買うと答えた人の割合を購入率に置き換えない
新商品のアンケートで、回答者の40%が購入するつもりだと答えました。見込み客が1,000人なら400人が買うとして、生産量を決めてよいのでしょうか。
購入意向は販売を予測する材料になりますが、回答の割合をそのまま購入率として使うには根拠が足りません。購入意向は、将来買うつもりがあるかを尋ねた回答です。実際の購入と関連はあっても、両者の関係は商品や質問方法によって変わります。(購入意向と実際の購入の関係を調べた研究)
売上へ換算するには、同じ質問に答えた人が、その後どれだけ購入したかという情報が役立ちます。回答時には購入を予定していなかった人の購入も含めて考えます。
購入意向と購入実績の関係は商品と質問によって変わる
Morwitzらの2007年の論文は、企業と学術研究のデータを集めたメタ分析と、別の60件の製品テストを通じて、購入意向と購入実績の関連を調べました。結果として、次のような違いが報告されています。(2007年の研究の方法と結果)
| 比較した内容 | 購入意向と購入実績の関連がより高かった側 |
|---|
| 既存商品と新商品 | 既存商品 |
| 質問から購入を測る時点への期間 | 短い期間 |
| 商品分類についての質問と具体的なブランドや型番についての質問 | 具体的なブランドや型番 |
これは、異なる商品や調査方法による関連の違いです。自社の質問を具体的に変えるだけで、売上予測の誤差が一定量減ると示した実験としては読めません。
また、関連が高いことと、回答の割合が実際の購入率と一致することも異なります。買うつもりだと答えた人ほど購入する傾向があっても、その全員が購入するとは限らないためです。
回答後に予定や購入できる状況が変わる
回答時点の予定と、購入時点の行動には時間の隔たりがあります。SunとMorwitzの2010年の研究は、回答に含まれる系統的な偏り、時間の経過に伴う意向の変化、意向と購入の不完全な対応を考慮する予測モデルを提案しています。(購入意向と購入行動を結ぶモデル)
たとえば、講座の受講を予定していても、募集が始まったときには開催日時が仕事と重なるかもしれません。反対に、アンケートでは購入を予定していなかった人が、その後に学ぶ必要を感じて申し込むことも考えられます。これは、回答と購入が異なる理由を考えるための例です。
この違いを調べる実務上の方法として、販売する講座、料金、開催日時を示した質問と、その後の申込みを照合することを提案します。単に興味があるかという質問と、提示した講座に申し込むつもりがあるかという質問では、答えが表す内容が違います。
購入意向40%でも実際の購入率は15%になる例
以下は、人数と購入実績を仮定した計算例です。
同じ講座の料金と開催日時を示して200人に質問し、80人が申し込むつもりがあると回答したとします。その200人全員について、同じ講座の募集開始後30日間の有料申込みを追えたとします。一人が複数回手続きしても、購入者数には1人と数えます。
| 回答時点の購入意向 | 回答者数 | 30日間に購入した人数 | 各回答群の購入率 |
|---|
| 申し込むつもりがある | 80人 | 20人 | 25% |
| 申し込むつもりはない | 120人 | 10人 | 約8.3% |
| 合計 | 200人 | 30人 | 15% |
購入意向のある人は80 ÷ 200で 40% でしたが、購入した人は30 ÷ 200で 15% です。購入意向のある人の方が購入率は高く、回答には予測の材料になる違いがあります。それでも、40%をそのまま購入率にすると実績とずれます。
購入者数30人の内訳は、購入意向のあった80人のうち20人と、購入意向のなかった120人のうち10人です。購入意向のある人だけを数えると、後者の購入も計算から漏れます。
ただし、この200人の結果だけでは、市場全体の購入率を15%と決められません。たとえば、既存顧客だけが回答していたら、商品を初めて知る人にも同じ率を当てはめる根拠は不足します。
次の販売予測には過去の対応関係を仮説として使う
購入意向から売上を予測するなら、過去に同じ質問をした人の購入実績を使い、次の販売にも当てはまるかを確かめます。上の例なら、購入意向のある人の25%と、ない人の約8.3%が購入したという対応関係が材料です。
次回の回答者数が分かれば、各回答群の人数に過去の購入率を掛け、購入者数を合計する計算はできます。ただし、料金、開催日時、集客先が変われば購入率も変わるため、この計算は過去の関係が続くと仮定した見込みです。実際の申込みと比較して、見込みを修正します。
さらに、購入者数から売上を求めるには購入金額も必要です。同じ人数が買っても、選ぶプランや購入回数が違えば売上は変わります。アンケートの好反応だけで生産量や販売予算を決める前に、何を、いくらで、いつ購入した記録があるかを確かめてください。
講座やサービスの案内ページにも、調査で示した料金や日程を具体的に載せると、購入時に何が提示されていたかを把握する材料になります。
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