想定読者
- 商談の最後で「検討します」と言われ、失注することが多いスモールビジネスオーナーや営業担当者
- 押し売りのような強引なクロージングが苦手で、スマートに成約に繋げる方法を知りたい方
- お客様の「あと一歩」を後押しする、具体的な言葉やテクニックを学びたい経営者
結論:「検討します」が生まれるのは、“不安”が解消されていない証拠である
結論から申し上げます。お客様が「検討します」と言うのは、あなたの提案に興味がないからではありません。提案内容は良いと思っている。しかし、契約に踏み切るには、まだ何らかの“不安”や“疑問”が心の中に残っているからです。
その不安を放置したまま「分かりました。良いお返事をお待ちしております」と引き下がってしまうから、結局、連絡が来なくなるのです。
この記事では、お客様の口から「検討します」という言葉が出るのを防ぎ、その場で不安を解消して“YES”を引き出すための、心理学に基づいたクロージングの技術を徹底的に解説していきます。
第1章: なぜ、お客様は「検討します」と言うのか?その裏に隠された3つの本音
「検討します」という言葉を、額面通りに受け取ってはいけません。その言葉の裏には、お客様の様々な本音が隠されています。まずは、その心理を理解することから始めましょう。
本音1:「価格や内容に、まだ納得できていない」(不満)
最も多いのがこのパターンです。提案内容のどこかに、まだ腑に落ちない点や、価格に対する割高感を感じています。しかし、面と向かって「高いですね」「その機能はいらないです」とは言いにくいため、「検討します」という便利な言葉で、その場をやり過ごそうとしているのです。
この場合、「何をご検討されますか?」とストレートに聞いても、相手は本音を語ってくれません。相手が言い出しやすい雰囲気を作り、不満点を引き出す工夫が必要です。
本音2:「失敗したくない、損をしたくない」(不安)
人は、何か新しいことを始める時、「本当にこれで大丈夫だろうか」「もっと良い選択肢があるのではないか」「失敗して損をしたくない」という現状維持バイアスや損失回避性が強く働きます。
あなたの提案が魅力的であればあるほど、「もし契約して、期待通りの結果が出なかったら…」という不安も大きくなります。この「失敗するかもしれない」というリスクへの恐怖が、即決を妨げているのです。この不安を解消し、安心感を与えることがクロージングの鍵となります。
本音3:「自分一人では決められない」(権限)
特にBtoBの商談で多いのがこのケースです。目の前の担当者は乗り気でも、最終的な決裁権は上司や他の部署が持っているため、その場では決められない、という物理的な理由です。
この場合は、無理にその場で契約を迫るのではなく、決裁者を巻き込むための次のアクションを、その場で具体的に決めることが重要になります。「では、〇〇部長様にご説明するための資料を、来週までにご用意しますので、再度お時間をいただけませんか?」といった提案です。
第2章: 「検討します」を言わせない、商談中の“伏線”の張り方
優れたクロージングは、商談の最後の5分で行われるのではありません。最初の挨拶から、最後の提案までの全てのプロセスが、スムーズな“YES”を引き出すための伏線となっています。
伏線1:小さな“YES”を積み重ねる(一貫性の原理)
人は、一度同意したことに対しては、その後も一貫した態度を取り続けたい、という心理が働きます。これを一貫性の原理と呼びます。
商談の序盤から中盤にかけて、意識的に「YES」と答えられる小さな質問を投げかけましょう。
- 「現在、〇〇という点でお困り、という認識でよろしいでしょうか?」
- 「この課題が解決されたら、御社のビジネスにとって大きなメリットになりますよね?」
- 「この機能があれば、〇〇様の手間が大幅に削減できると思いませんか?」
このように、小さな「YES」を積み重ねておくことで、最後の大きな「YES(契約)」への心理的なハードルを、自然と下げることができるのです。
伏線2:未来の“成功イメージ”を共有する(感情への訴求)
