想定読者

  • 自分の商品やサービスの品質に絶対の自信を持っているが、売上に繋がっていない職人気質のクリエイター、個人事業主
  • マーケティングや営業活動に、どこか「邪道だ」「押し売りみたいで嫌だ」という苦手意識を持っている方
  • 「自分のこだわりが、なぜ顧客に理解されないのか」と、孤独や憤りを感じている方

結論:顧客は「良いもの」を買うのではない。「価値が伝わったもの」を買うのだ

「誰にも負けない、最高のパンを焼いている」 「この技術は、世界中どこを探しても、うちだけのものだ」

その揺るぎない自信とこだわりは、ものづくりに携わる人間として、何よりも尊いものです。しかし、もしあなたが、そのこだわりだけでお客様が殺到すると信じているなら、それは非常に危険な「職人の傲慢」かもしれません。

悲しいですが、これが真実です。顧客は「良いもの」を買うのではありません。「自分にとって、価値があると“伝わった”もの」を買うのです。「作る努力」と「伝える努力」は、ビジネスにおける両輪。どちらが欠けても、あなたの事業は前に進みません。

この記事では、その「伝える努力」、すなわちマーケティングの本質について、解説していきます。

なぜ「いいもの」だけでは売れないのか?

顧客は「専門家」ではない

あなたは、毎日何時間も自分の商品やサービスと向き合っている、その道のプロです。しかし、お客様はそうではありません。あなたが「常識」だと思っている素材の違いや、製法の工夫、技術の凄みを、彼らは全く知らないし、見分けることもできません。あなたがその価値を言葉にして伝えなければ、彼らにとっては「ただの商品」でしかないのです。

情報は、届けなければ存在しないのと同じ

どんなに素晴らしい商品も、人里離れた山奥にポツンと置かれているだけでは、誰にも見つけてもらえません。ウェブサイト、SNS、チラシ、口コミ…どんな形であれ、顧客がいる場所に、あなたから情報を届けに行かなければ、その商品は、この世に存在しないのと同じなのです。

「比較」されて初めて、価値は認識される

顧客は、常に何かと何かを「比較」して、購入を決定します。あなたの商品の価値が正しく伝わっていなければ、彼らは唯一分かりやすい指標である「価格」で比較するしかありません。その結果、あなたのこだわりは無視され、安価な競合品に負けてしまうのです。

「伝える」を怠ることが、最大の機会損失

マーケティングを「面倒だ」「苦手だ」と避けることは、想像以上に大きな損失を生んでいます。

  • あなたのこだわりを知らずに、去っていく潜在顧客たち: あなたの商品なら解決できたはずの悩みを抱えたまま、彼らは競合の、それほど質の高くない商品を買ってしまいます。
  • 本当に価値を分かってくれるファンと出会う機会の損失: あなたの情熱に共感し、長くビジネスを支えてくれるはずだった「未来のファン」と、出会うことすらできません。
  • 結果的に、安売り競争に巻き込まれる: 価値が伝わらないため、価格で勝負するしかなくなり、利益を削り、心身ともに疲弊していくことになります。

価値を"伝える"マーケティングの具体的なステップ

マーケティングとは、商品を巧みに売るテクニックではありません。あなたのこだわりや情熱を、お客様が理解できる形に「翻訳」して、届ける誠実な活動です。

ステップ1:顧客の言葉で語る

専門用語や、作り手だけが分かる内輪のこだわりを語ってはいけません。顧客が普段どんな言葉を使い、どんなことに悩み、何を望んでいるのか。その言葉を使って、あなたの商品の価値を語り直しましょう。「〇〇製法」ではなく、「これを使うと、あなたの朝が、こう変わります」と伝えるのです。

ステップ2:利用シーンを想像させる

スペックや機能の羅列では、価値は伝わりません。その商品やサービスを利用することで、顧客の日常がどう豊かになるのか、具体的なシーン(Before/After)を想像させてあげましょう。写真や動画、お客様の体験談などが、その手助けとなります。

ステップ3:ストーリーを語る

なぜ、あなたはその商品を、その製法で作っているのですか?開発の裏には、どんな苦労や発見があったのでしょうか?その背景にある、あなただけの物語を語りましょう。人は、スペックではなく、作り手の「想い」に共感し、心を動かされる生き物です。

ステップ4:第三者の声で見せる

自分で「これは良いものです」と100回言うよりも、実際に使ったお客様の「これが最高でした!」という一言の方が、何倍も説得力を持ちます。お客様の声(レビュー)や、専門家からの推薦、メディア掲載実績など、客観的な評価を積極的に集め、見せていきましょう。

マーケティングは「作業」ではない。「愛情」だ。

「伝える努力」を、面倒な「作業」だと思わないでください。

それは、あなたが丹精込めて作った商品やサービスという、我が子のような存在を、世の中に正しく理解してもらうための、親としての「愛情表現」に似ています。

マーケティングとは、顧客との対話です。あなたが自信と愛情を持って、自分のこだわりを語れば、その熱量は必ず相手に伝わります。そして、その価値を本当に理解してくれた人が、あなたのビジネスを支える、最高のファンになってくれるのです。

よくある質問

Q: SNSやブログをやる時間があったら、もっと良いものを作りたいと思ってしまいます。

A: その気持ちは、職人として非常に健全です。しかし、ビジネスとして成立させるには、「作る時間」と「伝える時間」を、意識的に両方確保する必要があります。例えば、一日のうち1時間だけ、あるいは週に一日だけ、と決めて「伝える」ための時間を強制的に作ることから始めてみてください。

Q: 口下手で、自分の商品の良さをうまく説明できません。

A: 無理にうまく話そうとする必要はありません。むしろ、訥々とした語り口の方が、誠実さが伝わることもあります。大切なのは、流暢さよりも「なぜ、これを作っているのか」という、あなた自身の情熱の源泉を、自分の言葉で語ることです。文章でなら伝えられる、という方は、ブログや手紙などを活用するのも良いでしょう。

Q: 広告や宣伝にお金をかける余裕がありません。

A: マーケティングは、必ずしもお金がかかるものではありません。SNSでの発信、ブログ記事の執筆、既存顧客へのニュースレター、プレスリリースの配信など、お金をかけずに始められることは無数にあります。まずは、それらを試すことから始めましょう。

Q: 伝えた結果、「価値が分からない」と言われたら傷つきそうです。

A: 全員に理解してもらう必要はありません。あなたの価値が伝わるのは、100人中、数人かもしれません。しかし、その数人が、あなたのビジネスを支える熱狂的なファンになります。価値が分からない人は、そもそもあなたの顧客ではなかった、と割り切る勇気も必要です。

筆者について

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