想定読者
- 社内会議や顧客との打ち合わせで、意見が対立して議論がまとまらず、困っている経営者やチームリーダー
- 自分の意見を通すだけでなく、関係者全員が納得する「合意形成」のスキルを高めたい方
- 会議を単なる意見交換の場で終わらせず、具体的な「次のアクション」に繋げたいと考えている方
結論:平行線の議論は、「意見」ではなく「目的」をすり合わせることで動き出す
結論から申し上げます。議論が平行線をたどる根本的な原因は、参加者がそれぞれの「意見(=手段)」に固執し、その議論の「本来の目的」を見失ってしまっていることにあります。
A案かB案か、という手段の対立で消耗するのではなく、「そもそも、私たちはこの会議で何を達成したかったんだっけ?」という、一段高い視点にある共通の目的に立ち返ること。
この記事では、対立を乗り越え、チームの力を最大限に引き出すための、戦略的なファシリテーション(会議進行)の技術を、具体的なステップと質問フレーズで解説していきます。
第1章: なぜ、あなたの会議は“平行線”で終わるのか?
「今日も、何も決まらなかったな…」と、徒労感だけが残る会議。そこには、必ずいくつかの共通した原因が潜んでいます。
原因1:議題が「手段」の議論から始まっている
会議の冒頭、いきなり「A案とB案、どちらがいいと思いますか?」と、具体的な手段(HOW)の議論から始めていませんか?
なぜ、A案やB案を検討する必要があるのか。その背景にある課題(WHY)や、達成したい目的(WHAT)が全員で共有されていないまま手段の議論に入ると、参加者はそれぞれの好みや経験則だけで意見を主張し始めます。土台となるコンクリートが固まっていないのに、柱を立てようとしているようなものです。
原因2:「意見の対立」を「人格の対立」と勘違いしている
「A案を主張する〇〇さんは、私のB案を否定したいんだな」。
白熱した議論の中で、いつの間にか「意見」への反論が、その意見を言っている「個人」への攻撃のように感じられてしまうことがあります。
一度こうなると、参加者は自分の意見を守るために、ますます頑なになります。論理的な議論ではなく、感情的な意地の張り合いになり、建設的な着地点を見つけることは不可能になります。
原因3:誰も「交通整理」をしていない
議論があちこちに飛び火したり、声の大きい人の意見ばかりが通ったり、論点がずれていったり…。そんなカオスな状態を、誰も「ちょっと待ってください」と止めることなく、ただ傍観している。
会議におけるファシリテーター(進行役)は、単なる司会者ではありません。議論の方向性を指し示し、参加者全員の発言を促し、時間内に結論へと導く「交通整理」の役割を担っています。この役割が不在の会議は、目的地のないドライブのようなものです。
第2章: 平行線を“一本の道”に変える、ファシリテーションの3ステップ
意見が真っ向から対立し、場の空気が悪くなってきた。そんな時こそ、ファシリテーターの腕の見せどころです。議論を前進させるための、具体的な3つのステップを紹介します。
ステップ1:一度、議論を止めて「共通の目的」に立ち返る
まず、勇気を持って議論にブレーキをかけます。そして、参加者全員に、この議論の原点を思い出させる質問を投げかけます。
- 魔法の質問フレーズ
- 「ありがとうございます。一度、立ち止まって確認させてください。そもそも、私たちがこの会議で達成したい目的は何でしたでしょうか?」
- 「A案もB案も、最終的に『お客様の満足度を高める』という目的は同じですよね?」
この質問は、参加者の視点を、目の前の「手段(A案かB案か)」の対立から、全員が合意しているはずの、より大きな「共通の目的」へと引き上げる効果があります。これにより、対立していた相手が、同じゴールを目指す“仲間”であるという認識を、取り戻すことができます。
ステップ2:それぞれの意見の「背景にある“想い”」を引き出す
次に、それぞれの意見に固執している人に対して、なぜその意見を主張するのか、その背景にある考えや懸念を、深掘りする質問をします。
- 背景を引き出す質問フレーズ
- 「〇〇さんが、A案を強く推すのは、特にどんな点を懸念されているからですか?」
- 「B案の、一番のメリットは何だとお考えですか?その背景にある〇〇さんのご経験を、もう少し詳しく教えていただけますか?」
人は、自分の意見が否定されると反発しますが、その意見の背景にある想い(価値観や懸念)を理解してもらえると、態度を軟化させます。「なるほど、そういう視点があったのか」「そういうリスクを心配していたんだな」と、お互いの理解が深まることで、対立は対話へと変わっていきます。
ステップ3:「第3の案」を、全員で共創する
共通の目的と、それぞれの背景にある想いが共有できたら、いよいよ着地点を探す最終ステップです。ここでは、A案かB案かの二者択一に固執せず、新しい選択肢を生み出すことを目指します。
- 第3・の案を生み出す質問フレーズ
- 「A案の“コスト面のメリット”と、B案の“品質面のメリット”、この両方の良いとこ取りができるような、C案は考えられないでしょうか?」
