想定読者

  • 自分は言葉よりも、図や映像で考えるタイプだと感じている方
  • 複雑な事業の全体像を、直感的に把握したい経営者やリーダー
  • チームの多様な思考スタイルを理解し、イノベーションを生み出したい方

結論:ビジネスは「森」と「木」。ビジュアルシンカーは、森全体を瞬時に見渡す鷹の目を持つ

ビジネスにおける思考には、大きく分けて二つの種類があります。一本一本の「木」を、詳細に、論理的に分析する思考。そして、上空から「森」全体を、直感的に、俯瞰して捉える思考です。

従来のビジネス教育や企業文化は、報告書や議事録に代表されるような、言語的で、逐次的な、「木」を分析する思考を重視してきました。しかし、市場が複雑化し、変化のスピードが激しくなる現代において、本当に重要なのは、個々の木々がどのように繋がり、全体としてどのような「森」を形成しているのかを瞬時に見抜く能力です。

ビジュアルシンカー(映像思考者)とは、まさにこの「森」を捉えることに、天賦の才を持つ人々です。彼らは、頭の中で言葉を組み立てるのではなく、映像やパターン、関係性を、まるで映画や設計図のように見て思考します。

この、複雑な物事を直感的に把握し、シンプルな図像として伝達する能力は、もはや特殊な才能ではありません。変化の時代を生き抜く、すべてのリーダーにとって不可欠な、極めて重要な経営スキルなのです。

あなたの脳内は「議事録」タイプ?それとも「映画」タイプ?

まず、ご自身がどちらの思考タイプに近いか、考えてみてください。どちらが優れている、という話ではありません。それぞれに、得意な役割があるのです。

  • 言語思考(Verbal Thinker) 頭の中で、言葉や文章が流れる「内なる対話」によって思考します。情報を一つ一つ、順番に処理していくのが得意で、まるで本を読むように世界を理解します。論理的な議論や、詳細な分析、緻密な文章の作成といった分野で、その能力を最大限に発揮します。
  • 映像思考(Visual Thinker) 頭の中に、具体的なイメージや、図、パターン、空間的な関係性が広がっています。情報を全体的、かつ、同時に処理するのが得意で、まるで映画を観たり、設計図を眺めたりするように世界を理解します。物事の全体像を掴んだり、複雑なシステムの関係性を理解したり、言語化される前の、微細なパターンを察知することに長けています。

問題は、多くのビジネスの現場が、報告書、メール、議事録といった、「言語思考」を前提としたコミュニケーションで成り立っていることです。そのため、ビジュアルシンカーは、その才能を十分に発揮できなかったり、「話が飛びやすい」「細かい文字を読むのが苦手」といった、あらぬ誤解を受けたりすることがあるのです。

ビジュアルシンカーが、経営で発揮する3つの「スーパーパワー」

しかし、その思考スタイルは、一度ビジネスの文脈にはまれば、他の誰にも真似できない、強力な武器となります。

  1. 複雑性の圧縮(Complexity Compression) 多くの人が、複雑な問題に直面すると、言葉の森に迷い込み、議論が発散してしまいます。ビジュアルシンカーは、その複雑な問題の構造を、脳内で瞬時に「図解」します。そして、ホワイトボードに、数個の箱と矢印を描くだけで、「この問題の本質は、ここと、ここの関係性の問題ですよね?」と、議論の中心を指し示すことができるのです。この、複雑な物事を、誰もが理解できるシンプルな構造に「圧縮」する能力は、チームの意思決定のスピードと質を、劇的に向上させます。
  1. パターン認識と未来予測(Pattern Recognition & Future Forecasting) 映像やパターンで思考するため、一見、無関係に見える事象同士を結びつけ、そこに潜む共通の「パターン」を見つけ出すのが得意です。市場のデータ、顧客の行動、技術の進化といった、バラバラの情報を、一つの大きな絵として捉え、「次は、こうなるのではないか」という、未来の姿を直感的に描き出すことができます。それは、論理的な演繹というより、雲の形から動物を見出すような、高度なパターン認識能力なのです。
  1. ビジョンとアイデアの伝達力(Vision & Idea Communication) 50ページに及ぶ、文字だらけの事業計画書は、人の心を動かすことはできません。ビジュアルシンカーは、その計画書の核心を、一枚のナプキンの裏に描いた、力強いコンセプト図で表現できてしまいます。視覚的な情報は、言語的な情報よりも、速く、感情的に、そして、記憶に残りやすい形で、相手に伝わります。チームの士気を高め、事業の全体像を共有する上で、これほど強力なツールはありません。

よくある質問

Q: 文章を読んだり、書いたりするのが苦手です。経営者に向いていないのでしょうか?

A: 全くそんなことはありません。多くの成功した起業家が、長い文章が苦手なビジュアルシンカーであったと言われています。重要なのは、苦手なことを無理に克服しようとするのではなく、自分をサポートしてくれる仕組みを作ることです。詳細なレポート作成や、緻密な契約書の確認が得意な、信頼できる言語思考のパートナーを見つけ、あなたは、あなたの得意な「ビジョンを描き、全体像を掴む」という仕事に集中すれば良いのです。

Q: 自分のビジュアルなアイデアを、どうすれば言語思考の人にうまく伝えられますか?

A: まずは「絵」を見せることです。あなたが頭の中に描いている図やイメージを、先にホワイトボードや紙に描き出してしまうのです。そして、その「絵」を指差しながら、「この箱は〇〇を意味していて、この矢印は、こういう力の流れを表しています」と、一つ一つ、通訳するように説明していくのです。「映画」を「字幕付き」で見せるようなイメージです。

Q: チームにもっとビジュアルに考えてもらうには、どうすれば良いですか?

A: 会議室の文化から変えてみましょう。会議は、必ずホワイトボードの前で行う。ブレインストーミングは、箇条書きではなく、マインドマップで行う。メンバーに、「あなたのアイデアを、言葉ではなく、絵で説明してみて」と促してみる。ビジュアルなツールをデフォルトにすることで、誰もが思考のモードを切り替えやすくなります。

Q: ビジュアルシンカーは、細かい作業や日々の管理業務には向いていないのですか?

A: 挑戦的な分野であることは、確かです。ビジュアルシンカーの強みは、物事の「設計」や「構造化」といった、創造的な初期段階で最も発揮されます。一度仕組みが出来上がった後の、ルーティン的な維持管理や、細かな事務作業には、退屈を感じやすい傾向があります。だからこそ、より詳細志向で、プロセス管理が得意なタイプの人間と、補完的なチームを組むことが、極めて有効なのです。

筆者について

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