こんな人におすすめの記事です
- 将来的に、自社の売却や株式公開を考えている起業家・経営者
- ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達を検討しているスタートアップ創業者
- 「M&A」と「IPO」という言葉の違いや、その実態を正確に理解したい方
- 企業の成長戦略や、ファイナンスに関心があるビジネスパーソン
結論:出口戦略とは、創業者と投資家が利益を確定させるための計画である
事業を立ち上げ、成長させていく。その最終的なゴールとして、あなたはどのような未来を描いていますか。会社を次世代に引き継ぐという選択肢もあります。しかし特にベンチャーキャピタルなど、外部から資金調達を行ったスタートアップにおいては、「出口戦略(イグジット)」を計画することが、ほぼ必須となります。
結論から言います。出口戦略とは、創業者や投資家(ベンチャーキャピタルなど)が、保有する自社の株式を売却などによって現金化し、投下した資本の回収と、利益の確定(キャピタルゲイン)を行うための一連の計画です。
その代表的な手法が、①M&A(企業の合併・買収)と、②IPO(株式公開)です。どちらの出口を目指すかは、企業の成長戦略、創業者自身の人生設計、そして市場環境によって決まる、極めて重要な経営判断となります。
第1章:出口戦略(イグジット)とは何か?なぜ必要か
まず、なぜ出口戦略が必要とされるのか、その理由を創業者と投資家の両面から理解する必要があります。
- 創業者にとっての必要性 創業者にとって出口戦略は、自らがリスクを取り、心血を注いで育て上げた事業の価値を、金銭的な利益として確定させるための機会です。事業を売却、あるいは株式を公開することで、創業者個人は多額の創業者利益(キャピタルゲイン)を得ることができます。
- 投資家(VCなど)にとっての必要性 ベンチャーキャピタル(VC)は、他の投資家から資金を集めてファンドを組成し、未上場のベンチャー企業に投資します。VCのビジネスモデルは、投資先企業がM&AやIPOによって大きく成長した際に、保有株式を売却し、投資額を何倍にもして回収し、ファンドの出資者にリターンを分配することで成り立っています。そのためVCは、明確な出口戦略を描ける企業にしか、投資を行いません。
第2章:出口戦略の代表格①:M&A(企業の合併・買収)
M&Aは、自社を、あるいは自社の株式の過半数を、他の企業に売却することを指します。日本では出口戦略として、IPOよりもはるかに多くの企業がM&Aを選択しています。
M&Aのメリット
- 実現の可能性が比較的高い IPOには、売上規模や利益、ガバナンス体制など、証券取引所による非常に厳しい審査基準があります。それに対しM&Aは、買い手企業との合意さえあれば成立するため、IPOに比べて実現のハードルは低いと言えます。
- 比較的、短期間で実現可能 IPOの準備には、数年単位の期間が必要です。一方M&Aは、買い手が見つかってからの交渉や手続きがスムーズに進めば、数ヶ月から1年程度で完了することが可能です。
- シナジー効果による事業の成長加速 買い手となる大手企業の、販売チャネル、技術力、ブランド力、豊富な資金といった経営資源を活用することで、自社の事業を単独で成長させるよりも、はるかに速いスピードで拡大できる可能性があります。
M&Aのデメリット
- 経営権の喪失 会社の所有権が買い手企業に移るため、創業者(社長)は経営の自由度を失います。多くの場合、一定期間の引き継ぎを終えた後、経営の第一線から退くことになります。
- 企業文化の衝突 スタートアップの自由な文化と、買い手である大企業の保守的な文化が衝突し、従業員のモチベーションが低下したり、優秀な人材が流出してしまったりするリスクがあります。
- リターンが限定的になる可能性 一般的にM&Aによる売却額は、IPOが成功した場合の時価総額(企業の価値)よりも、低くなる傾向があります。
第3章:出口戦略の代表格②:IPO(株式公開)
IPOは、これまで非公開だった自社の株式を、証券取引所に上場し、一般の投資家が誰でも売買できるようにすることです。スタートアップにとって、一つの大きな到達点と見なされています。
IPOのメリット
- 創業者利益の最大化 M&Aに比べて、一般的に企業の価値(時価総額)が非常に高くなる傾向があります。そのため創業者や初期の投資家は、保有株式の一部を売却するだけで、莫大な利益を得られる可能性があります。
- 経営の独立性の維持 M&Aとは異なり、会社の経営権は既存の経営陣が維持します。創業者自身が社長として、引き続き会社の成長を主導していくことが可能です。
- 社会的信用の向上と、資金調達力の強化 上場企業となることで、企業の知名度や社会的信用は飛躍的に向上します。また株式市場から、いつでも大規模な資金調達が可能になるため、さらなる事業拡大に向けた投資を行いやすくなります。
IPOのデメリット
- 準備期間とコストが膨大 IPOを実現するためには、監査法人や証券会社といった専門家の支援を受けながら、数年がかりで厳格な内部管理体制を構築する必要があります。そのための費用は、数千万円から時には数億円に達します。
- 厳しい情報開示義務 上場企業として、四半期ごとの決算開示など、投資家保護のための非常に厳格な情報開示義務を負うことになります。
- 株主からの短期的な利益圧力 経営者は、一般株主の厳しい目に常に晒されることになります。株主からは短期的な業績や株価の向上が強く求められるため、長期的な視点での大胆な投資や経営判断が、行いにくくなる可能性があります。
第4章:M&AとIPO、どちらを選ぶべきか
最終的にどちらの出口戦略を目指すべきかは、創業者自身の価値観と、事業の特性によって決まります。
M&Aが適しているケース
- 比較的早期かつ確実に、創業者利益を確定させたい。
- 自社の事業を、より大きな企業の傘下でさらに成長させたい。
- 上場企業を経営していくことの、重い責任やプレッシャーは避けたい。
IPOが適しているケース
- 自らが経営の主導権を握り続け、会社をさらに大きく成長させたい。
- 社会的な公器として、自社のブランドと理念を世の中に広く浸透させたい。
- 創業者利益の最大化を目指したい。
よくある質問
Q: M&AとIPO以外の出口戦略はありますか?
A: はい、あります。経営陣が自社の株式を買い取るMBO(マネジメント・バイアウト)や、他の投資ファンドなどに株式を売却するセカンダリー売却といった手法も存在します。
Q: 会社の価値(バリュエーション)は、どうやって決まるのですか?
A: 企業の収益性、成長性、市場での競争優位性などを基に、専門的な手法(DCF法、類似会社比較法など)を用いて算出されます。M&Aの場合は、最終的に買い手と売り手の交渉によって価格が決定されます。
Q: M&Aで会社を売却した後、創業者(社長)はどうなるのですか?
A: 契約条件によりますが、事業の引き継ぎのために一定期間(1年〜3年程度)、買い手企業の元で社長や顧問として留まることを要請されるのが一般的です。その後、退任して新たな事業を始める、あるいは引退するというケースが多いです。
Q: 日本では、M&AとIPO、どちらの件数が多いですか?
A: M&Aの件数の方が、IPOの件数よりも圧倒的に多くなっています。IPOは、ごく一握りの急成長した企業にしか開かれていない、非常に狭き門であるのが実情です。
筆者について
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