、大きな機会損失や、非効率なリソース配分に繋がりやすいのです。

病巣3:顧客の購買プロセスの変化への未対応

前述の通り、現代の顧客は購買に至るプロセスの大半を、営業担当者と接触することなく、オンラインで完結させています。彼らは自社の課題を認識し、解決策を検索し、複数の選択肢を比較検討しています。

にもかかわらず、営業担当者が旧態依然とした製品説明から商談を始めてしまったらどうなるでしょうか。顧客は「その話はもう知っている」と感じ、興味を失ってしまうでしょう。顧客が今、購買プロセスのどの段階にいて、どのような情報を求めているのかを理解せずに行うアプローチは、もはやただのノイズでしかありません。

SalesTech(セールステック)がもたらす3つの変革

これらの深刻な病巣に対し、セールステックは具体的な処方箋を提示します。テクノロジーは、営業活動を個人のアートから、組織のサイエンスへと昇華させる力を持っています。

変革1:営業プロセスの可視化と標準化

セールステックの中核をなすCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)といったツールは、顧客情報、商談の進捗状況、担当者間のコミュニケーション履歴など、営業に関わるあらゆる情報を一元的に記録し、可視化します。

これにより、経営者やマネージャーは、チーム全体の活動状況をリアルタイムで把握できるようになります。どの案件が停滞しているのか、どの担当者が課題を抱えているのかが一目瞭然となり、的確なサポートが可能になります。さらに、受注に至った案件のプロセスを分析すれば、組織としての成功パターン(勝ちパターン)を抽出し、営業活動を標準化することもできます。

変革2:データに基づく顧客の優先順位付け

MA(マーケティングオートメーション)ツールなどを活用すれば、顧客の行動データを自動で収集・分析できます。例えば、ウェブサイトのどのページを閲覧したか、価格表をダウンロードしたか、特定のメールを開封したか、といった行動から、その顧客の購買意欲の高さをスコアリングすることが可能です。

これにより、営業担当者は、数多くの見込み客の中から、今まさにアプローチすべきホットリードを簡単に見つけ出すことができます。勘や経験に頼るのではなく、データに基づいてアプローチの優先順位を決めることで、営業活動の効率は劇的に向上します。

変革3:営業担当者のコア業務への集中

営業担当者の時間は有限です。その貴重な時間を、日報の作成、アポイント調整、見積書の作成といった付随的な業務に費やしていては、本来最も重要な顧客との対話や提案活動に集中できません。

セールステックは、こうしたノンコア業務を徹底的に自動化・効率化します。オンライン商談ツールは移動時間をゼロにし、チャットボットは初期対応を自動化し、SFAはボタン一つで報告書を作成します。テクノロジーに任せられる仕事はテクノロジーに任せ、人間である営業担当者は、創造性や共感性が求められるコア業務に集中する。これが、セールステックが目指す理想の姿です。

すぐに使える!セールステックの代表的なツール分類

セールステックと一言で言っても、その種類は多岐にわたります。ここでは、中小企業が導入を検討すべき代表的な4つのツール分野を紹介します。

CRM/SFA(顧客関係管理/営業支援システム)

セールステックの導入を考えるなら、まずここから始めるべき基盤となるツールです。顧客の基本情報、過去の取引履歴、商談の進捗、担当者とのやり取りなどを一元管理します。SFAは特に営業活動の管理に特化しており、案件管理や予実管理、日報作成などの機能を持ちます。これらを導入することで、前述の営業活動の可視化が実現します。

MA(マーケティングオートメーション)

主に、見込み客(リード)を獲得し、育成するためのツールです。ウェブサイトに訪れた匿名のユーザーの行動を追跡したり、メールマガジンを配信して顧客の興味関心を探ったりしながら、購買意欲が高まるまでコミュニケーションを自動で継続します。そして、購買意欲が一定の基準に達した見込み客を、自動で営業担当者に通知します。

オンライン商談ツール

コロナ禍を経て、多くの企業で急速に普及しました。単なるビデオ会議ツールと異なり、商談に特化した機能を備えているものも多くあります。例えば、画面共有しながら資料に書き込みができる機能や、商談内容を録画して後から振り返る機能、AIが会話を文字起こしして議事録を自動作成する機能などです。移動コストを削減し、一日あたりの商談件数を増やす上で絶大な効果を発揮します。