- 「もし、予算と時間の制約が全くないとしたら、理想的な解決策は何だと思いますか?」
このプロセスを通じて、参加者は単なる評論家から、当事者として新しい答えを共に創り出す(共創する)パートナーへと変わります。たとえ完璧な答えが出なくても、全員で知恵を絞ったというプロセスそのものが、チームの一体感を高めるのです。
第3章: 議論を活性化させる、ファシリテーターの“小ワザ”集
議論をスムーズに進めるためには、いくつかの小さなテクニックを知っていると非常に便利です。
ホワイトボードや付箋で、議論を「見える化」する
言葉だけの議論は、空中戦になりがちです。出てきた意見や論点を、リアルタイムでホワイトボードや付箋に書き出していきましょう。議論を見える化することで、以下のメリットが生まれます。
- 論点のズレや、話のループが防げる。
- 自分の意見がちゃんと記録されている、という安心感を参加者に与えられる。
- アイデアを組み合わせたり、グルーピングしたりして、新しい発想が生まれやすくなる。
発言しない人に、名指しで「話を振る」
声の大きい人だけで議論が進まないように、まだ発言していない人に対して、優しく話を振ってあげましょう。
「〇〇さんは、ここまでの話を聞いて、どのように感じましたか?」
「現場を一番よく知る△△さんの視点からも、ご意見をいただけますか?」
このように、相手の立場や専門性を尊重する形で話を振ることで、多様な意見を引き出し、議論をより豊かなものにすることができます。
時間を区切って、結論を出す
「この論点については、あと5分で一度結論を出しましょう」。
議論が長引きそうな時は、意識的に時間的な制約を設けることが有効です。締め切り効果により、参加者の集中力が高まり、結論を出すための思考が加速します。
第4章:「合意形成」が、組織を強くする
ファシリテーションは、単に会議をうまく進めるためのスキルではありません。それは、多様な意見を持つ人々が、一つの目標に向かって力を合わせるための、組織運営の根幹に関わる技術です。
「トップダウン」の限界
社長の一声で全てが決まるトップダウンの組織は、意思決定が早いというメリットはあります。しかし、その決定に対して、現場の社員は「やらされ感」しか感じません。
一方、議論を通じて、全員が納得して決めたこと(合意形成)に対しては、社員は強い当事者意識と責任感を持ちます。その後の実行フェーズでの、メンバーの主体性とパフォーマンスは、全く違ったものになるのです。
多様性こそ、イノベーションの源泉
意見の対立は、決して悪いことではありません。むしろ、全員が同じ意見しか言わない組織の方が、危険です
。異なる視点や背景を持つ人々が、真剣に意見をぶつけ合うからこそ、一人では思いもよらなかった、新しいアイデアやイノベーションが生まれるのです。
ファシリテーションとは、その健全な対立を恐れず、むしろ歓迎し、組織のエネルギーに変えていくための、リーダーにとって不可欠なスキルと言えるでしょう。
よくある質問
Q: 自分が議論の当事者である場合、どうやって中立的なファシリテーションをすればいいですか?
A: 非常に難しいですが、可能です。その場合は、まず「今から私は、進行役に徹します」と、自分の役割を宣言します。そして、自分の意見を主張する際には、「一旦、進行役の帽子を脱いで、一参加者として意見を言わせてください」と前置きすることで、自分の立場を明確に区別し、参加者の混乱を防ぐことができます。
Q: 声が大きくて、人の話を遮る人がいて困っています。
A: その場合は、その人の意見を一度しっかりと受け止めた上で、「ありがとうございます、〇〇さん。大変貴重なご意見ですね。他の方のご意見も、ぜひ伺ってみたいのですが、いかがでしょうか?」と、柔らかく、しかし毅然とした態度で、他の人に話を振るのが有効です。
Q: オンライン会議でのファシリテーションで、特に気をつけることは何ですか?
A: オンラインでは、参加者の反応が見えにくいため、対面以上に意識的に「〇〇さん、ここまでの話、どうですか?」と、名指しで話を振ることが重要になります。また、チャット機能を活用し、「ご意見がある方は、チャットにも書き込んでくださいね」と促すことで、発言のハードルを下げることができます。
Q: 議論は盛り上がったのですが、結局何も決まりませんでした。
A: 会議の最後に、必ず「決定事項」と「次のアクションプラン(誰が、いつまでに、何をするか)」を確認し、全員で合意する時間を設けることが重要です。「今日の会議の成果は、これです」と、明確に言語化して終わるクセをつけましょう。
Q: ファシリテーションのスキルを学ぶには、どうすればいいですか?
A: 最も良いトレーニングは、日々の小さな打ち合わせから、意識的にファシリテーター役をやってみることです。この記事で紹介したような「共通の目的に立ち返る質問」などを、一つでもいいので試してみてください。小さな成功体験を積み重ねることが、自信に繋がります。
筆者について
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