想定読者

  • ミスやトラブルが発生した際に、どう謝罪すればいいか分からず、対応が後手後手になってしまうスモールビジネスオーナー
  • お客様からのクレームに対して、誠意が伝わらず、かえって事態を悪化させてしまった経験がある方
  • 謝罪を「負け」と捉えず、未来の信頼関係を再構築するための、建設的なコミュニケーション術を学びたい経営者

結論:優れた謝罪とは、「許しを請う」ことではなく「信頼回復への意思表示」である

結論から申し上げます。ビジネスにおける謝罪の目的は、その場で相手の許しを得ることではありません。その真の目的は、「問題から逃げず、誠実に向き合い、今後の信頼関係を再構築する意思がある」という、あなたの毅然とした姿勢を示すことです。

「すみません」と繰り返すだけの謝罪は、思考停止の表れです。本当の謝罪は、具体的な行動とセットになって初めて意味を持ちます。

この記事では、数々の企業の危機管理に携わってきた謝罪のプロたちが実践する、単なる謝罪で終わらない、未来に繋がる「正しい謝り方」の全手順を解説していきます。

第1章: なぜ、あなたの謝罪は“火に油を注ぐ”のか?

良かれと思って謝罪したはずが、なぜか相手の怒りを増幅させてしまう。それは、多くの人が無意識にやってしまう、典型的な「NGな謝り方」が原因です。

NG行動1:「でも」「しかし」で、言い訳をする

「申し訳ございません。でも、今回は〇〇という特殊な事情がありまして…」
謝罪の言葉の直後に、逆接の接続詞を使って自社の事情を説明するのは、最悪の対応です。相手からすれば、「謝ってはいるが、本当は自分は悪くないと言いたいんだな」と、言い訳をしているようにしか聞こえません。

どんなに正当な理由があったとしても、まずは相手が被った不利益と、不快な感情に対して、100%の誠意で謝罪する。言い訳や説明は、その後です。

NG行動2:責任の所在を曖昧にする

「このような事態となり、遺憾に思います」「担当者の連携ミスで、混乱が生じたようです」。
このように、誰が、何に対して責任を取るのかを曖昧にする、他人事のような表現は、相手の不信感を煽るだけです。

特に、経営者が謝罪の場に出る場合は、「今回の件は、すべて監督不行き届きである私の責任です」と、明確に責任の所在を自分に置くことが、信頼回復の第一歩となります。

NG行動3:謝罪の“スピード”が遅すぎる

問題が発生してから、社内での原因究明や対策会議に時間をかけ、お客様への第一報が遅れてしまう。これは、誠実さに欠ける対応と見なされます。

お客様が最も不安に感じているのは、「この会社は、この問題をちゃんと認識して、向き合ってくれているのか?」という点です。完璧な原因究明ができていなくても、まずは問題が発生したという事実を真摯に受け止め、取り急ぎお詫びするという、スピード感のある初期対応が、その後の展開を大きく左右します。

第2章: 信頼を回復する「正しい謝罪」の5ステップ

では、具体的にどのような手順で、どのような言葉を使って謝罪すれば、相手の信頼を回復できるのでしょうか。ここでは、謝罪のプロが実践する5つのステップを解説します。

ステップ1:まず、何よりも先に「謝罪」する

言い訳や状況説明から入ってはいけません。第一声は、必ず明確な謝罪の言葉であるべきです。

「この度は、私どもの不手際により、〇〇様にご迷惑をおかけしましたこと、誠に申し訳ございませんでした。」

この時、何に対して謝っているのか(=ご迷惑をおかけしたこと)を具体的に述べることが重要です。

ステップ2:相手の「感情」に共感する

次に、今回の件で相手がどのような気持ちになったか、その感情に寄り添い、共感を示します。

「〇〇様が、ご立腹されるのはごもっともです。」
「ご不安な気持ちにさせてしまい、大変心苦しく思っております。」

この共感の言葉があることで、相手は「自分の気持ちを分かってくれた」と感じ、冷静さを取り戻しやすくなります。問題の解決の前に、まず感情のケアを行うのです。

ステップ3:事実関係と「原因」を誠実に説明する

相手が少し落ち着いたところで、現在分かっている範囲での事実関係と、問題が発生した原因について、誠実に、そして簡潔に説明します。

ここでのポイントは、隠さず、嘘をつかず、専門用語を避けて分かりやすく話すことです。もし、まだ原因が特定できていない場合は、「現在、全力で原因を調査しております。判明次第、直ちにご報告いたします」と、調査中であることを正直に伝えましょう。

ステップ4:具体的な「対応策」を提示する

謝罪と説明だけで終わらせてはいけません。この問題に対して、具体的にどのような対応を取るのかを明確に提示します。

  • 原状回復: 商品の交換、返金、損害の補填など、相手が被った不利益を元に戻すための措置。
  • 再発防止策: 「今後は気をつけます」といった精神論ではなく、「〇〇のチェック体制を導入し、二度とこのようなことがないよう徹底いたします」という、具体的な仕組みの改善策。

