想定読者

  • 自分の商品やサービスの専門性が高いがゆえに、顧客への説明が難しく、価値が伝わらないと感じているスモールビジネスオーナー
  • IT、士業、コンサルタント、整体師など、専門用語を日常的に使う職種の方
  • プレゼンやホームページの文章で、「結局、何がいいの?」と顧客に思わせてしまっている方

結論:専門家にとっての“当たり前”は、顧客にとっての“外国語”である

結論から申し上げます。あなたのサービスが売れないのは、品質が悪いからでも、価格が高いからでもありません。単に、その価値が、顧客に伝わる言葉で語られていないだけかもしれないのです。

あなたが毎日使っている専門用語は、あなたにとっては“当たり前”の日常会話でも、お客様からすれば、意味の分からない“外国語”を聞かされているのと同じです。

この記事では、専門家が陥りがちな「知識の呪い」から抜け出し、誰にでも価値が伝わる、シンプルで力強い説明の技術を徹底的に解説していきます。

第1章: なぜ、あなたの説明は“伝わらない”のか?

良かれと思って詳しく説明しているのに、相手の顔はどんどん曇っていく。そんな経験はありませんか?まずは、その根本原因である、専門家特有の3つの「罠」について理解しましょう。

罠1:「知識の呪い」にかかっている

「知識の呪い」とは、一度何かを知ってしまうと、それを知らなかった頃の自分がどういう状態だったかを想像できなくなってしまう、という認知バイアスです。

あなたは、自分の業界の常識や専門用語を、お客様もある程度は知っているはずだと、無意識に思い込んでしまっています。そのため、「こんなことまで説明しなくても分かるだろう」と、重要な前提知識を省略してしまい、話の全体像が伝わらなくなってしまうのです。

罠2:「WHAT(何)」ばかりを語り、「WHY(なぜ)」「HOW(どうなる)」が抜けている

あなたの説明は、「私たちのサービスは、〇〇という技術を使い、△△という機能があります(WHAT)」という、スペックや機能の話に終始していませんか?

しかし、お客様が本当に知りたいのは、スペックではありません。

  • 「WHY」: なぜ、自分にそのサービスが必要なのか?
  • 「HOW」: そのサービスを使ったら、自分の悩みはどう解決され、どんな良い未来が待っているのか?

この2つの問いに答えない限り、どんなに優れた技術の説明も、お客様の心には響きません。

罠3:相手への「配慮」のつもりが、逆に「見下し」になっている

「難しい言葉を使うと、賢そうに見える」「専門家として、正確な言葉を使わなければ」。
このような思いから、あえて難しい言葉を選んでいませんか?これは、一見プロフェッショナルな態度に見えますが、相手の知識レベルを試すような行為になりかねません。

お客様は、「なんだか小難しくて、馬鹿にされているようだ」と感じ、心を閉ざしてしまいます。本当のプロフェッショナルとは、難しいことを難しく語る人ではなく、難しいことを、誰にでも分かるように語れる人なのです。

第2章: 小学生でも分かる「翻訳」の3ステップ

専門的な内容をやさしく伝えるとは、単に言葉を易しくするだけではありません。相手の頭の中に、スムーズに情報が流れ込むように、「翻訳」するプロセスが必要です。

ステップ1:まず「専門用語」をすべて書き出す

最初に、あなたが普段、無意識に使っている専門用語や業界用語を、一度すべて紙に書き出してみてください。

  • 例(Webデザイナーなら): SEO、レスポンシブ、SSL、ドメイン、サーバー、UI/UX…
  • 例(整体師なら): 骨盤の歪み、筋膜リリース、自律神経、アライメント…

この作業をすることで、自分がどれだけ「外国語」を話していたかを客観的に認識することができます。これが、翻訳の第一歩です。

ステップ2:「一言で言うと、〇〇です」で本質を掴む

書き出した専門用語の一つひとつについて、「これを、一言で言うと何だろう?」と考えてみましょう。この訓練は、物事の本質を捉える力を養います。

  • SEOとは? → 一言で言うと、Google検索で、あなたのホームページを上位に表示させる技術です。
  • 筋膜リリースとは? → 一言で言うと、筋肉を包んでいる“全身タイツ”のような膜をほぐして、体の動きをスムーズにすることです。

このように、まず結論となる本質をシンプルに伝えることで、相手は話の全体像を掴みやすくなります。

ステップ3:「たとえ話」と「身近な事例」に置き換える

一言で本質を伝えたら、次にお客様が日常で体験するような、身近な「たとえ話」や「事例」に置き換えて、具体的に説明します。

  • サーバーの説明: 「ホームページがお家だとしたら、サーバーは、そのお家を建てるための土地のようなものです。土地がないと、お家は建てられませんよね?」
  • 骨盤の歪みの説明: 「家の土台が傾いていると、柱や壁に負担がかかって、家全体がギシギシしますよね。骨盤は、まさに体の土台。ここが歪むと、腰や肩に痛みが出てくるんです。」

この「たとえ話」こそが、専門家とお客様の間に架かる、最も強力な橋となります。

第3章: 顧客の心を掴む「伝え方」のフレームワーク

説明の内容を「翻訳」したら、次はそれをどのような順番で伝えるか、という構成が重要になります。ここでは、すぐに使える2つのフレームワークを紹介します。

フレームワーク1:PASONAの法則(読み手の感情を動かす)

