想定読者

  • 自分が進行役の会議が、いつも議論が発散してしまい、時間内に終わらないことに悩んでいる方
  • 会議の冒頭で「えー、本日はですね…」と、目的が曖昧なまま会議を始めてしまうファシリテーター
  • 会議の生産性を高め、質の高い意思決定を導くための、具体的なファシリテーション技術を学びたい人

結論:会議の成否は、開始「30秒」で決まっている

会議という船を率いるファシリテーターの、最も重要で、絶対に欠かすことのできない仕事とは何でしょうか。

それは、会議が始まる最初の30秒で、その船の「目的地(ゴール)」を、参加者全員に、明確に宣言することです。

もし、あなたがこれを怠っているのなら、残念ながら、ファシリテーターとして失格の烙印を押されても仕方がありません。なぜなら、ゴールが示されない会議は、羅針盤も海図もなく大海原に漕ぎ出すようなもの。必ずや議論は漂流し、貴重な時間を浪費し、誰一人として満足しない結果に終わるからです。

あなたの会議が「漂流」する、たった一つの理由

あなたの会議が、いつも時間内に終わらない。議論が発散して、結局何も決まらない。その根本的な原因は、会議室の環境でも、資料の出来でも、参加者のやる気でもありません。理由は、ただ一つ。その会議に、明確な「ゴール」が設定されていないからです。

「〇〇について議論する」「進捗を共有する」というのは、ゴールではありません。それは、単なる「議題」や「行動」です。ゴールのない会議は、目的地の知らされないミステリーツアーに参加させられるようなもの。参加者は、どこに向かって、何を話せば良いのか分からず、不安になります。その結果、思い思いの方向にボールを投げ始め、議論は迷走し、ただ時間だけが過ぎていくのです。ファシリテーターの最大の罪は、この状態で「出航」の号令をかけてしまうことなのです。

「今日のゴール」とは何か?良いゴールと悪いゴールの見分け方

では、「良いゴール」とは何でしょうか。それは、「会議が終わった時に、何が、どういう状態になっているか」という、具体的で、測定可能な「到達目標」のことです

悪いゴールの例:

  • 「〇〇の件について、意見交換する」
  • 「来期の戦略について、ブレストする」

良いゴールの例:

  • 「〇〇のA案・B案のどちらを採用するか、決定する
  • 「来期の戦略のアイデアを、10個リストアップする
  • 「〇〇プロジェクトの課題を全て洗い出し、それぞれの担当者を割り振る

お気づきでしょうか。良いゴールは、常に具体的な「成果物」や「決定事項」を指し示し、力強い「動詞」で終わります。この「ゴール設定」という行為そのものが、会議の議題を、漠然とした「お題目」から、達成すべき「ミッション」へと変えるのです。

ゴールを宣言し、会議を支配するファシリテーション術

明確なゴールを設定できたら、次はそのゴールを使って、会議という船を巧みに操縦する技術が必要です。

まず、会議の冒頭、挨拶もそこそこに、今日のゴールを力強く宣言します。「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。この会議は、30分後に『〇〇の担当者が決まっている』状態になることがゴールです」。この最初の30秒が、参加者全員の脳に、議論の目的地を刷り込みます。

次に、会議の最中は、議論が脱線したら、宣言したゴールに立ち返ることを徹底します。話が脇道に逸れそうになったら、ファシリテーターは勇気を持ってこう言うのです。「そのご意見も非常に重要ですが、本日のゴールである『担当者を決める』ことから少し離れているようです。その件は別途時間を設けるとして、一度、本筋に戻しませんか?」。宣言したゴールが、議論の脱線を防ぐ、絶対的な「羅針盤」となるのです。

そして、会議の終了5分前になったら、再度ゴールを確認し、クロージングに入ります。「さて、残り5分となりました。本日のゴールは『担当者を決める』ことでしたが、現状、Aさんは〇〇、Bさんは△△を担当する、ということで皆さんよろしいでしょうか?」と、具体的な合意形成を促し、会議を確実に着地させるのです。

ゴール設定は、組織を強くする「思考の訓練」

会議のゴール設定を徹底する文化は、単に会議の効率を上げるだけでなく、組織全体に、より本質的な成長をもたらします。

会議の主催者は、「この会議で、本当に達成したいことは何か?」を、事前に深く、真剣に考えるようになります。その結果、目的の曖昧な、そもそも開催する必要のない会議が、自然と淘汰されていきます。

参加者もまた、ゴールが明確なため、会議への貢献意欲が高まります。「今日のゴールに貢献するために、自分は何を準備し、どう発言すべきか」を、主体的に考えるようになるのです。

ゴール設定とは、単なる会議のテクニックではありません。それは、組織全体の「目的意識」と「成果へのコミットメント」を高める、極めて重要な知的トレーニングなのです。

よくある質問

Q: ゴールを設定しても、時間内に達成できないことが多いです。

A: それは、ゴール設定が壮大すぎるか、あるいは、会議の時間が短すぎるのかもしれません。その場合は、「本日は、A案とB案のメリット・デメリットを全て洗い出すこと」をゴールとし、「決定は、次回の会議で行う」というように、ゴールそのものを分解するアプローチが有効です。達成可能なゴールを設定することが、チームの達成感と自信に繋がります。

Q: 複数の議題があり、ゴールを一つに絞れません。

A: その会議は、そもそも目的が多すぎるのかもしれません。一つの会議では、一つの重要な意思決定(ゴール)に集中するのが理想です。もし、どうしても複数の議題を扱いたい場合は、「議題1のゴールは〇〇、議題2のゴールは△△」と、議題ごとにゴールを明確に設定し、それぞれに時間配分を行いましょう。

Q: 参加者から、設定したゴールに対して「それは違う」と異論が出た場合はどうすればいいですか?

A: 素晴らしいことです。それは、参加者が主体的に会議に参加している証拠です。会議の冒頭でゴールを宣言するのは、そのゴールが本当に正しいか、参加者全員の目線合わせをするためでもあります。もし異論が出れば、「では、この会議で達成すべき、より本質的なゴールは何だと思いますか?」と問いかけ、議論の最初に、全員が納得するゴールを再設定しましょう。

Q: ファシリテーターではなく、一参加者の立場でも、何かできることはありますか?

A: 絶大な貢献ができます。会議が始まる際に、もしファシリテーターがゴールを宣言しなかったら、勇気を出してこう質問してみてください。「恐れ入ります、確認なのですが、本日のこの会議のゴール、つまり、終わった時にどういう状態になっていれば成功と言えるのか、最初に皆ですり合わせしませんか?」。この一言が、漂流しかけた会議を救う、英雄的な一言になるかもしれません。

筆者について

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