想定読者

  • メール返信や簡単な書類整理など、細々としたタスクをつい後回しにしてしまう方
  • 「読書」「勉強」「運動」など、新しい習慣を始めたいのに、なぜか最初の一歩が踏み出せない方
  • 「あとでやろう」という思考のクセを断ち切り、すぐ動ける自分になりたいすべての人

結論:行動できない理由は「難易度」ではない。「着手までの抵抗感」である。

面倒な仕事や、新しい挑戦を前にした時、私たちの足を止める最大の敵は、その仕事の「難易度」や「量」そのものではありません。本当の敵は、「さあ、始めるぞ」と腰を上げるまでの、ほんのわずかな心理的抵抗です。今回紹介する「2分ルール」は、この「着手への抵抗感」を限りなくゼロに近づけ、脳をだまして行動の勢いを生み出すための、最もシンプルで、最も普遍的な技術。このルールを理解すれば、あなたはもう「やる気」という曖昧な感情に振り回されることはなくなるでしょう。

あなたの頭を悩ます「小さなタスク」という名の妖怪

「〇〇さんにメールを返す」「経費を申請する」「デスクの上の書類を片付ける」。一つ一つは数分で終わるはずの、こうした小さなタスク。しかし、あなたは「あとでまとめてやろう」と、つい後回しにしていないでしょうか。

この「あとでやろう」が、実は非常に厄介な妖怪なのです。片付けられなかった小さなタスクは、あなたの頭の片隅に「やらなきゃいけないこと」として居座り続けます。この無数の「未完了タスク」が、あなたの脳のワーキングメモリ(作業台の広さ)を静かに、しかし確実に圧迫し、本当に集中すべき重要な仕事へのパフォーマンスを低下させているのです。あなたの頭がスッキリしないのは、この小さな妖怪たちのせいかもしれません。

2分ルールの魔法 その1:「見つけたら、すぐやる」

この小さな妖怪たちを退治する魔法が、生産性向上のバイブル『Getting Things Done』(GTD)の著者、デビッド・アレンが提唱した、一つ目の「2分ルール」です。そのルールは、あまりにもシンプルです。

「そのタスクが2分以内で完了するなら、今すぐやれ」

例えば、メールを開いた時。「このメールへの返信は、2分で終わるか?」と自問します。答えが「Yes」なら、後回しにせず、その場で書いて送信する。答えが「No」なら、後でじっくり時間をとって対応するタスクとして、きちんと管理する。たったこれだけです。

このルールを徹底すると、あなたの頭の中の「気になることリスト」は、驚くほどスッキリします。後でやるためにタスク管理ツールに登録する手間や、再度そのタスクを思い出して内容を把握し直す手間を考えれば、その場で片付けてしまう方が、遥かに効率的なのです。

2分ルールの魔法 その2:「最初の2分だけ、やってみる」

そして、もう一つ、さらに強力な「2分ルール」が存在します。これは、新しい習慣を始めたり、気が重い大きなタスクに取り掛かったりする際に、絶大な効果を発揮します。その本質は、行動のハードルを、地面スレスレまで下げることにあります。

例えば、「毎日30分ランニングする」という目標は、考えるだけで気が重くなります。しかし、「毎日、ランニングウェアに着替える」という目標ならどうでしょう。これなら2分で終わりますし、ほとんど抵抗なく実行できるはずです。これが、二つ目の2分ルールです。

このルールの背景には、行動の勢い(モメンタム)の法則があります。物理学の世界で、静止している物体を動かすには大きなエネルギーが必要ですが、一度動き出せば、あとは小さな力で進み続けることができます。人間の行動もこれと全く同じ。最もエネルギーが必要なのは「最初の一歩」なのです。

「読書を習慣にしたい」なら、目標は「毎日、本を1ページだけ読む」。「部屋を片付けたい」なら、「毎日、目についたゴミを3つだけ拾う」。この「バカバカしいほど簡単な最初の2分」が、腰の重いタスクという巨大な岩を動かすための、最初の「てこ」の役割を果たしてくれるのです。

「2分」を制する者が、人生を制する

この2つの「2分ルール」を、あなたの生活にどう組み込むか、具体的な例を見ていきましょう。

  • メールやチャットの処理 メッセージを開いたら、まず「2分で対応できるか?」と判断します。できるなら即実行。できないなら、後で対応するリストに追加。このシンプルな仕分けが、受信トレイの渋滞を解消します。
  • 新しい習慣の開始 「毎日ギターを練習する」ではなく、「毎日2分だけギターに触る」を目標に設定します。重要なのは、完璧にこなすことではなく、「毎日やる」という鎖を、何があっても途切れさせないことです。2分やってみて、気分が乗ってきたら続ければいい。気が乗らなければ、2分でやめてOK。それでも、あなたは「今日も目標を達成した」のです。
  • 先延ばし癖の克服 最も気が重い仕事、例えば「あの企画書を作成する」というタスクを前にしたら、こう考えます。「最初の2分だけ、関連資料に目を通してみよう」。そして、タイマーを2分セットして、とにかく始めてみる。2分後、あなたは意外と作業に集中している自分に気づくはずです。これが「作業興奮」の力です。

よくある質問

Q: 2分で終わるかどうかの判断に、逆に時間がかかりそうです。

A: 最初はそうかもしれません。しかし、数回繰り返すうちに、その判断は一瞬でできるようになります。迷ったら、「たぶん2分以上かかりそうだな」と考えて、後回しにするタスクとして管理するのが良いでしょう。厳密さより、リズムが重要です。

Q: 2分ルールのせいで、逆に重要な仕事が中断されませんか?

A: 良い指摘です。もしあなたが、深い集中状態(ディープワーク)に入っているのなら、それを中断してまで2分ルールを適用する必要はありません。このルールが最も効果を発揮するのは、仕事の合間や、一日のうちで細々としたタスクを片付けると決めた時間帯です。状況に応じて使い分けましょう。

Q: 2分だけやってやめる、というのが逆に気持ち悪いです。

A: それこそが、このルールの狙いです。中途半端な状態で終わらせると、脳は「早く終わらせたい」という欲求を感じます(ツァイガルニク効果)。その「気持ち悪さ」が、翌日、同じ行動を再開するための強力な動機付けになるのです。

Q: 5秒ルールと2分ルールは、どう使い分ければいいですか?

A: 5秒ルールは、行動を「開始する」ための、いわばエンジンをかけるスイッチです。一方、2分ルールは、その行動を「継続可能にする」ための、具体的な戦略と言えます。「朝起きなきゃ…」と躊躇したら5秒ルールで体を起こし、「運動しなきゃ…」と思ったら2分ルールでウェアに着替える、というように、両者は補完関係にあります。

筆者について

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