想定読者
- デザイナーやライター、コンサルタントなどの外部専門家に、初めて仕事を依頼するスモールビジネスオーナー
- 外注パートナーとのコミュニケーションに、どこか壁を感じたり、修正依頼が多くて困っている方
- ただ安く作業してもらうだけでなく、相手の専門性を最大限に引き出し、WIN-WINの関係を築きたいと考えている経営者
結論:外注は「作業の丸投げ」ではなく、「専門知識の購入」である
結論から申し上げます。外注で失敗する最大の原因は、経営者が外注パートナーを「自分より安く、面倒な作業をやってくれる人」と、無意識に考えてしまうことにあります。
しかし、本来の外注とは、自社にない専門的な知識やスキルを「購入する」という、極めて戦略的な経営判断です。
この記事では、相手を単なる“下請け”として扱う「指示」から脱却し、相手のプロとしてのプライドと能力を最大限に引き出す、敬意に満ちた「依頼」の技術について、具体的な伝え方を徹底的に解説していきます。
第1章: なぜ、あなたの“指示”では、良い成果物が出てこないのか?
良かれと思って伝えた指示が、なぜか相手のやる気を削ぎ、期待外れの結果を招いてしまう。まずは、その典型的な失敗パターンから見ていきましょう。
失敗パターン1:「WHY(なぜ)」が抜け落ちた、作業だけの指示
「このデザイン、もっと赤を強くしてください」「この文章、500文字追加してください」。
このように、WHAT(何を)だけを伝える指示は、相手を単なる“作業者”にしてしまいます。なぜなら、その指示の背景にある目的や意図が共有されていないからです。
プロフェッショナルは、常に「なぜ、この作業が必要なのか?」を考えます。その「WHY」が分からないと、彼らは自分の専門性を活かした、より良い提案をすることができません。結果として、言われたことだけをこなす、指示待ちの受け身な仕事しか生まれなくなってしまうのです。
失敗パターン2:曖昧で、丸投げな指示
「いい感じのデザインでお願いします」「なんか面白い記事を書いてください」。
これは、一見すると相手に裁量を与えているように見えますが、実際には考えることを放棄した、最も無責任な丸投げです。
何が「いい感じ」で、どんな読者に「面白い」と思ってもらいたいのか。そのゴールイメージが共有されないままでは、相手は暗闇の中を手探りで進むしかありません。当然、出てくる成果物はあなたのイメージとはかけ離れたものになり、「こんなはずじゃなかった…」という、お互いにとって不幸な結果を招きます。
失敗パターン3:手段を細かく指定しすぎる、マイクロマネジメント
パターン2とは逆に、あまりにも細かく手段を指定しすぎるのも問題です。
「ここのフォントは〇〇で、サイズは12ポイント。余白は15ピクセルにしてください」。
もちろん、絶対に譲れないレギュレーションがある場合は別ですが、プロの専門領域にまで過剰に口を出すことは、「あなたのやり方は信用していません」という、無言のメッセージを送っているのと同じです。相手のプライドを傷つけ、創造性を奪い、最低限の仕事しかしない“ロボット”に変えてしまいます。
第2章: パートナーのやる気を引き出す「依頼」の5ステップ
では、相手の能力を120%引き出すためには、どのように伝えればいいのでしょうか。ここでは、仕事を依頼する際の、具体的な5つのステップを解説します。
ステップ1:WHY(なぜやるのか)を、情熱をもって共有する
最初に伝えるべきは、作業内容ではありません。このプロジェクトがなぜ重要なのか、その目的と、達成した先にある理想の未来です。
「今回お願いするホームページは、ただ作るのが目的ではありません。うちのサービスの価値を、まだ知らない〇〇な人たちに届け、彼らの悩みを解決するための、最初の架け橋なんです。(WHY)」
このように、あなたの事業に対する想いやビジョンを共有することで、相手は単なる作業者ではなく、同じゴールを目指すプロジェクトの一員としての当事者意識を持ってくれます。
ステップ2:WHAT(何を)ではなく、WHO(誰に)とGOAL(どうなってほしい)を伝える
次に、具体的な依頼内容を伝えますが、ここでのポイントは「〇〇を作ってください(WHAT)」と伝える前に、「誰に、届けたいのか」「その人が、成果物を見て、どう感じ、どう行動してほしいのか」という、ターゲットとゴールを明確に伝えることです。
「ターゲットは、〇〇で悩んでいる30代の女性です。(WHO) このデザインを見た時に、『私のためのサービスだ!』と直感的に感じ、安心して問い合わせボタンを押せるような、そんなデザインにしてほしいんです。(GOAL)」
ゴールが明確であれば、そこに至るまでの最適な手段(WHAT)は、プロであるパートナーが考えてくれます。
ステップ3:MUST(必須要件)とWANT(要望)を切り分ける
依頼内容を伝える際は、必ず守ってほしいMUST(必須要件)と、できれば叶えてほしいWANT(要望)を、明確に切り分けて伝えましょう。
- MUST: 会社のロゴの色、法的に記載が必要な文言、予算、納期など。
- WANT: 「できれば、もう少し明るい雰囲気だと嬉しいです」「もし可能なら、〇〇のようなテイストも見てみたいです」など。
全てを「MUST」として伝えてしまうと、相手の自由な発想を縛ってしまいます。WANTはあくまで「要望」として伝えることで、相手はプロとしての提案の余地を残しつつ、安心して作業に取り組むことができます。
ステップ4:「あなたの専門知識を貸してください」というスタンスで聞く
依頼内容を伝えたら、必ず最後に「この道のプロとして、どう思いますか?」「もっと良くするためのアイデアがあれば、ぜひ教えてください」と、相手の意見を求める一言を加えましょう。