人は、スペックや機能といった論理(ロジック)だけでは、最終的な決断を下せません。心を動かすのは、その商品やサービスを手に入れた後に得られる明るい未来のイメージ、つまり感情(エモーション)です。
「このシステムを導入すれば、〇〇様は面倒な事務作業から解放され、本来のクリエイティブな仕事にもっと集中できるようになりますよ。」
「このサービスを使えば、お客様から『ありがとう』と言われる機会が、今よりもっと増えるはずです。」
このように、相手が成功している未来の姿を、具体的に、そして感情豊かに語りかけることで、「そうなりたい!」という強い動機付けを与えることができます。
伏線3:懸念点を先に“潰して”おく(不安の先取り)
商談を進める中で、「お客様は、おそらくこの点を懸念されるだろうな」というポイントがいくつか見えてくるはずです。例えば、価格、導入の手間、アフターサポートなどです。
クロージングの段階で相手から指摘される前に、こちらから先回りして、その懸念点と解決策を提示してしまいましょう。
「多くのお客様が、導入時の設定が大変ではないかとご心配されるのですが、弊社では専門スタッフがすべて代行しますので、ご安心ください。」
このように、不安要素を先に潰しておくことで、相手は「検討します」と言うための“言い訳”を失い、安心して契約に進むことができるのです。
第3章: 最後の“あと一歩”を後押しする、クロージングの心理テクニック
商談の最終局面。ここで「いかがでしょうか?」と漠然と問いかけるだけでは、相手に「検討します」という逃げ道を与えてしまいます。ここでは、相手の背中をそっと押すための、具体的なクロージング話法を紹介します。
テクニック1:二者択一法(選択肢の提示)
「契約しますか?しませんか?」と迫るのではなく、「どちらのプランにしますか?」と、契約することが前提の選択肢を提示するテクニックです。
「プランAとプランBがございますが、〇〇様のご状況ですと、まずはコストを抑えられるプランAから始められるのがよろしいかと存じますが、いかがでしょうか?」
このように、相手は「やるか、やらないか」ではなく、「どちらを選ぶか」という思考に切り替わるため、自然な形で契約へと誘導することができます。
テクニック2:仮定質問法(未来への誘導)
「もし、仮にご契約いただけるとしたら…」と、仮定の話として、契約後の具体的なステップについて質問するテクニックです。
「もし、ご契約いただけるとしたら、最初のキックオフミーティングは、来週と再来週、どちらがご都合よろしいですか?」
この質問に相手が答える時、その頭の中では、無意識に契約後のシミュレーションが始まっています。これにより、契約への心理的な壁が取り払われ、「もう契約した気でいる」状態を作り出すことができます。
テクニック3:限定条件法(希少性の演出)
「今、ここで決断すること」に特別なメリットがあることを伝え、先延ばしにするデメリットを意識させるテクニックです。
「本日ご契約いただけるようでしたら、特典として初期設定費用を無料にさせていただきます。」
「この価格でご提供できるのは、今月お申し込みの3社様限定となっております。」
ただし、この方法は嘘や過度な煽りに聞こえると、一気に信頼を失う諸刃の剣です。本当に提供できるメリットがある場合にのみ、誠実に使いましょう。
第4章: それでも「検討します」と言われた後の、逆転の一手
どんなに完璧な準備とクロージングをしても、「検討します」と言われてしまうことはあります。しかし、ここで諦めてはいけません。この言葉が出た後こそ、あなたの真価が問われる場面です。
「ありがとうございます。ちなみに…」で、課題を特定する
「検討します」と言われたら、まず「ありがとうございます。前向きにご検討いただけるとのこと、嬉しく思います」と、一度ポジティブに受け止めます。その上で、「ちなみに」というクッション言葉を使い、検討の“中身”を特定する質問を投げかけます。
「ちなみに、もし差し支えなければ、どのような点を一番ご検討されたいとお考えですか?価格の面でしょうか、それとも機能の面でしょうか?」
