想定読者

  • いつも10人以上の会議に参加しており、その非効率さに心底うんざりしている方
  • 会議の「参加者選び」に、明確な基準を持ちたいと考えているリーダーやマネージャー
  • GoogleやAmazonといった先進企業の、合理的で生産性の高い会議術を学びたいビジネスパーソン

結論:会議の成果は、参加者の「数」に反比例する

あなたの会社の会議室には、何人の「置物」が座っているでしょうか。ただそこにいるだけで、ほとんど発言もせず、議論に貢献もしない参加者。もし、そんな光景が当たり前になっているのなら、あなたの会社の会議は、生産性を著しく蝕む「病」に侵されています。Googleが会議の参加者を原則8人まで(最大でも10人)に絞っているのは、単なる気まぐれではありません。それは、会議の質と意思決定のスピードは、参加者の数が増えれば増えるほど、指数関数的に低下するという、厳しい真実に基づいた、極めて戦略的なルールなのです。

あなたの会議が「沈黙」と「傍観者」だらけになる理由

大人数の会議で、なぜ発言するメンバーはいつも同じになってしまうのでしょうか。それは、参加者のやる気の問題ではありません。「社会的怠慢(ソーシャル・ローフィング)」、あるいは「リンゲルマン効果」と呼ばれる、人間の根源的な心理現象が原因です。

これは、集団で作業を行う際、人数が増えるほど、一人当たりの貢献度や努力の量が低下するというもの。綱引きで、1人で引く時よりも、8人で引く時の方が、1人当たりの出す力が弱くなる、という実験が有名です。会議もこれと同じです。参加者が増えるほど、「誰かが発言してくれるだろう」「自分が言わなくても、議論は進むだろう」という傍観者意識が芽生え、一人ひとりの当事者意識は、面白いほど希薄になっていくのです。

なぜ「8人」なのか?Googleが発見した魔法の数字

Googleでは、創業者の一人であるラリー・ペイジがCEOに復帰した際、社内にはびこる非効率な会議文化を撲滅するため、いくつかの会議ルールを導入しました。その中でも特に有名なのが、「会議の参加者は10人まで(理想は8人以下)」というものです。

なぜ「8人」という数字なのでしょうか。まず、全員が当事者として発言できる、現実的な上限だからです。1時間の会議で、全員が均等に話すとすれば、8人なら1人あたり7分以上話せますが、15人いれば1人あたりたったの4分です。これでは、深い議論など到底できません。

次に、迅速な意思決定が可能になるからです。合意形成の難易度は、人数が増えるほど、組み合わせ論的に爆発します。少人数に絞ることで、議論の収束は格段に速まります。

そして、一人ひとりの責任が明確になるからです。参加者が少ないほど、「この意思決定は、ここにいる我々で下すのだ」という強い責任感が生まれ、議論の質も自然と高まるのです。

ちなみに、Amazonには「ピザ2枚ルール」という有名な考え方があります。これは、「会議の参加者は、ラージサイズのピザ2枚で満腹になる人数であるべきだ(=だいたい6人〜8人)」というもの。企業の文化は違えど、トップ企業が同じ結論に達しているのは、非常に興味深い事実です。

「8人会議」を成功させるための参加者の選び方

では、どうすれば参加者を厳選できるのでしょうか。会議を招集する際に、以下の思考プロセスを徹底してください。

まず、その会議の「意思決定者」は誰なのかを、ただ一人、明確に決めます。どんな会議にも、最終的な決定を下す責任者がいるはずです。その人物の参加は、絶対条件です。

次に、その意思決定に「不可欠な情報」を持っている人をリストアップします。現場の状況を最もよく知る担当者、技術的な知見を持つ専門家など、その人がいなければ、そもそも議論が成り立たない、という人物だけを厳選します。彼らは、議論の「インプット」を提供する役割です。

そして、「情報共有のためだけ」の参加者を、断固として呼ばないと心に誓います。彼らは、会議の生産性を下げる最大の要因です。「知っておいた方が良いかも」という曖楽な理由で人を呼ぶのをやめましょう。彼らには、会議の後に、簡潔にまとまった議事録を共有すれば、それで十分なのです。

最後に、リストアップしたメンバーが8人を超えている場合、「この会議のゴール達成に、最も貢献度が低いのは誰か?」という、非情とも思える問いを立て、参加者を削る勇気を持ってください。会議への参加は、ステータスではなく、果たすべき責任なのです。

「呼ばれない勇気、呼ばない勇気」が組織を変える

この少人数会議の文化を組織に根付かせるためには、主催者と参加者の双方に、意識の変革が求められます。

会議の主催者には、「呼ばない勇気」が必要です。「あの人を呼ばないと、後で文句を言われるかもしれない」といった、人間関係のしがらみや同調圧力に屈せず、本当に必要な人だけを招集する。これは、組織の時間という最も貴重な資源を守るための、リーダーの重要な責務です。

そして参加者には、「呼ばれない勇気」が求められます。自分がその会議の意思決定に不可欠でないと判断したら、「その会議ですが、私は議事録でキャッチアップしますので、今回は遠慮させていただきます」と、主体的に辞退する。これは、やる気がないのではなく、自分の時間をより価値の高い仕事に使うという、プロフェッショナルな姿勢の現れです。

この「呼ばない勇気」と「呼ばれない勇気」の両輪が揃って初めて、あなたの組織から無駄な会議は一掃され、社員は本来の創造的な仕事に、その能力を最大限に発揮できるようになるでしょう。

よくある質問

Q: 全社的な情報共有など、どうしても大人数が必要な会議はどうすればいいですか?

A: それは「意思決定会議」ではなく、「情報伝達のための集会(タウンホールミーティングなど)」と、明確に区別すべきです。そうした場では、質疑応答の時間を設ける以外、基本的には一方通行の情報伝達に徹し、議論や意思決定をしようとしてはいけません。

Q: 参加者を絞ると、後から「聞いていない」という人が出てきて、トラブルになりませんか?

A: そのために「議事録」が重要になります。会議で「何が決定されたのか」「次のアクションは何か」を、簡潔にまとめた議事録を作成し、関係者に速やかに共有する。このプロセスを徹底すれば、トラブルは防げます。会議に出席することと、情報を知っていることは、イコールではないのです。

Q: 自分が「不要な参加者」として呼ばれなかったら、少し寂しい気持ちになります。

A: その気持ちは、会議への参加を「ステータス」や「所属意識の確認」の場として捉えている証拠かもしれません。会議に呼ばれないことは、あなたが軽んじられているのではなく、「あなたは、もっと価値のある、あなたにしかできない仕事に集中してください」という、会社からの信頼のメッセージだと捉え直してみてはいかがでしょうか。

Q: 8人という数字に、科学的な根拠はあるのですか?

A: 厳密に「8人」という数字自体に、絶対的な科学的根拠があるわけではありません。これは、GoogleやAmazonといった企業が、経験則から導き出した、最も効率的な人数の「目安」です。重要なのは、数字そのものよりも、「なぜ少人数が良いのか」という原則を理解し、自分の組織に合った、最適な人数を常に模索する姿勢です。

筆者について

記事を読んでくださりありがとうございました! 私はスプレッドシートでホームページを作成できるサービス、SpreadSiteを開発・運営しています! 「時間もお金もかけられない、だけど魅力は伝えたい!」という方にぴったりなツールですので、ホームページでお困りの方がいたら、ぜひご検討ください! https://spread-site.com