PASONAの法則は、特に文章やプレゼンで、読み手の感情に訴えかけ、行動を促すための強力なストーリー構成の型です。

  1. Problem(問題): まず、相手が抱えている問題を具体的に提示し、「これは、私のことだ」と自分事化させます。(例:「ホームページからのお問い合わせが、月に1件もなくてお困りではありませんか?」)
  2. Affinity(親近): その問題に対して、「私も昔はそうでした」「多くの方が同じことで悩んでいます」と、共感と親近感を示します。
  3. Solution(解決策): 問題の根本原因を明らかにし、その具体的な解決策を提示します。ここで初めて、あなたのサービスが登場します。
  4. Offer(提案): サービス内容、価格、特典など、具体的な提案を行います。
  5. Narrow down(絞り込み): 「〇名様限定」「今月限り」といった限定性を伝え、決断を後押しします。
  6. Action(行動): 最後に、「まずはこちらから、お気軽にご相談ください」と、相手が次に取るべき行動を明確に示します。

フレームワーク2:PREP法(論理的で分かりやすい)

PREP法は、特に短い時間で、結論を分かりやすく論理的に伝えたい場合に有効な型です。

  1. Point(結論): まず、話の結論、一番伝えたいことを最初に言います。(例:「結論から言うと、あなたの説明は専門用語が多すぎるのかもしれません」)
  2. Reason(理由): なぜ、その結論に至ったのか、その理由を説明します。(例:「なぜなら、お客様は専門家が思うほど、業界の知識を持っていないからです」)
  3. Example(具体例): 理由を裏付けるための、具体的な事例やデータを提示します。(例:「例えば、先日のお客様は、〇〇という言葉の意味が分からず、話についていけなかったと仰っていました」)
  4. Point(結論を繰り返す): 最後に、もう一度結論を繰り返し、話を締めくくります。(例:「ですから、小学生にでも分かるような言葉で説明することが、何より重要なのです」)

第4章:「伝わる」ことは、信頼の第一歩である

専門的な内容を分かりやすく伝える技術は、単なるコミュニケーションテクニックではありません。それは、あなたのビジネスのあり方そのものを示す、重要な姿勢なのです。

分かりやすい説明は、最高の「顧客サービス」

お客様は、貴重な時間とお金を使って、あなたの話を聞きに来ています。そのお客様に対して、分かりにくい専門用語で煙に巻き、理解するための努力を強いるのは、非常に不親切な行為です。

逆に、相手の知識レベルに合わせて、言葉を選び、丁寧に説明する姿勢は、「この人は、自分のことをちゃんと考えてくれている」という安心感と信頼感に繋がります。分かりやすい説明は、それ自体が最高の顧客サービスなのです。

「教えてあげる」ではなく「一緒に考える」スタンス

専門家は、つい「私が知らないことを、教えてあげよう」という、上から目線のスタンスに陥りがちです。しかし、本来あるべき姿は、お客様と同じ目線に立ち、専門家として、その課題解決を一緒に考えるパートナーであるはずです。

「専門的なことは私にお任せください。〇〇様は、どんな未来を実現したいかだけを、教えてください。」

このスタンスで接することで、お客様は安心して本音を話してくれるようになり、より深い信頼関係を築くことができます。

価値が伝われば、価格は問題ではなくなる

最終的に、お客様が契約を決めるのは、そのサービスが支払う価格以上の価値があると確信できた時です。そして、その価値は、伝わらなければ存在しないのと同じです。

どんなに素晴らしい技術や知識も、分かりやすい言葉に翻訳し、お客様のメリットとして伝えられて初めて、その輝きを放ちます。価値が正しく伝われば、お客様は価格に納得し、「あなたにお願いしたい」と言ってくれるようになります。専門用語の壁を乗り越えることこそが、価格競争から脱却するための、最も確実な一歩なのです。

よくある質問

Q: どこまで言葉を噛み砕けばいいのか、レベル感が分かりません。

A: 基準は「中学生の時に、自分はこの話を聞いて理解できただろうか?」と考えてみることです。「小学生でも分かる」というのは一つの比喩ですが、専門知識が全くない人を想定するのが基本です。相手の反応を見ながら、少し専門的な言葉を混ぜてみるなど、会話の中でレベル感を調整していくのが良いでしょう。

Q: 専門用語を使わないと、プロとして軽く見られないか心配です。

A: 逆です。本当に自信のあるプロフェッショナルほど、難しいことをやさしい言葉で説明できます。専門用語を並べて権威性を示そうとするのは、むしろ自信のなさの表れと見なされることもあります。最初に分かりやすく全体像を伝え、お客様から質問された時に、初めて専門的な詳細を解説する、という順序が理想的です。

Q: たとえ話が、うまく思いつきません。何かコツはありますか?

A: コツは、お客様の日常生活や、身近な持ち物に結びつけて考えることです。例えば、ITの話なら「家」「車」「料理」などに例える、体の話なら「建物」「機械」などに例える、といった具合です。日頃から「これは、何かに例えられないか?」と考えるクセをつけると、たとえ話の引き出しはどんどん増えていきます。

Q: BtoB(法人向け)の商談でも、説明は噛み砕くべきですか?

A: はい、基本的には同じです。相手が同業者でない限り、たとえ企業の担当者であっても、あなたの専門分野については素人である可能性が高いです。特に、最初の担当者から、その上司(決裁者)に話が伝わる過程で、情報が正しく伝わらないケースは非常に多いです。誰が聞いても分かるように説明しておくことが、社内での稟議をスムーズに進める手助けにもなります。

Q: ホームページに専門用語を載せるのは、SEO的に良いと聞きましたが…

A: それは事実の一面です。専門的なキーワードは、検索順位に影響を与えることがあります。しかし、そのキーワードをクリックして訪れたお客様が、内容を理解できずにすぐに離脱してしまっては、意味がありません。対策としては、専門用語を使いつつも、そのすぐ後に「(これは、一言で言うと〇〇のことです)」といった形で、必ず補足説明を加えるのが良いでしょう。

筆者について

記事を読んでくださりありがとうございました!
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