こんな人におすすめの記事です
- 個人事業主からの法人化(法人成り)を検討している方
- 一人で会社を設立しようと考えている起業家の方
- 株式会社と合同会社の具体的な違いや、メリット・デメリットを知りたい方
- 将来の事業展開を見据えて、最適な会社形態を選択したい方
結論:信用と資金調達なら「株式会社」、コストと自由度なら「合同会社」
個人事業主として事業が軌道に乗り、法人化を検討し始めた時、多くの人が最初に直面するのが「株式会社と合同会社、どちらを選ぶべきか」という問題です。設立費用の安さだけで合同会社を選んで良いのか、あるいは、一人なのに株式会社にする意味はあるのか、判断に迷うのは当然です。
結論から言います。会社形態の選択は、設立・維持コスト、社会的信用度、資金調達のしやすさ、経営の自由度という4つの主要な観点から、あなたの事業モデルと将来の展望に合わせて総合的に判断すべきです。一般的に、以下のように要約できます。
- 株式会社が適しているケース:外部からの資金調達(出資)を考えている、将来的な上場(IPO)を視野に入れている、BtoB取引などで企業の信用度を最大限に重視したい場合。
- 合同会社が適しているケース:設立・運営コストをできるだけ抑えたい、外部からの出資は想定しておらず、迅速かつ自由な経営を行いたい場合。
この記事では、この結論に至る根拠として、両者の違いを項目別に徹底的に比較・解説し、あなたが最適な選択をするための判断材料を提供します。
第1章:株式会社と合同会社の根本的な構造の違い
両者の違いを理解する上で最も重要なのが、「所有と経営」に関する考え方です。
- 株式会社 会社の所有者は、お金を出した株主です。そして、会社の経営は、株主から委任された取締役が行います。ひとり社長の株式会社では、自分自身が株主かつ取締役となり、所有と経営を兼任します。重要な意思決定は、会社の最高意思決定機関である株主総会で行われます。
- 合同会社 会社の所有者は、お金を出した出資者です。そして、この出資者のことを社員と呼びます(従業員とは意味が異なります)。合同会社では、原則として、この所有者(社員)自身が経営も行うことになります。会社の最高意思決定機関は、全社員で構成される社員総会です。
この「所有と経営」の分離が可能かどうか、という点が、後述する資金調達や経営の自由度に大きく影響します。
第2章:【徹底比較】設立・運営コストの違い
法人設立時、そして運営していく上でのコストは、両者で明確な差があります。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
設立費用(合計目安) | 約25万円〜 | 約10万円〜 |
┣ 定款の認証手数料 | 3万円〜5万円(公証役場) | 不要 |
┣ 定款に貼る収入印紙代 | 4万円(電子定款なら不要) | 4万円(電子定款なら不要) |
┣ 登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.7%(最低6万円) |
役員の任期 | 最長10年(任期満了ごとに変更登記が必要。費用発生) | 任期なし(変更登記は不要) |
決算公告の義務 | 義務あり(官報掲載で約6万円〜) | 義務なし |
設立費用だけで見ると、合同会社の方が約15万円安く設立できます。また、株式会社は役員の任期が定められており、任期満了のたびに役員変更の登記(数万円の費用)が必要ですが、合同会社にはその必要がありません。決算公告の義務もないため、運営コストも合同会社の方が低く抑えられる傾向にあります。
第3章:【徹底比較】社会的信用度と資金調達の違い
コスト面では合同会社に利点がありますが、信用度や資金調達の面では株式会社に利点があります。
社会的信用度 歴史が長く、世間一般での認知度が高いのは圧倒的に株式会社です。そのため、特に大企業との取引(BtoB)や、採用活動においては、株式会社の方が有利に働く場面があるとされています。ただし、近年は合同会社の認知度も向上しており、Apple JapanやGoogleなど、世界的な大企業も日本法人では合同会社の形態をとっているため、その差は以前ほど絶対的なものではなくなっています。
資金調達の方法 これが両者の決定的な違いの一つです。