インサイドセールス支援ツール

インサイドセールスとは、電話やメール、ウェブ会議システムなどを活用して、社内で行う営業活動のことです。このインサイドセールスを効率化するためのツールが数多く登場しています。例えば、クリックするだけで電話がかけられるCTIシステムや、通話内容をAIがリアルタイムで解析してキーワードを抽出したり、優秀な担当者のトークを可視化してチームで共有したりするツールなどがあります。

失敗しないセールステック導入、4つの鉄則

多くの可能性を秘めたセールステックですが、残念ながら、導入したもののうまく活用されずに放置されてしまうケースも少なくありません。そうならないために、経営者が押さえておくべき4つの鉄則をお伝えします。

鉄則1:ツール導入をゴールにしない

最も多い失敗パターンが、ツールを導入すること自体が目的化してしまうことです。重要なのは、ツールを使って何を達成したいのかという目的を、導入前に徹底的に明確にすることです。「営業活動の属人化を解消したい」「商談化率を15%向上させたい」「新規顧客へのアプローチ時間を現在の半分にしたい」など、具体的で測定可能な目標を設定しましょう。

鉄則2:完璧を目指さず、小さく始める

高機能で高価なツールをいきなり全社に導入しようとすると、現場の抵抗に遭い、混乱を招くだけです。まずは、特定のチームや特定の課題に絞って、比較的安価でシンプルな機能を持つツールから試してみるスモールスタートを心がけてください。そこで成功体験を積み、効果を実感しながら、徐々に適用範囲を広げていくのが定着への近道です。

鉄則3:現場の営業担当者を巻き込む

セールステックは、実際にそれを使う営業担当者の協力なくしては絶対に成功しません。トップダウンで一方的に導入を決めるのではなく、導入の目的やメリットを丁寧に説明し、ツール選定の段階から現場の意見を聞くことが不可欠です。彼らが「これを使えば自分の仕事が楽になる」「もっと売れるようになる」と実感できれば、自発的にツールを活用してくれるようになります。

鉄則4:ツールは魔法の杖ではないと心得る

セールステックは、あくまで営業活動を支援するための手段です。ツールを導入すれば自動的に売上が上がるわけではありません。ツールによって可視化されたデータをもとに、営業プロセス上のどこに問題があるのかを分析し、戦略を修正し、改善のアクションを実行する。このPDCAサイクルを回し続けるのは、あくまで人間の役割です。テクノロジーを使いこなす側の思考力が、最終的な成果を左右することを忘れてはなりません。

よくある質問

Q: ITに詳しくない従業員でも使いこなせますか?

A: はい、そのための工夫が凝らされています。近年のセールステックツールの多くは、専門知識がなくても直感的に操作できるユーザーインターフェースを備えています。また、多くのベンダーが導入時のトレーニングや、手厚いカスタマーサポートを提供しています。まずは無料トライアルなどを活用し、自社の従業員が無理なく使えそうかを確認してみるのが良いでしょう。

Q: 導入費用はどのくらいかかりますか?

A: ツールの種類や機能、利用するユーザー数によって大きく異なります。月額数千円から利用できるシンプルなものから、大規模なカスタマイズが必要で数百万円以上かかるものまで様々です。重要なのは費用そのものよりも、投資対効果です。そのツールを導入することで、どれくらいのコスト削減や売上向上が見込めるのかを試算し、自社の体力に合ったものを選ぶことが肝心です。

Q: 営業担当者から「監視されているようだ」と反発されませんか?

A: そのような懸念は当然生じ得ます。ここで重要なのは、ツールの導入目的を丁寧に説明することです。目的が「監視」ではなく、個々の営業担当者の負担を減らし、成果を最大化するための「支援」であることを明確に伝えましょう。成功事例を共有したり、ツール活用を人事評価にポジティブに反映させたりする仕組みを作ることも、反発を和らげる上で有効です。

Q: BtoBとBtoCで、セールステックの活用法は変わりますか?

A: 変わります。BtoB営業は、検討期間が長く、複数の決裁者が関与することが多いため、CRM/SFAによる顧客情報や商談プロセスの詳細な管理が特に重要になります。一方、BtoC営業は顧客数が膨大になるため、MAを活用して顧客をセグメント分けし、一人ひとりの興味関心に合わせたアプローチを自動化するといった活用法が効果的です。

筆者について

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