想定読者

  • 会議やセミナーのメモを見返しても、内容が全く頭に入ってこない方
  • メモを取ることに必死で、話の内容を理解することに集中できない方
  • メモを、単なる記録から、新しいアイデアを生み出す「知的生産のツール」へと昇華させたい人

結論:メモとは「思考のプロセス」そのものである

あなたは、何のためにメモを取りますか? 多くの人が「忘れないように、記憶するため」と答えるかもしれません。

しかし、その意識こそが、あなたの成長を妨げ、メモを「死んだ情報」に変えてしまう最大の原因なのです。

真に価値のあるメモとは、後から見返すための「記録」ではありません。

それは、情報を右から左へ受け流すのではなく、自分の頭で考え、格闘し、新たな意味を見出すための「思考のプロセス」そのものなのです。

この記事では、あなたのメモを、単なる「記憶の外部ストレージ」から、思考を深め、アイデアを生み出す「最高の対話相手」に変えるための、具体的な技術を解説します。

なぜ、あなたのメモは「死んだ情報」になるのか?

会議やセミナーで、話された内容を一言一句、完璧に書き起こそうと必死になっていませんか? そして、後からその美しいノートを見返して、「よく頑張ったな」と満足してはいないでしょうか。残念ながら、その行為は、思考の放棄に他なりません。

裁判所の速記官のように、ただ聞こえてくる情報をそのまま書き写すだけの「受動的なメモ」は、脳の「理解」や「解釈」といった、最も重要なプロセスをバイパスしてしまいます。あなたの脳は、情報を「処理」するのではなく、ただ「通過」させているだけ。これでは、どんなに貴重な話を聞いても、記憶に定着するはずがありません。

その結果として生まれるのは、情報量は多いが、あなたにとっての「意味」や「価値」が全く見出せない、「死んだ情報」の山です。後から見返しても、話の文脈は失われ、なぜ自分がそこに線を引いたのかすら思い出せない。これでは、メモに費やした時間が、丸ごと無駄になってしまいます。

「思考を深めるメモ」3つの原則

では、どうすれば、メモを「思考のツール」に変えることができるのでしょうか。そのための、3つのシンプルな原則があります。

一つ目の原則は、聞いた言葉を、そのまま書かないことです。必ず、一度自分の頭で受け止め、その意味を解釈し、「自分の言葉」で要約・言い換えてから書き出すのです。「〇〇という課題に対して、A、B、Cという3つの解決策が提示された」と聞いたら、「課題〇〇→解決策はA,B,Cの3つ」のように、構造を捉え直して書く。この「翻訳」のプロセスこそが、深い理解と記憶の定着を促します。

二つ目の原則は、「事実」と「自分の思考」を、明確に分けて書くことです。話の内容(事実)と、それを聞いてあなたが感じたことや考えたこと(思考)が、同じペンでごちゃ混ぜに書かれていては、後から見返した時に混乱します。例えば、自分の思考は [ ] で囲む、あるいは色を変えるなど、明確なルールを設けましょう。「A案はコストが低い(事実)。[だが、本当に長期的な視点で見て、これが最善手だろうか? B案の拡張性も考慮すべきでは?](思考)」のように記述するのです。この「思考のメモ」こそが、あなただけの知的資産となります。

三つ目の原則は、常に「繋がり」を意識して書くことです。情報は、単体では役に立ちません。他の情報と結びついて、初めて「意味」を持ちます。メモを取りながら、「この話は、先週のAプロジェクトの件と同じ構造だな」「この考え方は、以前読んだ〇〇という本の内容と繋がるぞ」と感じたら、その繋がりを、矢印(→)などを使って、すかさずメモに書き込みましょう。この「コネクトする癖」が、あなたの思考を立体的にし、新しいアイデアの源泉となるのです。

実践編:会議・読書・セミナーでのメモ術

この原則を、具体的なシーンでどう活かすか見ていきましょう。

会議では、決定事項やタスクといった「事実」を正確に記録することはもちろん重要です。しかし、それ以上に、「なぜ、この決定に至ったのか?」「議論の分岐点はどこだったのか?」「自分は、この決定にどう貢献できるか?」といった、背景にある文脈や、自分自身の思考をメモすることが、次のアクションの質を高めます。

読書では、まさにアクティブ・リーディングの実践です。共感した部分だけでなく、「本当にそうだろうか?」という著者への健全な批判や、「このノウハウを、自分のチームで実践するなら、どうアレンジすべきか?」といった、具体的な応用方法を、本に直接書き込みながら読み進めましょう。

セミナーでは、講師のスライドを必死で書き写すのは、最も非効率な行為です。スライドは後で共有されることが多いと割り切り、それよりも、講師の話を聞いて、自分が「ハッとしたこと」や「これは重要だ」と感じたポイント、そして「明日から試せること」を、3つだけ抜き出す、というような目的意識でメモを取る方が、遥かに多くの学びを得られます。

よくある質問

Q: きれいなノートを作るのが苦手です。

A: 素晴らしいことです。思考を深めるメモは、必ずしも「きれい」である必要はありません。むしろ、矢印や囲み、殴り書きが散在する、雑然としたメモの方が、思考の格闘の跡が残っており、後から見返した時に、その時の興奮や気づきを鮮明に思い出させてくれます。

Q: デジタルとアナログ、どちらが良いですか?

A: それぞれにメリットがあります。デジタル(PCやタブレット)は、検索性や編集のしやすさに優れています。一方、アナログ(紙とペン)は、図や矢印を自由に書きやすく、記憶の定着に繋がりやすいという研究もあります。両方を試し、ご自身の思考スタイルに合った方を選ぶのが一番です。あるいは、一次メモは手書き、整理はデジタル、といったハイブリッドな使い方も有効です。

Q: メモを取るのに必死で、話が聞けなくなります。

A: それは、全てを記録しようとする「受動的なメモ」に陥っているサインです。勇気を出して、書く量を減らしてみてください。話の8割は聞き、思考することに集中し、残りの2割の時間で、最も重要だと感じたエッセンスと、自分の思考だけを書き留める。このバランスを意識するだけで、メモの質は劇的に変わります。

Q: 取ったメモは、後でどう活用すればいいですか?

A: メモは、取って終わりでは意味がありません。週に一度、5分でも良いので、その週に取ったメモを見返す時間を設けましょう。そして、その中から生まれた新しいアイデアや、やるべきタスクを、別のノートやタスク管理ツールに転記するのです。この「見直しと整理」のプロセスが、メモを知的生産のサイクルへと組み込む、重要なステップとなります。

筆者について

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