想定読者
- 資料の細かいデザインや言い回しにこだわりすぎて、いつも締め切りに追われている方
- 「完璧な準備ができるまで始められない」と、行動を先延ばしにしがちな方
- スピードと量をこなしながら、最終的により高い質の成果を出したいと考えているビジネスパーソン
結論:「完璧」を目指すな。「完了」させろ。
ビジネスの世界では、多くの場合、「100点の遅い成果」よりも「60点の速い成果」 の方が、遥かに価値があります。あなたが「完璧な仕事」にこだわっている間に、ライバルは「そこそこの仕事」で顧客のフィードバックを得て、改善を繰り返し、遥か先へと進んでしまいます。あなたが抱えているその完璧主義は、質の高さを担保する美徳ではありません。それは、あなたの行動にブレーキをかける「先延ばし」であり、失敗を恐れる「恐怖」の裏返しなのです。真のプロフェッショナルは、完璧を目指すのではなく、まず「完了」させることで価値を生み出し、そこから改善を始めるのです。
あなたを蝕む「完璧主義」という名の病
学校教育では、100点満点を目指すことが美徳とされます。しかし、正解のない、スピードが求められるビジネスの世界において、その価値観は、時として生産性を著しく低下させる「病」と化します。
完璧主義は、まず「永遠に終わらない仕事」を生み出します。「完璧な状態」という、どこにも存在しないゴールを目指すあまり、どこから手をつけていいか分からなくなり、行動へのハードルが無限に上がってしまうのです。これが、先延ばしの最大の原因です。
次に、完璧主義は、深刻な「時間配分の誤り」 を引き起こします。あなたは、資料全体の価値にほとんど影響しない、些細なデザインや、言葉の言い回しに、膨大な時間を浪費していませんか? 木を見て森を見ず、本質的でない部分にこだわり続けることで、より重要な仕事に使うべき時間を失っているのです。
そして最も致命的なのが、「成長機会の損失」 です。完璧なものができるまで、決して他人の目に触れさせようとしない。その姿勢が、早い段階で得られるはずだった、上司や同僚からの貴重なフィードバックの機会を奪います。結果として、長い時間をかけたにもかかわらず、独りよがりで、的外れな成果物ができあがるという、最悪の事態を招くのです。
なぜ「60点の完成」を目指すべきなのか?
では、私たちは何を目指すべきなのでしょうか。その答えが「60点の完成」です。これは、決して「手抜きをしろ」ということではありません。「60点」とは、「核心は押さえているが、細部はまだ磨かれていない状態」と定義できます。
IT業界には、「リーンスタートアップ」や「アジャイル開発」という考え方があります。これは、完璧な製品を何年もかけて作るのではなく、まずは顧客の課題を解決できる最小限の機能を持った製品(MVP: Minimum Viable Product)を、驚くほどのスピードで市場に出し、実際の顧客からのフィードバックを元に、改善を繰り返していくというアプローチです。
この思考法は、私たちの日常の仕事にも、そのまま応用できます。例えば、企画書を作成する場合。一人で100点を目指してうんうん唸るのではなく、まずは「60点の骨子」を最速で作り、上司や同僚に「たたき台なのですが、方向性についてご意見いただけますか?」と見せてしまうのです。早い段階で軌道修正することで、無駄な手戻りを防ぎ、一人で抱え込むよりも、遥かに早く、そして質の高い成果物にたどり着くことができます。
「完璧主義」から「完了主義」へ。思考を切り替える3つのステップ
頭では分かっていても、染み付いた完璧主義から抜け出すのは簡単ではありません。そこで、思考と行動を「完了主義」へと切り替えるための、具体的な3つのステップを紹介します。
まず、仕事の「完成の定義」を、着手する前に決めることです。「どこまでやれば、この仕事は『完了』とするか?」というゴールラインを、明確に設定しましょう。例えば、「この資料の目的は、A案の承認を得ること。だから、その判断に必要なデータと論理が揃っていれば、デザインは二の次でOK」といった具合です。ゴールが明確になれば、無駄な作業に時間を費やすことはなくなります。
次に、意図的に「締め切り」という制約を設けることです。パーキンソンの法則を逆手に取り、自分で自分に、少し厳しいくらいの締め切りを設定するのです。「このドラフトは、今日の午後3時までに、何があっても書き上げる」と決めてしまえば、些細なディテールにこだわる余裕はなくなります。この強制力が、あなたを本質的な作業へと集中させてくれます。
そして最も重要なのが、「ドラフト(未完成品)」として、早い段階で他者に見せる勇気を持つことです。「〇〇のドラフトです。まだ60点の出来ですが、方向性についてご意見いただけますでしょうか?」と、未完成であることを正直に伝え、周囲を巻き込んでしまいましょう。あなたが一人で悩んでいる問題は、他の誰かにとっては、一瞬で解決できることかもしれません。他者の視点を取り入れることこそ、完璧への一番の近道なのです。
「完了」を積み重ねた先に、本当の「完璧」がある
Facebook社(現Meta社)には、「Done is better than perfect.(完璧より、まず終わらせろ)」という有名な標語があります。これは、まさに完了主義の本質を表す言葉です。
60点の完成を100回繰り返した人は、その過程で、100回分の経験と学びを得ています。一方、100点の完成を1回目指して、結局何も生み出せなかった人の経験値はゼロです。どちらが、最終的により質の高い仕事ができるようになるかは、火を見るより明らかでしょう。
量をこなす中でこそ、質を高めるための勘所が養われます。数多くの「完了」を積み重ね、改善を繰り返してきたその先にこそ、あなたが本当に目指すべき「完璧」に近いものが、姿を現すのです。
よくある質問
Q: 60点で提出して、周りから「仕事が雑だ」と思われないか心配です。
A: その懸念はもっともです。だからこそ、「これはドラフト(たたき台)なのですが」「まずは骨子レベルですが」といった、前置きが重要になります。「これはあくまで60点の未完成品です」という共通認識を相手と持つことで、無用な誤解を避けることができます。
Q: 医師やパイロットなど、完璧さが求められる仕事でも、この考え方は通用しますか?
A: もちろん、人命に関わるような、ミスが許されない仕事においては、最終的なアウトプットは100%(あるいはそれ以上)でなければなりません。しかし、そこに至るまでの「訓練」や「準備」のプロセスにおいては、この考え方は有効です。例えば、フライトシミュレーターでの訓練では、数多くの「60点の操縦(失敗)」を経験し、そこから学ぶことで、本番での「完璧な操縦」が可能になるのです。
Q: 自分の「完璧主義」な性格を変えることはできますか?
A: 性格を無理に変える必要はありません。完璧主義の「良い面」、例えば、細部へのこだわりや質の高さを追求する姿勢は、あなたの強みです。重要なのは、その強みを「どこで発揮するか」を見極めることです。仕事の最終盤や、本当に重要な局面でその力を発揮するために、序盤から中盤は、意識的に「完了主義」でスピードを重視する、という使い分けを意識してみてください。
Q: 「完了」の定義は、誰が決めるべきですか?
A: その仕事の「依頼者」や「決裁者」と、事前にすり合わせるのが最も理想的です。「この仕事で、一番期待していることは何ですか?」「最低限、どこまでできていればOKですか?」と、着手する前に期待値を確認しておくことで、独りよがりな完璧主義に陥るのを防ぐことができます。
筆者について
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