想定読者
- 不採算事業の撤退判断に悩んでいる経営者
- ここまでやったからやめられないと感じている方
- 合理的な意思決定を身につけたいリーダー
結論
コンコルドの誤謬とは、過去に使ったお金や時間を惜しむあまり、やめるべきものを続けてしまう心理です。すでに回収できない費用に引っ張られ、未来の判断まで狂わせます。ビジネスでは、この心理が赤字事業の延命や判断の遅れにつながります。
重要なのは、過去にいくら使ったかではありません。これから続ける価値があるかです。損切りは失敗の証明ではなく、資源を守る経営判断です。コンコルドの誤謬を理解すると、撤退の判断が感情ではなく戦略になります。
コンコルドの誤謬とは?
コンコルドの誤謬は、サンクコスト効果とも呼ばれます。サンクコストとは、すでに使ってしまい、もう戻らない費用のことです。お金だけではありません。時間、労力、人員、感情も含まれます。
この言葉は、超音速旅客機コンコルドの開発から広まりました。採算が取れないと分かっていたのに、すでに巨額を投じていたため、計画を止められなかったことが由来です。合理的に考えれば撤退すべきでも、過去の投資が判断を鈍らせました。
つまり、問題は損失そのものではありません。回収不能な過去の投資を理由に、未来の損失まで増やしてしまうことが問題です。
ビジネスで起きる典型例
コンコルドの誤謬は、大きな国家プロジェクトだけの話ではありません。会社でも日常的に起きます。むしろ、責任感がある人ほど陥りやすい罠です。
たとえば、新規事業に数年投資した結果、売上が伸びず赤字が続いている。それでも、ここまでやったのだから続けようとなる。この判断は未来ではなく過去を見ています。
他にも、
- 売れない商品を改良し続ける
- 成果の出ない広告施策を止められない
- 合わない採用手法に予算を入れ続ける
- 将来性のない取引先との関係を切れない
といった例があります。どれも、過去の投資が判断を縛っています。
損切りできない3つの心理
コンコルドの誤謬が厄介なのは、数字の問題ではなく心理の問題だからです。頭では分かっていても、感情が邪魔をします。特に大きいのは、損失回避、一貫性、愛着の3つです。
損失を確定したくない
人は利益を得る喜びより、損失を確定する痛みを強く感じます。撤退を決めると、今までの投資が失敗として確定します。この痛みを避けるために、続ける判断をしてしまいます。
しかし、続けることで損失が増えるなら、その判断はさらに高くつきます。損失を認めないことが、次の損失を呼びます。
自分の判断を否定したくない
一度進めた方針を途中でやめると、自分の判断が間違っていたと認めることになります。特に責任者ほど、この心理が強く働きます。自分の決定を守ろうとして、撤退が遅れます。
けれども、経営で評価されるのは、最初の判断を守ることではありません。状況が変わった時に、判断を更新できることです。
愛着が判断を曇らせる
自分が立ち上げた事業、自分が育てた商品、自分が選んだ施策。そこには愛着が生まれます。この感情があると、客観的な数字より思い入れが勝ちます。
愛着そのものは悪くありません。ただし、撤退判断では危険です。愛着があるほど、第三者の視点が必要になります。
損切りを判断する3つの方法
コンコルドの誤謬を避けるには、感情に頼らない仕組みが必要です。特に有効なのは、ゼロベース思考、撤退基準、第三者視点の3つです。
ゼロから考え直す
最も有効なのは、この事業に今から新しく投資するかと自問することです。過去の投資をいったん脇に置き、今日ゼロから判断するとしたら続けるかを考えます。
この問いに迷いなくイエスと言えないなら、続ける理由は過去に引っ張られている可能性が高いです。
撤退基準を先に決める
感情が入る前に、撤退条件を決めておく方法も有効です。売上、利益率、継続率、獲得単価。こうした数字で基準を決めておくと、判断がぶれません。
例としては、
- 3か月連続で赤字なら見直す
- 獲得単価が上限を超えたら停止する
- 目標件数に届かなければ撤退する
といった基準があります。先に決めることで、後から感情でねじ曲げにくくなります。
第三者に判断を委ねる
当事者だけで判断すると、どうしても感情が入ります。だから、社内外の第三者に見てもらうことが重要です。関わりが薄い人ほど、数字を冷静に見られます。
第三者の役割は、否定ではありません。自分では見えなくなった前提を問い直すことです。撤退判断ほど、外の目が効きます。
よくある質問
Q: 粘り強さとコンコルドの誤謬は何が違いますか
A: 違いは判断基準です。粘り強さは未来の可能性を見て続けます。コンコルドの誤謬は過去の投資を惜しんで続けます。未来を見ているか、過去に縛られているかが違いです。
Q: サンクコストを無視するのは冷たくありませんか
A: 冷たさではなく合理性です。回収不能な費用を基準にすると、さらに損失が増えます。未来の資源を守るために必要な判断です。
Q: 小さな判断でも起こりますか
A: 起こります。面白くない映画を最後まで見る、使わないサブスクを解約しない、といった日常にもあります。小さな判断ほど練習になります。
Q: 失敗を認めるのが怖い時はどうすればいいですか
A: 撤退を失敗の終わりではなく、次の投資の始まりとして捉えることです。損切りで守れた資源が、次の成功を作ります。
筆者について
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