こんな人におすすめの記事です
- 税務署から「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の通知書」が届き、対応に困っている個人事業主・フリーランスの方
- 予定納税という制度の仕組みや、対象となる条件を正しく理解したい方
- 予定納税額の計算方法や、納付の時期・方法を知りたい方
- 業績が悪化した場合に、予定納税額を減額する方法があるか知りたい方
結論:予定納税は所得税の「前払い」。ペナルティではない
6月を過ぎたある日、税務署から「予定納税額の通知書」という見慣れない書類が届き、驚いた経験はありませんか。確定申告の時期でもないのに、高額な納税を求める通知が届けば、何かペナルティを課されたのではないかと不安になるのも無理はありません。
しかし、結論から言います。予定納税は、決してペナルティや追徴課税の類ではありません。これは、前年の所得を基に、その年の所得税の一部を前払いするという、法律で定められた制度です。むしろ、予定納税の通知が来るということは、前年の事業がそれだけ順調であった証拠とも言えます。
この記事では、この予定納税制度の仕組みを正しく理解し、慌てず適切に対応するための基礎知識を、対象者の条件から、具体的な計算方法、そして業績が悪化した場合の「減額申請」という重要な手続きまで、網羅的に解説します。
第1章:予定納税制度の目的と仕組み
なぜ、確定申告でまとめて納税するだけでなく、所得税を前払いする制度が存在するのでしょうか。その目的は、主に以下の2点です。
- 納税者の負担分散:年間の所得税を、確定申告時に一度にまとめて納付するのは、納税者にとって大きな負担になります。その負担を、年3回(予定納税2回+確定申告1回)に分散させる目的があります。
- 国の歳入の平準化:国の財源である税収が、確定申告の時期に集中するのを避け、年間を通じて安定した歳入を確保するという、国側の目的もあります。
このように、予定納税は納税者と国の双方の都合を考慮した、計画的な納税のための制度なのです。
第2章:誰が対象になるのか?予定納税基準額の計算
予定納税の対象となるのは、前年分の所得や税額などを基に計算した「予定納税基準額」が15万円以上になる人です。
この「予定納税基準額」は、基本的には、前年に納付した所得税額とほぼ同じような金額になりますが、厳密には以下のように計算されます。
- 前年の所得金額から、社会保険料控除や生命保険料控除などの「所得控除」を差し引いて、課税される所得金額を算出します。
- ただし、土地の譲渡所得や退職所得など、一時的に発生した所得(分離課税される所得など)は、この計算から除外されます。
- 上記で算出した課税所得金額に、所得税率を掛けて、年間の所得税額を計算します。
- この所得税額から、源泉徴収された税額を差し引いた金額が、予定納税基準額となります。
この計算は税務署が行い、対象となる人に対して、6月15日までに「予定納税額の通知書」を送付します。
第3章:いつ、いくら払うのか?納付の時期と金額
予定納税は、年2回に分けて納付します。それぞれの納付額と納付期限は以下の通りです。
第1期分
- 納付額:予定納税基準額の3分の1
- 納付期限:その年の7月1日から7月31日まで
第2期分
- 納付額:予定納税基準額の3分の1
- 納付期限:その年の11月1日から11月30日まで
納付方法は、通知書に同封されている納付書を使って、金融機関や所轄の税務署の窓口で支払う方法のほか、口座振替(振替納税)や、e-Taxを利用したダイレクト納付、クレジットカード納付など、複数の選択肢があります。
第4章:【重要】業績悪化時のための「減額申請」という選択肢
予定納税は、あくまで前年の所得を基に計算されています。そのため、当年の業績が前年より大幅に悪化した場合、前年ベースの税額を納付するのは大きな負担になります。そのような場合に備えて、予定納税額を減額してもらうための**「減額申請」**という手続きが用意されています。
減額申請が認められるケース
その年の6月30日の時点で、所得税の見積額が、予定納税基準額よりも低くなると見込まれる場合に申請が可能です。具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 廃業、休業、または事業の業績が著しく不振である場合
- 災害や盗難によって、事業に大きな損害を受けた場合
- 医療費控除や住宅ローン控除など、新たに受けられる控除が発生した場合
減額申請の手続きと期限
減額申請を行うには、「予定納税額の減額申請書」を作成し、所轄の税務署に提出します。申請書には、業績不振の理由や、今年の所得の見積額などを具体的に記載する必要があります。
申請には期限があり、それぞれ以下の通りです。
- 第1期分及び第2期分の減額申請:その年の7月1日から7月15日まで
- 第2期分のみの減額申請:その年の11月1日から11月15日まで
税務署が申請内容を審査し、承認されれば、予定納税額が減額またはゼロになります。資金繰りに不安がある場合は、この減額申請制度を積極的に活用することが重要です。
第5章:確定申告での最終的な精算
予定納税で支払った税額は、翌年の確定申告で最終的に精算されます。
確定申告では、1年間の正しい所得と所得税額を計算します。そして、その確定した年間の税額から、すでに支払った予定納税額(第1期分と第2期分の合計額)を差し引きます。
- (確定した年税額) > (予定納税額)の場合 → 差額を確定申告時に納付します。
- (確定した年税額) < (予定納税額)の場合 → 払い過ぎていた分が還付されます。
つまり、予定納税で多く払い過ぎていたとしても、確定申告で必ず精算されるため、最終的に損をすることはありません。
よくある質問
Q: 予定納税の通知が来ないのですが、対象ではないということですか?
A: はい。前年の所得などを基にした「予定納税基準額」が15万円未満の場合は、予定納税の対象とはならず、通知書は送付されません。
Q: 納付が遅れた場合、ペナルティはありますか?
A: はい。納付期限までに納付しなかった場合、延滞税が課される可能性があります。資金的に厳しい場合は、放置せずに、減額申請を検討するか、税務署に相談することが重要です。
Q: 予定納税額は、経費になりますか?
A: いいえ。所得税そのものは、事業上の必要経費にはなりません。したがって、予定納税額も経費として計上することはできません。
Q: 消費税にも予定納税(中間申告)はありますか?
A: はい、あります。前年の消費税の年税額が48万円を超えた事業者は、消費税の中間申告と納付を行う必要があります。所得税の予定納税とは別の制度です。
Q: 減額申請が承認されなかった場合は、どうすれば良いですか?
A: 申請が承認されなかった場合は、当初の通知書通りの金額を納付する必要があります。ただし、その場合でも、確定申告で年間の税額が確定すれば、払い過ぎた分は還付されます。
筆者について
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