想定読者

  • インフルエンサーマーケティングやコミュニティマーケティングの本質を理解したい方
  • 自社の商品がどのような「集団」に受け入れられることで市場に広まるのか、その戦略を考えたい経営者
  • 人の「憧れ」や「帰属意識」がどのように消費に結びつくのか、その心理を知りたい方

結論:私たちは、自分の「頭の中の理想の集団」の承認を求めて消費する

あなたは、何か少し高価な買い物をしようとする時、何を基準にその商品を選びますか?

商品の機能や価格、品質はもちろん重要です。しかし多くの場合、私たちの意思決定はそれだけでは決まっていません。私たちは無意識のうちに、頭の中である「集団」の顔を思い浮かべています。そして、「この選択をあの人たちならどう評価するだろうか?」と自問自答しているのです。

この、個人が自らの態度や価値観、行動を形成する際に、基準(リファレンス)として参照する集団のこと。それが「準拠集団(Reference Group)」です。

重要なのは、この集団は必ずしも自分が現実に所属している集団ではないということです。むしろ、多くの場合、それは自分が将来所属したいと強く憧れている集団なのです。

私たちは商品そのものを買っているのではありません。その商品を手に入れることで、「理想の集団の一員になれたような感覚」や、その集団から「承認されているような感覚」を手に入れようとしているのです。顧客を個人として孤立させて理解しようとしても、本質は見えてきません。顧客のその視線の先にいる「準拠集団」の正体を理解すること。それこそが、マーケティングの核心に迫るための鍵となります。

あなたの行動を陰で操る3種類の「準拠集団」

私たちは常に複数の準拠集団に囲まれて生活しています。そして、その関係性によって大きく3つの種類に分類することができます。

  1. 所属集団 (Membership Group) あなたが現実に所属している集団です。家族、会社の同僚、学校のクラス、趣味のサークルなどがこれにあたります。この集団の規範や常識、暗黙のルールは、私たちの最も基本的な行動に強い影響を与えます。「うちの部署ではこういう服装が普通だ」「ママ友の間ではこのブランドが流行っている」といった感覚は、この所属集団から生まれます。
  1. 憧憬集団 (Aspirational Group) あなたが将来所属したいと強く憧れている集団です。マーケティングにおいて最も重要視されるのがこの集団です。成功した起業家、人気のアスリート、お洒落なインフルエンサー、あるいは特定の思想を持つ知識人グループ。私たちは、その集団のメンバーに自分を少しでも近づけるために、彼らと同じ服を着て、同じ車に乗り、同じ本を読み、同じ思想を語ろうとするのです。
  1. 否定的準拠集団 (Dissociative Group) あなたが「こうはなりたくない」「あの人たちと同じだとは思われたくない」と強く反発を感じる集団です。私たちはその集団が支持するものを意図的に避けるという逆の行動を取ります。「いわゆる『意識高い系』が好きそうなこの商品は避けよう」「こういう『オジサン』たちが着るブランドの服だけは絶対に着たくない」といった感覚がこれにあたります。

「憧れ」をマーケティングにどう活かすか

この準拠集団の、特に「憧憬集団」の力を理解すれば、マーケティング戦略はより立体的になります。

  • インフルエンサーマーケティング これは憧憬集団の力を最も直接的に利用した手法です。インフルエンサーはフォロワーにとってまさに「憧れの存在」そのものです。彼らが商品を推薦する時、それは単なる機能紹介ではありません。「私のようなライフスタイルを送りたいなら、これを持つべき」という強力なメッセージとなるのです。
  • 顧客事例(ケーススタディ)の活用 特にBtoBマーケティングにおいて絶大な効果を発揮します。あなたの顧客の中で最も成功し、尊敬されている企業を事例として紹介するのです。それは潜在顧客に対して、「あなたの業界で成功しているあの会社は我々のサービスを使っていますよ」と語りかけます。その成功企業が潜在顧客にとっての準拠集団となり、強い説得力を生み出すのです。
  • コミュニティの醸成 あなたのブランドの周りに熱量の高い顧客コミュニティを作り出す。そうすると、その「コミュニティそのもの」が新しい顧客にとっての準拠集団となります。「このブランドのファンは皆楽しそうだ」「このコミュニティに自分も参加してみたい」という所属欲求が、購買の強い動機となるのです。

よくある質問

Q: 準拠集団は、年齢によって変わりますか?

A: はい、大きく変わります。一般的に、若い頃は友人グループや流行のカルチャー、憧れの有名人といった「憧憬集団」の影響を強く受けます。一方で、年齢を重ねるにつれて、職場の同僚や専門家集団、あるいは家族といった、より身近な「所属集団」の価値観や規範が重要になってくる傾向があります。

Q: 顧客の「準拠集団」を、どうやって知ることができますか?

A: 顧客に直接聞いてみるのが一番です。「普段、どのような雑誌やWebサイトを参考にしていますか?」「あなたがこの業界で尊敬している人は誰ですか?」といったシンプルな質問から、彼らが誰からどのような影響を受けているのか、そのヒントを得ることができます。顧客のSNSのフォローリストを見てみるのも非常に有効なリサーチです。

Q: 「否定的準拠集団」を、マーケティングに利用することもできますか?

A: はい、高度なテクニックですが可能です。例えば、Appleがかつて行った「Mac vs PC」の広告キャンペーンは、PCユーザーを少し古臭く退屈な「否定的準拠集団」として描き、それに対してMacユーザーをクリエイティブで進歩的な集団として位置付けることで、自社ブランドの魅力を際立たせました。ただし、この手法は敵を作りやすく、反感を買うリスクも伴います。

Q: 準拠集団の影響力は、高価な商品ほど強くなりますか?

A: その傾向は非常に強いです。特に、他人の目に触れる機会の多い自動車、ファッション、腕時計といった商品は、「自分が何者であるか」を他者に示すための記号としての役割を強く持ちます。そのため、その選択は準拠集団から極めて大きな影響を受けます。一方で、トイレットペーパーのような誰も見ていない商品を選ぶ際に、準拠集団を意識する人はほとんどいないでしょう。

筆者について

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