この対応策が、あなたの「信頼を回復したい」という意思を形にする、最も重要な部分です。

ステップ5:今後の「窓口」を明確にする

最後に、今後のやり取りについて、誰が責任を持って窓口になるのかを明確に伝え、相手を安心させます。

「今後の本件に関するご連絡は、すべて、この〇〇(自分の名前)が責任を持って担当させていただきます。何かございましたら、いつでも私の携帯まで直接ご連絡ください。」

これにより、たらい回しにされる不安を解消し、「この人が最後まで向き合ってくれるんだ」という安心感を与えることができます。

第3章: ケース別・誠意が伝わる謝罪の実践フレーズ

ここでは、スモールビジネスで起こりがちな2つのケースについて、具体的な謝罪フレーズを紹介します。

ケース1:納品遅延を謝罪する場合

「〇〇様、この度は、お約束の納期に製品をお届けできず、誠に申し訳ございません。(謝罪) 楽しみにされていたにも関わらず、ご期待を裏切る形となり、大変心苦しく思っております。(共感) 原因は、〇〇の工程における私の段取りの不備にございます。(原因) つきましては、本日中に必ずお届けにあがると共に、お詫びとして〇〇をサービスさせていただきます。今後は、複数の担当者で進捗を確認する体制を整え、再発防止に努めます。(対応策) 何かございましたら、私の携帯まで直接ご連絡ください。(窓口)

ケース2:部下のミスを、経営者として謝罪する場合

「〇〇様、この度は、弊社の担当者〇〇の未熟な対応により、大変ご不快な思いをさせてしまいましたこと、経営者として深くお詫び申し上げます。(謝罪) 〇〇様がご立腹されるのは、当然のことと存じます。(共感) 全ての責任は、監督不行き届きである私にございます。(原因) 早急に担当者を変更し、今後は私が直接、本件の対応を引き継がせていただきます。また、今回の件は社内全体の問題として共有し、顧客対応マニュアルの見直しを徹底いたします。(対応策)

第4章: 謝罪は「コスト」ではなく「未来への投資」である

ミスやトラブルは、ビジネスにつきものです。重要なのは、その失敗をどう次に活かすか、という視点です。

失った信頼を取り戻すのは、失う時の10倍難しい

一度失った信頼を、再びゼロに戻すには、途方もない時間とエネルギーが必要です。目先の損失を恐れて、不誠実な対応や隠蔽を行えば、その代償は必ず何倍にもなって返ってきます。

誠実な謝罪は、短期的に見ればコスト(返金や補償など)がかかるかもしれません。しかし、それは未来の取引を継続するための、最も費用対効果の高い投資なのです。

「雨降って地固まる」は、本当にある

完璧な会社など、どこにも存在しません。お客様も、それは心のどこかで分かっています。だからこそ、失敗した時に、その会社や経営者の真価が問われるのです。

問題から逃げず、誠実に向き合い、全力で対応する。その姿勢をきちんと見せることができれば、お客様は「この会社は、いざという時に信頼できる」と、かえって評価を高めてくれることさえあります。これこそが、「雨降って地固まる」という状態です。

トラブルは、お客様との絆を、より強固にするための絶好のチャンスになり得るのです。

よくある質問

Q: こちらに非がない、理不尽なクレームにも謝罪すべきですか?

A: まず、お客様が「不快な思いをした」という感情的な事実に対しては、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」と、共感の意味で謝罪するのが賢明です。ただし、事実関係として自社に非がない点については、感情的にならず、客観的な根拠に基づいて冷静に説明する必要があります。全面的に非を認める必要はありません。

Q: メールでの謝罪と、電話や対面での謝罪は、どう使い分けるべきですか?

A: ミスの深刻度によります。軽微な事務ミスなどであればメールでの謝罪でも構いませんが、お客様に実害が出ている場合や、納期遅延など、ビジネスの根幹に関わる問題の場合は、必ず電話や対面で、経営者自身の声で直接謝罪すべきです。テキストだけの謝罪は、誠意が伝わりにくいと心得ましょう。

Q: 謝罪の際に、菓子折りなどは持っていくべきですか?

A: 必須ではありませんが、誠意を示す上で有効な手段の一つです。ただし、物で解決しようとしている、という印象を与えないよう注意が必要です。あくまで、謝罪の言葉と具体的な対応策が主役であり、菓子折りは「お時間をいただいたことへの感謝」といった、補助的な意味合いで持参するのが良いでしょう。

Q: 謝罪した結果、取引が終了してしまいました。

A: 残念ながら、どんなに誠実に対応しても、関係が修復できないケースもあります。その場合は、縁がなかったと受け入れ、気持ちを切り替えることも大切です。ただし、取引が終わったとしても、最後まで誠実な対応を貫くことで、将来的に何かの形で再びご縁が繋がる可能性は残ります。

Q: 従業員に、どのように謝罪の仕方を教育すればいいですか?

A: この記事で紹介したような「謝罪のステップ」を、社内の対応マニュアルとして共有するのが第一歩です。その上で、経営者自身が、お客様に対して誠実な謝罪の姿勢を日頃から見せることが、何よりの生きた教育となります。また、従業員が一人で抱え込まず、すぐに上司に相談できるような、風通しの良い組織文化を作ることも重要です。

筆者について

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