こんな人におすすめの記事です
- 自身の事業に、外部からの出資(エクイティファイナンス)を受け入れるべきか悩んでいる方
- ベンチャーキャピタル(VC)との付き合い方や、そのビジネスモデルを正確に理解したい方
- 会社の経営権を誰にも渡さず、自らのビジョンで事業を運営したい経営者・個人事業主
- 「ブートストラップ」や「自己資本経営」という考え方に関心がある方
結論:会社の「所有権」と「経営権」を、絶対に手放してはならない
事業を立ち上げ、成長を加速させたいと考える時、多くの起業家が「資金調調」という選択肢を検討します。特にベンチャーキャピタル(VC)からの出資は、華々しい成功への切符のように語られることがあります。しかしその裏側にある、重大なコストを理解しているでしょうか。
結論から言います。多くのスモールビジネスや、持続的な成長を目指す企業にとって、創業者が自社の株式を100%保有し続ける「自己資本経営」こそが、最も合理的で、かつ健全な経営戦略です。
なぜなら外部から出資を受け入れ、株式を渡すという行為は、単にお金を得るということではありません。それは①会社の「所有権」の一部を売り渡し、②経営における最終的な「意思決定権」を他人に委ね、③短期的な「出口戦略」を強要されるという、極めて大きな代償を伴うからです。この記事ではその危険性と、株式を100%保有し続けることの価値を、具体的に解説します。
第1章:「株式」とは何か?- 会社の所有権そのものである
まず株式の本質を、正確に理解する必要があります。株式とは単なる証券ではありません。それは以下の権利が一体となった、会社の「所有権」の分割証書です。
- 利益分配請求権:会社が生み出した利益の一部を、配当として受け取る権利。
- 議決権:株主総会に出席し、取締役の選任や、会社の重要事項の決定に対して、賛否を投じる権利。
- 残余財産分配請求権:会社が解散した場合に、残った資産の分配を受ける権利。
たとえ1%であっても、株式を他人に渡すということは、会社の所有権、利益、そして意思決定権の1%を、永久に手放すことを意味します。この事実の重みを、経営者は決して軽視してはなりません。
第2章:なぜ、投資家はあなたの会社の「株」を欲しがるのか
銀行からの融資(借金)と、投資家からの出資(株式取得)は、似て非なるものです。銀行は貸したお金を、利息と共に返済してもらうことで利益を得ます。彼らは会社の所有権には関与しません。
一方ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家は、あなたの会社に「投資」し、その見返りとして「株式」を取得します。彼らのビジネスモデルは、投資先企業が数年以内にIPO(株式公開)やM&A(企業売却)といった「出口戦略(イグジット)」を迎えることで、保有する株式の価値が、投資額の10倍、100倍になることを期待するものです。
つまり彼らの目的は、あなたの会社が短期間で、超高速に成長し、最終的に売却されることです。その目的は、あなたの「良い会社を、長く、着実に経営したい」という目的と、必ずしも一致しないのです。
第3章:株式を100%保有する3つの絶大なメリット
株式を100%自分自身で保有し続ける「自己資本経営(ブートストラップ)」には、絶大なメリットが存在します。
1. 完全な経営権の維持
株主があなた一人であれば、全ての意思決定は、あなた一人の責任と判断で、迅速に行うことができます。株主総会で、他人にお伺いを立てる必要はありません。事業の方向転換、新しい挑戦、あるいは「あえて成長を急がない」という戦略的な判断まで、全てを自由に、そして即座に決定できます。これは経営者にとって、最大の精神的な安定に繋がります。
2. 利益の完全な享受
会社が生み出した利益は、100%株主であるあなたのものです。その利益を、さらなる事業投資に回すのか、役員報酬として受け取るのか、あるいは内部留保として蓄えるのか、全てを自分で決めることができます。将来、会社を売却(M&A)するという決断をした場合も、その売却益の100%を、あなた自身が受け取ることができます。
