想定読者

  • 特定の優秀な社員に仕事が集中し、「その人がいないと、もう会社が回らない」と悩む経営者・マネージャー
  • 自分が「スタープレイヤー」として、一人で仕事を抱え込み、心身ともに疲弊している方
  • 属人化をなくし、持続可能な強い組織を作りたいと考えているすべてのリーダー

結論:蜀の悲劇は、天才に「依存」したこと。強い組織は「仕組み」で勝つ

三国志の英雄、諸葛亮孔明。劉備亡き後の蜀を、その天才的な知略と実行力で、たった一人で支え続けたスーパーマンです。しかし、皮肉なことに、蜀が滅びた根本原因は、この諸葛亮という、あまりに偉大すぎるスタープレイヤーに、組織のすべてが依存してしまったことにあります。

一人の天才に依存する組織は、その天才がいる間は良くても、彼が去った瞬間に崩壊します。それだけでなく、後継者が育たず、組織全体が思考停止に陥るという、より深刻な病を抱えることになるのです。

これは、遠い昔の歴史物語ではありません。現代の多くの企業が陥る「スタープレイヤー依存」という罠そのものです。この記事では、蜀の悲劇から、現代の私たちが学ぶべき組織論を解説します。

天才軍師・諸葛亮の「完璧すぎた」仕事ぶり

創業者・劉備の死後、諸葛亮は丞相として、蜀のすべてを文字通り一人で背負いました。政治、軍事、内政、外交、法整備…。国の運営に関わるあらゆることを、彼自身が判断し、実行しました。

有名な逸話に、「二十罰以上の杖罪は、自らこれを見た(二十回以上、杖で打つような罪ですら、自分で裁決を確認した)」というものがあります。これは、彼の公正さを示す美談として語られる一方、現代の視点で見れば、マイクロマネジメントの極みです。彼は、部下を信用せず、あらゆる業務を自分で管理しなければ、気が済まなかったのです。

スタープレイヤー依存がもたらす「3つの病」

この諸葛亮の完璧すぎる仕事ぶりは、蜀という組織を、深刻な病に蝕んでいきました。

病1:後継者が育たない

組織の誰もが、諸葛亮の指示を待つだけになります。自分で考え、判断し、責任を取るという経験を積む機会が、完全に失われてしまうのです。その結果、あれほどの天才が20年以上も国を支えたにもかかわらず、彼の死後、国を担えるような有能な人材は、ほとんど現れませんでした。

病2:組織が硬直化する

諸葛亮の判断は、常に(ほぼ)正しいため、組織内に異論や新しいアイデアが出なくなります。「どうせ、丞相の考えが一番正しいのだから」と、全員が思考停止に陥るのです。イノベーションの種は摘まれ、組織は新しい変化に対応できない、硬直化した集団になっていきます。

病3:属人化とブラックボックス化

あらゆる重要な情報とノウハウが、諸葛亮という個人の頭の中にだけ蓄積されていきます。彼が何を考え、どう判断しているのか、そのプロセスは誰にも分かりません。これは、彼がいなければ組織が全く機能しない、極めて脆い状態です。事実、彼の死後、蜀は急速に衰退への道を転がり落ちていきました。

あなたの会社は大丈夫か?「蜀」化の危険サイン

これは、決して他人事ではありません。あなたの会社にも、こんな兆候はありませんか?

  • 「これは、〇〇さんじゃないと分からない」という言葉が、社内で頻繁に聞かれる。
  • 特定の社員のデスクにだけ、大量の書類や付箋が山積みになっている。
  • そのスタープレイヤーが休暇を取ると、顧客からの問い合わせ対応や、プロジェクトの進行が明らかに滞る。
  • 会議で、若手社員からの意見や提案が、ほとんど出ない。

もし一つでも当てはまるなら、あなたの組織は「蜀化」し始めている危険なサインです。

「仕組み」で勝つ組織の作り方

では、スタープレイヤー依存から脱却し、持続可能な強い組織を作るには、どうすれば良いのでしょうか。それは、ヒーローに頼るのではなく、「仕組み」で勝つことを目指すのです。

権限移譲の勇気

経営者やリーダーが、まず持つべきは「勇気」です。失敗を恐れず、部下に仕事を任せてみる。たとえ、自分がやった方が80点のものが、部下がやれば30点しか取れないとしても、その「50点の差」は、部下の成長のための授業料だと考えるのです。完璧な結果よりも、部下が育つ機会を優先しましょう。

業務の標準化とマニュアル化

「あの人の頭の中にしかないノウハウ」を、組織の共有財産に変えましょう。誰がやっても一定の品質を保てるように、業務プロセスを標準化し、マニュアルに落とし込むのです。これにより、業務は属人性から解放され、スタープレイヤーは、より創造的な仕事に時間を使えるようになります。

採用と育成に投資する

常に「次のリーダー候補」を探し、育てることを、経営の最優先事項としましょう。短期的な売上を追うことよりも、長期的な視点で、組織の未来に投資するのです。スタープレイヤー自身にも、自分の後継者を育てることが、重要な仕事の一つだと認識してもらう必要があります。

本当に強い組織とは、一人の天才が去っても揺るがない、盤石な仕組みと文化を持つ組織なのです。

よくある質問

Q: 優秀な人に仕事が集中するのは、仕方ないことでは?

A: ある程度は仕方がありません。しかし、それを放置するのは、経営者やマネージャーの怠慢です。その優秀な人の仕事を徹底的に分析し、「標準化できる業務」と「その人にしかできない創造的な業務」に切り分け、前者をとにかく他の人に移管していく努力が不可欠です。

Q: 仕事を任せたいのですが、部下が「できません」「自信がない」と言って受け取ってくれません。

A: それは、あなたが「丸投げ」しているだけかもしれません。いきなり大きな仕事を任せるのではなく、まずは小さな判断から委ねてみる。そして、もし失敗しても、その責任は自分が取るという姿勢を明確に示し、部下が安心して挑戦できる「心理的安全性」を確保することが重要です。

Q: 自分がスタープレイヤーで、仕事を抱え込んでしまいます。どうすれば手放せますか?

A: まず、「自分がいないと、この会社は回らない」という状況は、誇るべきことではなく、組織に対する「罪」であると認識を変えることから始めましょう。そして、自分が楽になるため、より面白い仕事に挑戦するために、意識的に仕事を人に任せる、マニュアルを作る、という時間を作ってみてください。

Q: 小さな会社で、そもそも人が足りません。依存せざるを得ない状況です。

A: 人が少ないからこそ、属人化のリスクはより深刻です。一人が倒れたら、事業が停止してしまうからです。少ない人数でも、お互いの業務をカバーできるよう、情報共有の仕組み(日報やチャットツールでの業務報告など)を徹底し、業務のマニュアル化を進めることが、大企業以上に重要になります。

筆者について

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