想定読者

  • 顧客ロイヤルティを高めリピーターを増やしたい経営者
  • ブランドの認知度と好感度を向上させたいマーケター
  • 顧客に「忘れられない」体験を提供したいサービス開発者

結論:人は「物語」として体験したことを最も鮮明に記憶する

あなたは数年前の旅行の出来事をまるで昨日のことのように鮮明に思い出せるのに、昨日食べた夕食のメニューが思い出せないことはありませんか?

あるいはある商品の機能やスペックは忘れてしまっても、その商品を使った時の「感動」や「驚き」の瞬間はいつまでも心に残っているということはないでしょうか?

これらの「いつどこで何を体験したか」という時間や場所、感情を伴う個人的な出来事の記憶を「エピソード記憶(Episodic Memory)」と呼びます。これは単なる知識や事実の記憶(意味記憶)とは異なり、感情や文脈と強く結びついているため非常に鮮明で忘れにくいという特徴があります。

ビジネスにおいてこのエピソード記憶を理解し活用することは顧客の心に深く刻み込まれるブランド体験を創出し、長期的な顧客ロイヤルティを築き強力な口コミを生み出す上で極めて重要です。顧客に「忘れられない体験」を提供することであなたのブランドは単なる商品やサービスの提供者を超えた特別な存在となるのです。

なぜエピソード記憶がビジネスで重要なのか

エピソード記憶がこれほどまでに強力な影響力を持つのは人間の根源的な心理に深く根ざしているからです。

  1. 感情との強い結びつき エピソード記憶は体験時の感情と強く結びついています。ポジティブな感情を伴う体験は顧客の心に深く刻まれブランドへの愛着や好意的な感情を育みます。これにより顧客は単なる機能や価格を超えてブランドに感情的な価値を見出すようになります。
  1. ブランド想起率の向上 鮮明なエピソード記憶は、顧客が特定のニーズや状況に直面した際にあなたのブランドを真っ先に思い出すきっかけとなります。例えば「困った時にあの店員さんが親身になって助けてくれた」という記憶は、次に同じような問題が起きた時にそのブランドを迷わず選ぶ理由となります。
  1. 強力な口コミの源泉 人は感情を揺さぶられた体験や物語性のある出来事を他者に語りたくなります。エピソード記憶は顧客があなたのブランドについて具体的なエピソードを交えて熱く語るための「ネタ」となります。これは広告では得られない信頼性の高い口コミを生み出します。

ビジネスにおけるエピソード記憶の活用法

顧客の心に深く刻まれる「忘れられない体験」を戦略的に創出することでブランドを強化し顧客ロイヤルティを最大化できます。

  1. 「物語」をデザインする 顧客があなたの製品やサービスを通じてどのような「物語」を体験できるのかを具体的にデザインしましょう。例えば商品の購入から利用、そしてその後の生活の変化までを一連のストーリーとして演出します。顧客がその物語の「主人公」になれるような体験を提供することが重要です。
  1. 五感を刺激する演出 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感を刺激する要素を顧客体験に組み込みましょう。例えば店舗のBGMや香り、商品の手触り、パッケージの開梱体験など細部にまでこだわり顧客の記憶に残りやすい「感覚的なフック」を作り出します。
  1. パーソナルな「おもてなし」 顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせたパーソナルな対応は顧客に「特別扱いされている」という感情を与え忘れられない体験となります。手書きのメッセージ、誕生日のお祝い、過去の購買履歴に基づいた提案など顧客が「自分のことを理解してくれている」と感じるような心遣いが重要です。
  1. 「ピーク・エンドの法則」を意識する 人は体験全体の記憶をその体験の「ピーク(最も感情が動いた瞬間)」と「エンド(最後の瞬間)」で判断する傾向があります。顧客体験の中で最も感動的な瞬間を意図的に作り出し最後の印象をポジティブに締めくくることで全体のエピソード記憶をより良いものにすることができます。
  1. 「共創」の機会を提供する 顧客を製品開発やサービス改善のプロセスに巻き込むことで、顧客は単なる消費者ではなくブランドの「共創者」としての特別な体験を得られます。自分の意見が製品に反映されたという経験は顧客にとって忘れられないエピソード記憶となります。

エピソード記憶の注意点と限界

エピソード記憶は強力ですがその活用には注意点と限界があります。

  • ネガティブなエピソード記憶はより強く残る ポジティブな体験と同様にネガティブな体験も感情と強く結びつき記憶に深く刻まれます。特に顧客の期待を裏切るような不快な体験はブランドへの不信感や悪い口コミとして長く残る可能性があります。問題発生時の迅速かつ誠実な対応が極めて重要です。
  • 「やらせ」や「不誠実」は見抜かれる 顧客の感情を操作しようとする不誠実な演出はかえって顧客の不信感を招きます。顧客は本物と偽物を見抜く力を持っています。常に正直で誠実な心遣いを心がけましょう。
  • すべての体験を特別にする必要はない すべての顧客接点で大規模なサプライズや特別な演出を行うことはリソースの観点から非現実的です。顧客にとって特に重要となるタッチポイントやブランドの核となる体験に焦点を当て戦略的にエピソード記憶をデザインすることが重要です。

よくある質問

Q: エピソード記憶と、意味記憶は、どう違うのですか?

A: エピソード記憶は「いつどこで何を体験したか」という個人的な出来事の記憶で感情や文脈と強く結びついています。例えば「初めて〇〇のレストランに行った日友人と食べたパスタが美味しかった」といった記憶です。一方意味記憶は知識や事実の記憶で感情や文脈とは直接結びつきません。例えば「パスタはイタリア料理である」といった記憶です。ビジネスではエピソード記憶を刺激することが顧客の感情を動かす上で重要です。

Q: 顧客に「物語」を語るのが苦手です。どうすれば良いですか?

A: まずはあなたのブランドが顧客にどのような「変化」をもたらしたいのか、どのような「課題」を解決したいのかを明確にしましょう。そしてその変化や課題解決の過程で顧客がどのような感情を抱くのかを想像してみてください。顧客の成功事例を具体的なエピソードとして語ることも有効な「物語」の作り方です。

Q: BtoBビジネスでも、エピソード記憶は有効ですか?

A: はい非常に有効です。BtoBビジネスでは製品やサービスの機能だけでなく導入時の苦労、担当者との協力、導入後の成功体験など感情を伴うエピソードが顧客の記憶に強く残ります。特に高額なシステム導入や長期的なパートナーシップにおいては担当者間の人間関係やプロジェクトの成功体験が次の契約に繋がる重要な要素となります。

Q: エピソード記憶を、ネガティブな方向に利用されることはありますか?

A: はい残念ながらあります。例えば不適切な顧客対応や製品の欠陥など顧客に不快な感情を抱かせた体験はネガティブなエピソード記憶として強く残ります。これはブランドイメージを著しく損ない悪い口コミとして拡散される可能性があります。ポジティブなエピソード記憶を創出する努力と同様にネガティブなエピソード記憶を防ぐための細心の注意と迅速な対応が不可欠です。

筆者について

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