想定読者

  • 部下の「で、結局、何が言いたいの?」という報告に、毎日うんざりしている管理職やリーダー
  • 分かりやすく、説得力のある報告・説明スキルを身につけたい、すべての中堅・若手社員
  • チーム全体のコミュニケーションコストを下げ、組織の生産性を向上させたいと考えている方

結論:「結論から話せない」のは、能力の問題ではなく「型」を知らないだけ

あなたの部下が、結論から話せないのは、決して彼らの能力が低いからでも、やる気がないからでもありません。

彼らはただ、分かりやすく、簡潔に話すための「型」を知らないだけなのです。

そして、その「型」を教えるのは、上司であるあなたの重要な責任です。今回紹介するPREP(プレップ)法は、そのための最もシンプルで、最も強力なフレームワーク。

この「魔法の型」を組織の共通言語にすることこそが、部下の思考力を鍛え、組織全体の生産性を劇的に向上させる、最高の人材育成術なのです。

なぜ、話が長くて要領を得ないのか?

そもそも、なぜ人は結論から話せないのでしょうか。その最大の理由は、話す前に、自分の頭の中が整理できていないからです。多くの人は、自分が考えた順番のまま、時系列に沿って、だらだらと話し始めてしまいます。それは、聞き手にとっては、結末の分からないミステリー小説を、延々と聞かされているようなもの。貴重な時間を奪われるだけでなく、結局何が言いたいのか分からず、双方にとって不幸な結果を招きます。

もう一つの理由は、「相手が何を知りたいか」という視点の欠如です。忙しい上司が知りたいのは、詳細な経緯や個人の感想ではありません。まずは「結論」と「その理由」、そして「どうして欲しいのか」です。この聞き手への配慮の欠如が、コミュニケーションの齟齬を生むのです。

PREP法とは?あらゆる報告を「30秒」で終わらせる魔法のフレームワーク

PREP法は、この問題を解決するための、驚くほどシンプルな「話の型」です。以下の4つの要素の頭文字を取って、PREP(プレップ)と呼ばれています。

  • P = Point(結論) まず、話の「結論」や「要点」を、単刀直入に述べます。「〇〇の件、A案で進めるべきだと考えます」
  • R = Reason(理由) 次に、その結論に至った「理由」を説明します。「なぜなら、コストと納期の両面で、B案よりも優れているからです」
  • E = Example(具体例) そして、その理由を裏付ける「具体例」や「データ」を提示します。「具体的には、A案はB案よりコストが10%低く、納期も1週間早めることが可能です」
  • P = Point(結論の再確認) 最後に、もう一度「結論」を繰り返して、話を締めくくります。「以上の理由から、A案での推進を推奨します」

いかがでしょうか。この「型」に当てはめて考えるだけで、誰でも、驚くほど分かりやすく、説得力のある話ができるようになります。報告を受ける側も、話の全体像が瞬時に掴めるため、的確なフィードバックや意思決定が可能になるのです。

部下にPREP法を「徹底」させるための指導術

この強力なフレームワークも、ただ教えるだけでは組織に浸透しません。部下が実践できるようになるための、上司の「指導術」が不可欠です。

まず、PREP法という「共通言語」をチームに導入することが第一歩です。ミーティングの場などで、PREP法の構造とメリットをチーム全員に明確に伝えましょう。「今後の報告は、基本的にPREPでお願いします」と宣言するのです。その上で、PREP法の図解を印刷して壁に貼るなど、誰もが常に意識できる環境を作るのも非常に有効です。

次に、何よりも重要なのが、上司であるあなた自身が、日頃からPREP法を実践して見せることです。部下への指示や会議での発言を、意識してPREPの型で行う。部下は、あなたという最も身近な「お手本」の話し方を真似ることで、自然とその思考法を学んでいきます。

そして、部下が報告に来た際には、PREP法を意識した「質問」で、思考を導いてあげるのです。だらだらと話し始めた部下に対して、頭ごなしに「結論から話せ!」と叱っては、相手が萎縮するだけです。そうではなく、「なるほど。よく分かったよ。で、君の『結論』としては、どうなのかな?」「その結論に至った、一番の『理由』は何?」「何かそれを裏付ける『具体的なデータ』はある?」といった形で、PREPの思考回路を辿る手助けをしてあげましょう。この「優しい壁打ち」が、部下の頭の中を整理させ、PREPで考えるクセを育てていくのです。

PREP法がもたらす、個人と組織の成長

PREP法は、単なる「分かりやすい話し方」のテクニックではありません。その実践は、個人と組織に、より本質的な成長をもたらします。

PREPで話すためには、必然的に、話す前に「この件の結論は何か」「その理由は何か」「根拠となる事実は何か」を自分自身で考える必要が出てきます。このプロセスそのものが、物事を構造的に捉え、本質を見抜くための、最高のロジカルシンキング・トレーニングになるのです。

そして、チーム全員がPREPという共通の思考のOSを持つようになれば、報告や会議の時間は劇的に短縮され、コミュニケーションの齟齬も格段に減ります。組織全体の生産性が向上し、より質の高い意思決定が可能になる。PREP法の導入は、組織の知的生産性を高める、最も費用対効果の高い投資と言えるでしょう。

よくある質問

Q: どんな場面でも、PREP法で話すべきですか?

A: PREP法は、ビジネスにおける報告・連絡・相談のほとんどの場面で有効ですが、万能ではありません。例えば、アイデアを自由に広げるブレインストーミングの場や、相手の感情に寄り添う共感が目的の雑談などでは、必ずしもPREPにこだわる必要はありません。目的に応じて、最適な「型」を使い分ける意識が重要です。

Q: 理由や具体例が思いつかない場合は、どうすればいいですか?

A: それは、まだ結論を出すには情報が不足している、という重要なサインです。「結論を出すために、〇〇という情報が不足しています。まずは、その調査から始めさせてください」ということ自体が、その時点での正しい「報告」になります。PREP法は、思考の浅さをあぶり出すリトマス試験紙の役割も果たしてくれるのです。

Q: PREP法で話すと、少し冷たい印象を与えませんか?

A: 確かに、PREP法は論理的で直線的な話し方です。もし、相手への配慮や共感を示したい場合は、PREPの前に「〇〇の件、お疲れ様です。大変でしたね」といったクッション言葉を置いたり、Example(具体例)の部分で、客観的なデータだけでなく、関係者の感情やストーリーに触れたりすることで、話の印象を和らげることができます。

Q: PREP法以外に、分かりやすい説明のフレームワークはありますか?

A: はい、いくつかあります。例えば、ストーリーテリングでよく使われる「SDS法(Summary, Details, Summary)」や、相手の行動を促すのに有効な「DESC法(Describe, Express, Suggest, Consequence)」などがあります。まずは基本となるPREP法をマスターし、目的に応じて他のフレームワークを学んでいくのが良いでしょう。

筆者について

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