この一言は、「私はあなたを、単なる作業者ではなく、対等な専門家として尊敬しています」という、非常に強力なメッセージになります。これにより、相手は受け身の姿勢から、主体的にプロジェクトに関わるパートナーへと変わります。
ステップ5:参考資料は「丸投げ」せず、「好きな理由」を添える
競合サイトのURLや、参考デザインの画像をただ送るだけでは、相手は「どこを参考にすればいいのか」が分かりません。
「このサイトの、特にこの写真の温かい雰囲気が好きです」「この文章の、語りかけるようなトーンを参考にしたいです」
このように、なぜ、それを良いと思ったのか、あなたの感性や意図を具体的に言語化して伝えることで、認識のズレを最小限に抑えることができます。
第3章: 修正依頼とフィードバックの、角が立たない伝え方
どんなに良い依頼をしても、一発で完璧な成果物が出てくることは稀です。修正依頼やフィードバックは、必ず発生します。ここで、相手との関係を壊さずに、クオリティを高めるための伝え方を学びましょう。
まず「感謝」と「肯定」から入る
修正点を指摘する前に、まずは成果物を出してくれたことへの感謝と、良いと思った点を具体的に肯定することから始めます。
「〇〇さん、早速のご提案ありがとうございます!特に、このキャッチコピーは、私たちの想いを的確に表現していて、素晴らしいと思いました。」
いきなりダメ出しから入ると、相手は心を閉ざしてしまいます。まず肯定的なフィードバックをすることで、相手は安心して、次の修正点に耳を傾ける準備ができます。
修正依頼は「I(アイ)メッセージ」で伝える
「このデザインはダメです(YOUメッセージ)」と、相手を主語にして否定するのではなく、「私は、もう少し〇〇だと、より嬉しいです(Iメッセージ)」と、自分を主語にして、あくまで個人の感想や要望として伝えます。
- 悪い例(YOUメッセージ): 「この文章は、分かりにくいです。」
- 良い例(Iメッセージ): 「私がターゲットの立場だったら、もう少し具体的な事例があると、より理解しやすいと感じました。」
これにより、相手への人格否定を避け、前向きな改善案として受け取ってもらいやすくなります。
第4章: “良いパートナー”と、長く付き合うために
優れた外注パートナーは、あなたのビジネスを加速させる、かけがえのない存在です。そんなパートナーと、長期的に良好な関係を築くために、経営者が心がけるべきことを紹介します。
適正な報酬と、迅速な支払い
プロの仕事には、敬意を払い、適正な報酬を支払う。そして、請求書が届いたら、できる限り迅速に支払う。これは、信頼関係の基本中の基本です。支払いが遅い発注者は、どんなに良い言葉を並べても、パートナーからの信頼を失います。
ただの「発注者」ではなく、「一番のファン」になる
パートナーの仕事が素晴らしかったら、それを積極的に他の人に推薦しましょう。
「うちのホームページを作ってくれたデザイナーさん、本当にすごいんですよ!」
「この文章は、ライターの〇〇さんの力なくしては書けませんでした。」
あなたが、パートナーの仕事の一番のファンであり、広報担当者になること。それが、相手のモチベーションを最高に高め、何よりも強い信頼関係を築くことに繋がります。
長期的な視点で、共に成長する
目先の案件だけでなく、「来年は、〇〇という新しい挑戦を一緒にしたいと思っているんです」と、未来のビジョンを共有しましょう。
あなたの事業の成長が、パートナー自身の成長や新しい仕事に繋がる。そう感じてもらうことができれば、相手は単なる外注先ではなく、あなたの事業の成功を心から願う、運命共同体となってくれるはずです。
よくある質問
Q: 依頼する前に、どこまで細かく仕様を決めておくべきですか?
A: ゴール(WHO, GOAL)と必須要件(MUST)は、できる限り具体的に決めておくべきです。しかし、それを実現するための手段(HOW)については、ある程度の余白を残し、パートナーからの提案を引き出すのが理想です。仕様を固めすぎると、それ以上のアイデアが出てこなくなります。
Q: 複数の候補者がいる場合、どのパートナーを選べばいいですか?
A: 実績やスキルはもちろん重要ですが、それ以上に「コミュニケーションのしやすさ」と「こちらの事業への共感度」を重視すべきです。どんなにスキルが高くても、意思疎通がスムーズにいかなければ、良いプロジェクトにはなりません。少し話してみて、「この人となら、一緒に良いものが作れそうだ」と直感的に感じられる相手を選びましょう。
Q: 修正依頼が、3回、4回と重なってしまうのですが…
A: それは、最初の依頼段階でのゴール共有が不足している可能性が高いです。なぜ修正が必要なのか、その理由を伝える際に、「最初のゴールである〇〇を実現するためには、この部分の修正が必要だと考えました」と、常に原点に立ち返って説明することで、無駄な修正のラリーを防ぐことができます。
Q: 契約書は、どの程度しっかり結ぶべきですか?
A: たとえ少額の案件であっても、必ず書面で契約を結ぶべきです。報酬、納期、著作権の帰属、修正回数の上限など、基本的な項目を定めた簡単な契約書(または発注書と発注請書)を交わすだけで、後の「言った・言わない」のトラブルを9割方、防ぐことができます。
Q: パートナーとの金銭的な交渉(値引きなど)で、気をつけることはありますか?
A: 専門家への値引き交渉は、基本的に避けるべきです。それは、相手の専門知識やスキルを軽視する行為と受け取られかねません。予算が合わない場合は、「この予算内で、どこまでの作業が可能ですか?」と、値引きではなく「作業範囲の調整」を相談するのが、プロに対する誠実な向き合い方です。
筆者について
記事を読んでくださりありがとうございました!
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