3. 「出口戦略(イグジット)」からの解放
外部の投資家がいる場合、あなたは彼らにリターンを返すため、常にIPOやM&Aという「出口」を意識した経営を求められます。しかし自己資本経営であれば、そのプレッシャーから完全に解放されます。利益の出る限り、その事業をあなたが望む限り、何十年でも続けることができます。あるいは子供に事業を承継する、といった選択肢もあなたの自由です。
第4章:「自己資本経営」を貫くための戦略
では外部からの出資に頼らず、事業を成長させるためには、どうすれば良いのでしょうか。
1. 利益の出るビジネスモデルを設計する 最初から多額の先行投資を必要とせず、顧客から得られる売上が費用を上回る、利益率の高いビジネスモデルを設計することが基本です。
2. 徹底したコスト管理 身の丈に合わない、過剰なオフィスや設備投資は避けます。固定費を可能な限り低く抑え、利益の出る体質を維持します。
3. 顧客からのキャッシュフローを最大化する サービスの提供前に代金の一部を受け取る「前受金」や、月額課金の「サブスクリプションモデル」などを導入し、顧客からの収入を事業の運転資金・成長資金として活用します。
4. 融資(デットファイナンス)を検討する どうしても外部資金が必要な場合は、株式を渡す「エクイティファイナンス」ではなく、返済義務のある「デットファイナンス」、つまり日本政策金融公庫や銀行からの融資を検討します。借入金は、返済すれば終わりであり、経営権を脅かすことはありません。
第5章:それでも、出資を受け入れるべき時
自己資本経営のメリットを強調しましたが、それでも外部からの出資を受け入れるべき、限定的なケースも存在します。
- 市場のスピードが極めて速い場合 「勝者総取り」と言われるような市場のシェアを、短期間で獲得することが事業の成否を分ける場合。競合他社が多額の資金を調達して、広告宣伝や開発に投資している状況では、自己資本だけではスピードで太刀打ちできない可能性があります。
- 巨額の初期投資が不可欠な事業の場合 工場の建設や、大規模な研究開発(創薬、宇宙開発など)のように、事業モデル上どうしても最初に巨額の設備投資が必要な場合は、自己資本だけでは事業を始めることすら困難です。
- 投資家が、資金以上の価値を提供してくれる場合 出資を検討している投資家が、資金提供だけでなく、自社だけでは到底得られない業界の重要な人脈や販路、あるいは経営に関する極めて専門的な知見を提供してくれる場合。その価値が株式を手放すコストを上回ると判断できるなら、出資受け入れは有効な戦略となり得ます。
よくある質問
Q: 従業員にストックオプションを渡すのも、避けるべきですか?
A: いいえ、これは別の問題です。従業員のモチベーションを高め、会社への貢献意欲を引き出すための有効なインセンティブ制度です。ただし発行する比率や、条件設計は慎重に行う必要があります。
Q: 100%自己資本だと、会社の成長スピードが遅くなりませんか?
A: はい、VCから資金調調した企業に比べれば、成長スピードは一般的に緩やかになります。しかしその分、持続可能性は高く、経営の自由度は維持されます。「急成長」と「持続可能性」、どちらを重視するかという経営者の価値観の問題です。
Q: 共同創業者がいる場合、株式の比率はどう決めるべきですか?
A: 非常に重要で、かつ難しい問題です。それぞれの貢献度や、将来の役割分担などを考慮し、必ず創業時に、弁護士などの専門家を交えて、株主間契約書を作成すべきです。後々のトラブルを避けるために、最も重要なプロセスの一つです。
Q: 100%株主であることの、デメリットはありますか?
A: 事業が失敗した場合の金銭的なリスクを、全て自分一人で負うことになる点が、デメリットと言えます。また外部の株主がいないため、経営に対する客観的で厳しい視点が、不足しがちになる可能性もあります。
筆者について
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