想定読者
- 顧客単価やLTV(顧客生涯価値)を向上させたい経営者
- アップセルやクロスセルの戦略を強化したい営業・マーケティング担当者
- 顧客の購買行動の裏にある心理を深く理解したいビジネスマン
結論:新しい購入は関連する消費の連鎖を生む
あなたは新しいソファを購入した後、それに合わせてクッションやラグ、サイドテーブルまで次々と買い足してしまった経験はありませんか?
あるいは最新のスマートフォンを手に入れたら、それに合うケースやワイヤレスイヤホン、充電器まで一式揃えたくなったことはないでしょうか?
これらの一つの商品を購入したことがきっかけで、それに調和するあるいは関連する他の商品まで次々と購入したくなる心理現象を「ディドロ効果(Diderot Effect)」と呼びます。
この言葉は18世紀フランスの哲学者ドゥニ・ディドロが、新しい豪華なガウンを手に入れたことで、それまでの家具や調度品がガウンに釣り合わないと感じ次々と買い替えてしまったという自身の経験を綴ったエッセイに由来します。人は新しいものを手に入れるとそれまでの持ち物との間に「不調和」を感じ、その不調和を解消するためにさらなる消費を繰り返してしまうのです。
ビジネスにおいてこのディドロ効果を理解し活用することは顧客単価の向上、リピート購買の促進、そしてブランドの世界観構築において強力な鍵となります。顧客の「統一感を求める心理」を理解しそれを満たす商品やサービスを提供することであなたは売上を最大化できるでしょう。
なぜディドロ効果が消費の連鎖を生むのか
ディドロ効果がこれほどまでに強力な影響力を持つのは人間の根源的な心理に深く根ざしているからです。
- 一貫性の欲求 人は自分の持ち物や環境がある一定のスタイルや品質で統一されていることを好みます。新しい高価なものを手に入れるとそれまでの安価なものとの間に心理的な不調和(認知的不協和)を感じ、その不快感を解消するために他のものも新しい基準に合わせて買い替えたくなります。
- 自己表現とアイデンティティの確立 私たちは持ち物を通じて自分の個性や価値観を表現しようとします。新しい商品が自分の理想とするアイデンティティを象徴するものであれば、それに合わせて他の持ち物もそのアイデンティティに沿ったものに統一したくなります。
- 社会的比較と承認欲求 新しい商品を手に入れたことで自分の社会的地位やライフスタイルが向上したと感じると、それにふさわしい他の持ち物も揃えたいという欲求が生まれます。これは他者からの承認を得たいという心理とも関連します。
ビジネスにおけるディドロ効果の活用法
顧客の「統一感を求める心理」を理解しそれを満たす商品やサービスを提供することで売上を最大化できます。
- 関連商品のバンドル販売(セット販売) 顧客がある商品を購入する際にそれに関連する商品をセットで提案しましょう。例えばカメラ本体だけでなくレンズ、三脚、カメラバッグ、SDカードなどをまとめて購入できるセットを用意する。顧客は個別に購入する手間が省け統一感のある体験を得られるため購入を検討しやすくなります。
- アップセル・クロスセルの強化 顧客がある商品に興味を示したらそれよりも高機能な上位モデル(アップセル)や関連する別商品(クロスセル)を積極的に提案しましょう。例えばスマートフォンの購入者にはワイヤレスイヤホンやスマートウォッチを提案する。顧客の購買意欲が高まっているタイミングで関連商品を提案することで購入に繋がりやすくなります。
- ブランドの世界観を構築する 単一の商品を売るのではなくブランド全体で一貫した世界観やライフスタイルを提案しましょう。例えば北欧家具ブランドであれば家具だけでなく照明、食器、テキスタイルなどブランドの世界観に合った商品を幅広く展開することで顧客はその世界観に共感し次々と関連商品を購入したくなります。
- サブスクリプションモデルの活用 サブスクリプションモデルは顧客をブランドのエコシステムに囲い込む強力な手段です。例えばソフトウェアのサブスクリプションであれば関連するプラグインやテンプレート、サポートサービスなどを提供することで顧客はそのエコシステム内で継続的に消費するようになります。
ディドロ効果の注意点と限界
ディドロ効果は強力ですがその活用には注意点と限界があります。
- 顧客の「不満」を増幅させない もし最初に購入した商品が顧客の期待を裏切るものだった場合、ディドロ効果はネガティブな方向に働きます。顧客はその商品に合わせた他の購入品にも不満を感じブランド全体への不信感を抱く可能性があります。最初の商品の品質と顧客満足度が大前提です。
- 過度な「押し付け」にならないように 顧客の購買意欲を刺激することは重要ですが、過度なアップセルやクロスセルの提案は顧客に「押し付けられている」と感じさせ不快感を与える可能性があります。顧客のニーズや購買履歴に基づいたパーソナルで適切なタイミングでの提案を心がけましょう。
- 顧客の「財布の紐」には限界がある ディドロ効果は無限に消費を促すものではありません。顧客の予算や購買能力には限界があります。無理な消費を促すと顧客は後悔や罪悪感を抱きブランドから離れてしまう可能性があります。顧客の経済状況を考慮した現実的な提案が重要です。
よくある質問
Q: ディドロ効果は、すべての商品に適用できますか?
A: はい基本的にすべての商品に適用可能です。ただしその効果の大きさは商品の種類や顧客のライフスタイルへの影響度によって異なります。例えばファッションやインテリア、ガジェットなど自己表現やライフスタイルに直結する商品ほど効果は大きくなります。
Q: 顧客が、関連商品を「ついで買い」してくれるのは、なぜですか?
A: 顧客は新しい商品を手に入れたことでその商品が自分の生活によりフィットするように他の関連商品も揃えたいという欲求を抱きます。また個別に探す手間や時間的なコストを省きたいという心理も働きます。販売側が関連商品を分かりやすく提示することで顧客の購買行動をスムーズに促すことができます。
Q: ディドロ効果を、BtoBビジネスで活用できますか?
A: はい非常に有効です。例えば新しいシステムを導入した企業に対してそのシステムと連携する追加モジュールやコンサルティングサービスを提案する。あるいは特定の業界向けのソリューションを導入した顧客にその業界でさらに役立つ関連ツールやトレーニングプログラムを提案するなどが考えられます。顧客のビジネス全体をサポートする視点が重要です。
Q: 顧客が、ディドロ効果によって、後悔しないようにするには?
A: 顧客が購入した商品群全体に満足できるよう最初の商品の品質を徹底的に高めることが重要です。また関連商品の提案時にはその商品が顧客の生活やビジネスにどのような価値をもたらすのかを具体的に説明し顧客自身が納得して購入できるようサポートしましょう。購入後のフォローアップで商品の活用方法を提案することも有効です。
筆者について
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