商品数だけでは購入への影響は決まらない
商品が多くて選べないという声を受けたとき、販売担当者には二つの対応があります。販売する商品を減らす方法と、商品の違いを判断できる情報を加える方法です。どちらを試すかは、購入者が何に迷っているかによって変わります。
選択肢が増えたことで決定の先送りや満足度の低下などが生じる現象を、選択過多と呼びます。研究では、選択肢を増やした影響は実験によって異なり、比較の複雑さなどがその違いに関係しています。したがって、 商品数と比較に必要な情報 を併せて検討する必要があります。(選択過多の2010年メタ分析、2015年メタ分析)
品ぞろえを削る前に、求める商品が存在しないのか、商品はあるが違いを判断できないのかを調べましょう。この記事では、研究を踏まえ、自社の商品ページで試す変更を考えます。
二つのメタ分析は何を示したのか?
複数の実験結果を統計的に統合する方法を、メタ分析と言います。Scheibehenneらの2010年の論文は、公刊・未公刊の50実験から63の比較を集め、参加者は合計5,036人でした。選択肢を増やした影響の平均はほぼゼロで、実験間には大きなばらつきがありました。平均だけを根拠に、どの売り場でも影響がないとは言えません。(2010年メタ分析)
Chernevらの2015年の論文は、53研究から99の観測結果、合計7,202人を分析しました。選択肢の構成が複雑なこと、判断作業が難しいこと、欲しいものが定まっていないこと、判断の労力を抑える目的があることの四つが、選択過多の程度に関係していました。(2015年メタ分析)
両論文は収録した研究と分析方法が異なります。2010年から2015年にかけて消費者が迷うようになった、という時系列の比較には使えません。また、複数の実験場面を統合した結果であり、日本のECサイトの実際の購入率を測った数値とは区別します。
実務で得られる答えは、数を減らす方法を一律に採用せず、何が判断の負担になっているかを調べることです。両論文から、商品は何点が最適かという共通の数は導けません。
迷う理由と変更内容を対応させる
購入者が比較できない理由を具体化すると、商品削減以外の修正も検討できます。以下は研究の四要因を参考にした実務上の提案です。表の変更による効果は、自社で検証します。
| 迷いが生じる場面 | 試す変更 |
|---|
| 商品ごとに説明項目が違い性能を比較できない | 同じ項目と単位を使った比較表を載せる |
| 予算内の商品を探すために全ページを開く必要がある | 一覧に価格と追加費用を表示する |
| 用途に必要な性能が分からない | 用途と必要な性能の関係を説明する |
| 購入する商品を決める作業と全商品の閲覧が重なる | 用途別の入口を設け全商品一覧へのリンクも残す |
たとえば印刷サービスで、用紙ごとに厚さの説明が異なると、購入者は数値を比較できません。同じ単位で厚さを示し、仕上がりの違いも説明する修正が考えられます。残す商品を決める前に、今ある商品を比較できる状態に変える試行です。
一方、仕様も用途も重複した商品を減らすなら、削除する商品を購入していた人が代わりに何を選べるかを調べます。色、サイズ、対応機器などの違いを持つ商品は、その違いを必要とする人にとって意味があります。売上が少ないという理由だけで削ると、必要な仕様を失うことがあります。
商品を削る変更と表示を変える試行を区別する
一覧で紹介する商品を絞ることと、販売自体を取りやめることでは、購入できる範囲が変わります。 表示する数と販売する数 を区別して、変更内容を記録してください。
商品を残したまま用途別の入口を設ける試行なら、全商品一覧にも到達できる導線を用意します。閲覧者が必要な仕様にたどり着けるかを点検し、見つからなかったという声が増えたら、入口の分類やリンク名を修正します。
販売を取りやめる試行なら、過去の購入履歴と問い合わせにある用途を調べ、代替商品で満たせる仕様を照合します。代替できない用途がある商品は、削減によって失う需要も検討する必要があります。
一覧の簡素化を試す段階で商品の廃止も同時に行うと、比較の負担を減らした効果と品ぞろえを失った影響が重なります。検証する問いを、表示の変更なのか、販売品目の削減なのか明確にしましょう。
購入率の上昇だけで採用を決めない
自社で試す際は、購入した割合に加え、注文金額と利益も評価します。次の数値は計算例です。購入率は、比較ページを訪れた人のうち、決めた集計期間内に1回以上購入した人の割合とします。同じ人の再訪や複数注文を人数へ重複加算しません。
計算例(数値は仮定)
| 指標 | 現行の表示 | 変更した表示 |
|---|
| 比較ページを訪れた人数 | 1,000人 | 1,000人 |
| 購入者数 | 40人 | 50人 |
| 購入率 | 4% | 5% |
| 売上合計 | 400,000円 | 350,000円 |
| 売上から商品原価を引いた額 | 160,000円 | 140,000円 |
購入率は1ポイント上がっていますが、売上と商品原価差引後の額は下がっています。この例では注文に伴う配送費などを含めていないため、事業の採算を決める際には、それらも反映します。購入率だけで変更を採用すると、利益の減少を見落とします。
表の比較だけで原因を特定することもできません。変更の効果を検証する案として、同じ期間の利用者を現行表示と変更表示へ無作為に割り付け、同じ人には同じ表示を保つ設計が考えられます。評価する指標、購入を集計する期間、必要な人数、試行の終了日を事前に決め、偶然のばらつきも評価します。日付の異なる変更前後だけを比べると、広告や季節の変化も結果に含まれます。
商品の違いを伝える情報から試行を始める
商品数を減らす判断には、比較を妨げている情報の不足と、削減によって失う用途の両方が必要です。自社のページで商品ごとの説明項目をそろえ、表示する数を変えるのか販売品目を減らすのかを決めましょう。試行後は、購入率と売上、費用を差し引いた額を使って継続を判断します。
ホームページには、用途、価格、仕様など、商品やサービスを選ぶ理由を掲載します。比較表を変更した日と内容も記録すると、次の試行で何を変えたかを追えます。
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