この質問により、相手が抱えている最後の“不安”が、「価格」なのか「機能」なのか「納期」なのか、そのボトルネックを特定することができます。
ボトルネックを、その場で解消する
ボトルネックが特定できたら、その場で解消するための追加提案を行います。
- 価格がネックなら: 「もし、ご予算が合わないようでしたら、〇〇の機能を外して、月額費用を抑えたプランもご提案できますが、いかがでしょうか?」
- 機能がネックなら: 「その点をご心配されるのは、ごもっともです。実は、同じ懸念をお持ちだったA社様の導入事例がございますので、今ご覧いただけますか?」
- 決裁者がネックなら: 「承知いたしました。では、〇〇様が上司の方にご説明しやすいように、ポイントをまとめた1枚の資料を、明日までにお送りします。」
このように、相手の「検討」という名の宿題を、その場で一緒に片付けてあげる姿勢が、逆転のチャンスを生み出します。
必ず「次のアクション」を決めて終わる
そして最も重要なのが、「良いお返事をお待ちしております」という言葉で、商談を絶対に終わらせないことです。これでは、主導権を完全に相手に渡してしまいます。
必ず、こちらから次の具体的なアクションと日時を提案しましょう。
「ありがとうございます。それでは、本日ご説明した内容を踏まえ、来週の水曜日の午前中あたりに、改めてお電話させていただいてもよろしいでしょうか?」
こうすることで、ボールはこちらが持ったまま、商談の続きをコントロールすることができます。「検討します」という曖昧な言葉を、具体的な「次の約束」に変換すること。これが、クロージングの最終段階で最も重要な技術なのです。
よくある質問
Q: 強引なクロージングだと思われないか心配です。
A: 大丈夫です。この記事で紹介した方法は、相手を追い詰めるものではなく、むしろ相手の「決断できない不安」を取り除き、前に進む手助けをするためのものです。「いかがでしょうか?」と漠然と聞くほうが、むしろ相手に「断りにくいな…」というストレスを与えてしまいます。選択肢を提示し、次のステップを明確にすることこそが、誠実な対応と言えます。
Q: お客様が明らかに乗り気でない場合も、クロージングすべきですか?
A: いいえ、その必要はありません。商談中に、お客様の課題とこちらの提案が、明らかにマッチしていないと感じた場合は、無理にクロージングに進むのではなく、「今回は、弊社のサービスではご期待に沿えないかもしれません」と、こちらから引く勇気も必要です。それが、長期的な信頼関係に繋がります。
Q: メールやオンラインでの商談でも、これらのテクニックは有効ですか?
A: はい、有効です。特にオンラインでは、相手の表情や空気が読みにくいため、「小さなYESを積み重ねる」ことや、「次のアクションを明確にする」といった、言語化されたコミュニケーションがより一層重要になります。仮定質問法なども、チャットでさりげなく使うことで効果を発揮します。
Q: BtoBで、決裁権のない担当者に「検討します」と言われたら、どうすればいいですか?
A: その担当者を「味方」につけ、一緒に決裁者を説得するための「戦友」になる、というスタンスが重要です。「〇〇様が、上司の方を説得する上で、何か懸念されている点はございますか?」「どのようなデータがあれば、ご説明しやすいですか?」と問いかけ、社内稟議を通すためのサポートを申し出ましょう。
Q: 一度「検討します」で持ち帰られた案件が、復活する可能性はありますか?
A: 可能性は低いですが、ゼロではありません。重要なのは、ただ待つのではなく、「次のアクション」として約束した日時に、必ずこちらから連絡することです。「その後、ご検討状況はいかがでしょうか。先日お話しした懸念点について、補足の資料をお送りします」といった形で、忘れられる前にもう一度アプローチすることが、最後のチャンスを掴む鍵になります。
筆者について
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