面接への確信と仕事の成果を予測する精度は異なる
採用面接で会話が弾むと、候補者の人柄や働く姿が分かったと感じることがあります。その手応えを採用の根拠にするには、何の回答から、どの仕事ができると判断したのかを説明できる必要があります。会話に納得したことだけでは、入社後の成果を予測できたことにはなりません。
研究では、自由に質問して全体の印象で評価する面接より、仕事に関する質問と採点基準を事前に決める面接の方が、仕事の成果との関連が大きい結果が報告されています。後者を構造化面接と言います。面接の印象に迷う採用担当者や現場責任者は、候補者のどの能力を測る質問だったのか、採点に使える回答が得られたかを点検してください。(Sackettらの採用研究の再検討)
ランダムな回答でも人物像を理解したと感じた実験
面接で情報を得たという感覚は、回答の正確さと一致するとは限りません。Danaらが2013年に公表した実験では、米国カーネギーメロン大学の学部生76人が、別の学生と20分の面接を行い、学期の成績を予測しました。面接の後半に本人の実際の考えと関係なく回答する群もありましたが、面接が有用だったという評価は、正確に回答する群と有意な差がありませんでした。(Danaらの非構造化面接の実験)
これは学生の成績予測の実験です。採用面接で同じ程度の誤りが生じるとする数値には使えません。一方、人物を理解できたという確信だけでは、得た情報の質を評価できないことが分かります。実験の採取時期は論文に明記されていません。
実務への示唆は、候補者について説明がつくことと、仕事に必要な能力の証拠を得ることを区別する点です。落ち着いて話す候補者から、トラブル対応も得意だと推測したなら、実際に何を判断し、どう対応した経験があるかを聞く必要があります。人物像の説明を、行動の記録へ置き換えて評価します。
構造化面接は仕事の成果との関連が大きかった
面接の有用性は、面接での評価と実際の仕事の成果がどの程度関連するかで検討できます。複数の研究結果を統合する分析を、メタ分析と言います。Sackettらの2022年の研究は、過去のメタ分析で採用手法の予測力を過大に見積もっていた補正方法を再検討しています。新しく一社の採用結果を測った調査ではなく、既存研究の再分析です。
同じ著者らの2023年の論文には、仕事の成果との関連を表す補正済みの平均相関係数が掲載されています。
| 面接の形式 | 仕事の成果との平均相関係数 |
|---|
| 構造化面接 | 0.42 |
| 非構造化面接 | 0.19 |
相関係数は、評価が高い人ほど成果も高い傾向があるかを表す数値です。0.42を採用成功率42%とは解釈せず、二つの係数を割って採用が約2倍成功するとも考えません。職種や面接の設計による研究間のばらつきもあり、平均値をそのまま自社の予測精度にはできません。(Sackettらの2023年論文)
ここから採用実務で検討できるのは、面接を廃止することより、評価方法の変更です。全体の印象だけで候補者を比較しているなら、職務に即した質問と採点基準を準備する理由があります。上の数字は、その変更だけで成果が改善する割合を測った実験結果とは区別してください。
質問をそろえるだけで構造化面接になる?
構造化面接では、同じ職種の候補者に共通の質問をし、回答を共通の基準で評価します。米国人事管理庁のOPMも、質問の順序と回答の評価尺度をそろえる方法を示しています。共通の質問票があっても、評価が話の上手さや面接官の好みに委ねられていれば、どの能力を何点と評価するかが定まりません。(OPMの構造化面接の説明)
仕事の成功場面から質問を作る
質問には、募集する仕事で実際に必要な判断や行動を含めます。OPMは職務の分析に基づき、過去の行動や、仕事に似た状況でどう対応するかを聞く方法を紹介しています。(OPMの質問設計の説明)
たとえば顧客対応の担当者を採用するなら、コミュニケーション能力という言葉だけで評価せず、要求を聞き取り、必要な情報を調べ、回答を決めた経験を聞きます。成果を語ってもらう際は、チーム全体の結果と本人の担当作業を区別してください。売上や件数だけでは、本人が行った判断を評価できません。
同じ回答を何点にするかも事前に決める
以下は、顧客対応の経験を聞く質問についての採点例です。OPMの公式尺度の転載ではなく、質問と評価内容を対応させる設計例です。
| 評価 | 回答に必要な内容 |
|---|
| 根拠が不足 | 問題の説明はあるが、本人の行動や判断理由が不明 |
| 必要な内容がある | 本人が調べた情報、選んだ対応、その理由と結果が具体的 |
| 追加の能力も示す | 上記に加え、結果を検証し、次の対応や業務改善に反映した内容がある |
この尺度が評価するのは、経験の説明に含まれる判断と行動です。言葉の流暢さや面接官との趣味の一致を混ぜると、尺度と評価内容がずれます。説明が足りない部分を聞く追加質問も事前に決め、候補者によって答える機会が大きく変わらない運用にしましょう。
未経験者には、過去の実務経験だけを求めると回答の材料が不足します。仕事に似た状況を提示する質問や、学業などで行った判断を聞く質問を検討し、今回採用する職務で何を評価するかに合わせて設計してください。
面接官が話し合う前に採点する理由
複数人の面接でも、全員が話し合った後に印象を記録するだけでは、誰がどの回答を根拠に判断したかが残りません。OPMの2008年の実務ガイドでは、面接官が各自で回答を記録・評価し、その後に点数と根拠の違いを議論する方法を示しています。米国連邦政府の面接設計を説明する資料です。(OPMの実務ガイド)
自社へ取り入れるなら、評価と根拠となる回答を話し合う前に記録する ことが具体的な変更になります。点数が異なる候補者については、同じ回答を違う基準で評価したのか、聞き取った事実が異なるのかを調べます。点数の平均だけで済ませず、採点基準や記録方法の修正へつなげてください。
入社後の振り返りでは、面接で評価した能力と実務で求めた仕事が一致していたかも点検します。少人数の採用結果から精度を断定することは避け、質問で得られなかった情報や、採点根拠の不足を次の面接設計に反映しましょう。
求人情報と面接で評価する仕事を一致させる
面接の手応えを検討する際は、会話の印象に加えて、仕事に必要な行動の証拠が得られたかを点検します。共通の質問、回答を評価する基準、面接官ごとの記録を用意すると、候補者を比較する根拠を具体的に残せます。
面接で評価する仕事は、求人ページにも具体的に説明してください。実際の担当業務と期待する役割が公開されていれば、応募者も自分の経験と募集内容を照らして応募を検討できます。
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