こんな人におすすめの記事です
- 外部からの出資受け入れや資金調達を検討している起業家
- 共同創業者との株式比率の決定に悩んでいる方
- M&Aや事業譲渡など会社の将来に関する重要な意思決定を控えている経営者
- 株主の権利や株主総会の仕組みを正しく理解したいと考えている方
結論:株式保有率は会社の「支配権」そのものである
会社の設立時や資金調達の場面で株式の比率をどうするかという問題は常に経営者を悩ませます。特に創業初期の経営者は事業を成長させたい一心でその重要性を十分に理解しないまま安易に外部の投資家や協力者に株式を渡してしまうことがあります。
しかし結論から言います。株式保有率とは単なる利益の分配率ではありません。それは会社の将来を決定する経営の「支配権」そのものです。
日本の会社法では株主が持つ議決権(株式)の比率によって会社の意思決定に対する影響力が明確に定められています。特に「3分の1」「過半数(2分の1)」「3分の2」という3つの基準は会社の支配権を維持する上で絶対に理解しておかなければならない極めて重要な境界線です。この記事ではそれぞれの比率が持つ具体的な権利と意味を解説します。
第1章:議決権とは何か?- 「1株1議決権」の原則
まず基本となるのが「議決権」の考え方です。株式会社において会社の基本的な方針や重要事項を決定する最高の意思決定機関は「株主総会」です。そして株主は原則として保有する株式1株につき1つの議決権を持ち株主総会の決議に参加します。
つまり会社の意思決定は株主の頭数ではなく保有する議決権の多数決によって行われます。そしてその決議には議案の重要度に応じて主に「普通決議」と「特別決議」の2種類があります。
第2章:経営の基本を支配する「過半数(1/2超)」の壁
議決権の過半数(50%超)を保有する株主は「普通決議」を単独で可決することができます。普通決議は会社の基本的な運営に関する多くの重要事項を決定します。
過半数の議決権で決定できること(普通決議)
- 取締役・監査役の選任および解任:会社の経営を行う取締役を自分の意向で選びまた解任することができます。つまり経営陣を事実上完全にコントロールできます。
- 役員報酬の決定:取締役の報酬額を決定できます。
- 剰余金の配当:会社が生み出した利益を株主に配当するかどうかそしていくら配当するかを決定できます。
- 計算書類の承認:決算を承認し会社の財産状況を確定させます。
経営上の意味
議決権の過半数を保有するということは会社の日常的な経営権を完全に掌握している状態を意味します。創業者社長が安定した経営を続けるためにはこの過半数を維持することが最低限の絶対条件となります。
第3章:会社の重要事項を「拒否」する「3分の1超」の壁
議決権の3分の1超を保有する株主は単独では何も決定できません。しかし会社にとってより重要度が高い意思決定である「特別決議」を単独で「否決」し阻止することができます。これは極めて強力な「拒否権」として機能します。
特別決議は議決権の過半数を持つ株主が出席しその議決権の3分の2以上の賛成がなければ可決できません。つまり逆に言えば3分の1を超える反対があればその議案を否決できるのです。
3分の1超の議決権で阻止できること(特別決議)
- 定款の変更:会社の根本規則である定款の変更を阻止できます。
- 第三者割当増資:特定の第三者に新株を発行することを阻止できます。これを認めると自分の知らないうちに持株比率が低下(希薄化)させられる危険があります。
- 事業譲渡:会社の重要な事業を他社に売却することを阻止できます。
- 合併会社分割株式交換:他社との組織再編行為を阻止できます。
- 会社の解散:会社そのものを解散させる決定を阻止できます。
経営上の意味
たとえ過半数を失ったとしても3分の1超の株式を維持していれば創業者は自分の知らないうちに会社を根本的に変えられたり会社そのものを乗っ取られたりあるいは売却されたりすることを防ぐことができます。これは経営権を守る上での最後の防衛ラインです。
第4章:全てを支配する「2/3以上」の壁
議決権の3分の2以上を保有する株主は株主総会におけるほぼ全ての意思決定を自分一人の意向で自由に行うことができます。普通決議はもちろん特別決議さえも他の株主の賛成を一切必要とせずに単独で可決できます。
3分の2以上の議決権で決定できること
- 前述した普通決議で決定できる全ての事項。
- 前述した特別決議で決定できる全ての事項(定款変更事業譲渡会社の解散など)。
経営上の意味
議決権の3分の2以上を保有するということは会社の運命を完全にそして絶対的に自分一人でコントロールできる状態を意味します。これは創業者にとって最も安定した支配権の形です。
第5章:その他の少数株主権
上記の3つの基準以外にも会社法では少数株主を保護するための権利が定められています。
- 3%以上:株主総会の招集を請求する権利や会社の会計帳簿を閲覧・謄写する権利。
- 1%以上:株主総会で議題を提案する権利(株主提案権)。
よくある質問
Q: 共同創業者が2人の場合株式比率は50%ずつで良いですか?
A: 避けるべきです。50%対50%の場合意見が対立した際にどちらも普通決議を可決できず経営が完全に停滞(デッドロック)するリスクがあります。51%対49%など必ずどちらかが最終的な意思決定権を持つ形にすべきです。
Q: ベンチャーキャピタル(VC)はどのくらいの比率を求めてきますか?
A: 会社の評価額や調達額によりますが一般的に1回のラウンドで10%〜25%程度の株式を求めることが多いです。複数回の資金調達を行うと創業者の持株比率が過半数を下回ることも珍しくありません。
Q: 種類株式(議決権制限株式など)を使うとどうなりますか?
A: 議決権のない株式(あるいは議決権の内容が異なる株式)を発行することで外部から資金調達をしつつも経営者の議決権比率を維持するといった戦略が可能になります。これは高度な資本政策の一つです。
Q: 経営権を守るために最低でも何%の株式を維持すべきですか?
A: 状況によりますが絶対的な基準は特別決議の拒否権を維持できる**「3分の1超」**です。これを下回ると会社の根幹を揺るがす決定を自分の意思と関係なく進められてしまうリスクが生じます。理想は普通決議をコントロールできる「過半数超」です。
筆者について
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