- 株式会社は、新たに株式を発行することで、投資家やベンチャーキャピタルなど、外部から広く出資を募ることができます。これは、事業を大きくスケールさせたい場合に極めて重要な資金調達手段です。
- 合同会社は、株式という概念がありません。資金調達の方法は、金融機関からの融資(借入)か、新たな人物に出資してもらい社員として加入してもらうかのいずれかです。社員の追加には、原則として既存の全社員の同意が必要となるなど、手続きが煩雑で、大規模な資金調達には向いていません。
第4章:【徹底比較】経営の自由度と利益分配の違い
経営の意思決定や、利益の分配方法においても、両者には大きな違いがあります。
- 意思決定の迅速性 株式会社では、取締役の選任や重要な経営判断など、会社法で定められた事項は株主総会での決議が必要です。一方、合同会社は定款自治の範囲が広く、業務執行のルールなどを定款で柔軟に設計できます。ひとり社長の場合は大きな差はありませんが、複数人で経営する場合、合同会社の方がより迅速な意思決定が可能です。
利益の分配
- 株式会社では、利益の分配(配当)は、原則として出資比率(持株比率)に応じて行われます。
- 合同会社では、定款で定めることにより、出資比率に関係なく、自由に利益を分配することが可能です。例えば、出資額は少ないが、技術やノウハウで大きく貢献した社員に、多くの利益を分配する、といった柔軟な設計ができます。
第5章:あなたのビジネスに最適なのはどっち?目的別選び方ガイド
これまでの比較を踏まえ、あなたの事業目的別にどちらの形態が適しているかをまとめます。
- ケース1:将来的に外部からの出資を受け、事業の急拡大や上場(IPO)を目指す → 株式会社を選択すべきです。合同会社では、株式による資金調達ができません。
- ケース2:初期コストを抑え、まずはスモールビジネスとして始めたい(BtoCの店舗やWebサービスなど) → 合同会社が有力な選択肢です。設立・運営コストの低さと、経営の自由度の高さがメリットになります。
- ケース3:主な取引先が大手企業で、社会的な信用度を重視したい → 株式会社の方が、取引開始のハードルが下がる可能性があります。会社の公式サイトをしっかりと作り込み、信頼性を補うことも重要です。
- ケース4:特定のスキルを持つ複数のパートナーと、貢献度に応じて柔軟なルールで共同経営したい → 合同会社の、利益分配の自由度や定款自治の広さが適しています。
なお、事業の成長に合わせて、合同会社から株式会社へ組織変更することも可能です。そのため、まずは合同会社でスタートし、将来的に資金調達が必要になった段階で株式会社へ変更する、という戦略も有効です。
よくある質問
Q: ひとり社長の場合、役員報酬はどうなりますか?
A: 株式会社でも合同会社でも、自分自身への給与を「役員報酬」として経費に計上できます。これにより、給与所得控除が適用され、個人の所得税・住民税の節税に繋がります。これが法人化の大きなメリットの一つです。
Q: 合同会社は、本当に信用度が低いのですか?
A: 「低い」というよりは「株式会社ほど認知度が高くない」というのが実情です。Apple JapanやGoogle、Amazon Japanなど、多くの有名外資系企業が合同会社の形態をとっています。事業内容や取引先との関係性によります。
Q: 設立後に、株式会社から合同会社(またはその逆)に変更できますか?
A: はい、可能です。これを「組織変更」と呼びます。ただし、株主総会・社員総会の決議や、債権者保護手続き、登記申請など、煩雑な手続きと費用が発生します。
Q: 決算期はいつにすれば良いですか?
A: 自由に設定できます。一般的には、繁忙期を避ける、あるいは消費税の免税期間を最大限に活用するために、事業年度の開始月を調整する、といった観点から決定します。
Q: 会社設立の手続きは、司法書士や税理士に頼むべきですか?
A: 自分で行うことも可能ですが、専門家に依頼することで、時間と手間を大幅に削減でき、定款の内容などについても専門的な助言を受けられます。特に、電子定款を利用すれば収入印紙代(4万円)が不要になるため、専門家への報酬を考慮しても、結果的にコストメリットが生まれる場合があります。
筆者について
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