こんな人におすすめの記事です

  • フリーランスや個人事業主として、初めて業務委託契約を結ぶ方
  • スタートアップの経営者で、自社の技術やアイデアを保護したい方
  • 企業の法務・営業・開発担当者で、取引先とNDAを締結する機会がある方
  • NDAの雛形をダウンロードしたが、自社用にどうカスタマイズすれば良いか分からない方

結論:NDAは情報資産を保護し、安全な取引を実現するための契約である

取引先から「まずNDA(秘密保持契約)の締結からお願いします」と言われ、内容を十分に理解しないまま署名してしまった経験はありませんか。あるいは、自社の重要な情報を守りたいが、具体的な方法が分からないという方もいるでしょう。DXの加速、スタートアップの増加、そしてフリーランスとの協業が一般化した現代において、NDAの重要性はかつてなく高まっています。

結論から言います。秘密保持契約書、通称NDA(Non-Disclosure Agreement) は、あなたの事業の根幹をなすアイデア、技術、顧客情報といった情報資産を、不正な漏洩や目的外利用から守るための法的な契約です。適切に設計されたNDAは、情報漏洩のリスクを低減させ、信頼できるビジネスパートナーシップを築くための土台となる、極めて重要な文書です。

この記事では、法律の専門家でなくてもNDAの本質が理解できるよう、その役割から、契約書に記載すべき全項目、雛形を利用する際の注意点、さらには契約後の情報管理体制まで、網羅的に解説します。

NDAとは?その目的と重要性

NDAとは、取引を行う上で相手に開示する必要がある自社の秘密情報を、第三者に漏洩したり、契約で定めた目的以外で利用したりしないことを、法的に約束させるための契約書です。その目的は多岐にわたります。

  • 情報漏洩の抑止: 違反した場合の損害賠償責任を定めることで、情報漏洩を未然に防ぐ効果が期待できます。
  • 信頼関係の構築: 重要な情報を開示する意思を示すことで、相手方との真剣な取引関係を築く第一歩となります。
  • 情報管理体制の明確化: NDA締結を機に、社内の誰が、どの情報に、どこまでアクセスできるのか、という情報管理体制を見直すきっかけになります。
  • 従業員の意識向上: 秘密情報を取り扱うことへの従業員の意識を高め、内部からの情報漏洩リスクを低減させます。

一方開示契約と相互開示契約:NDAの2つの基本類型

NDAには、情報の開示がどちらから行われるかによって、2つの基本的な型があります。

  1. 一方開示契約(One-way NDA): 自社だけが相手に秘密情報を開示する場合に用います。例えば、フリーランスに業務を委託する際に、自社の内部情報だけを開示するケースがこれにあたります。
  2. 相互開示契約(Mutual NDA): 自社と相手企業が、互いに秘密情報を開示し合う場合に用います。業務提携や協業の検討など、双方の内部情報を突き合わせて検討するケースで使われます。

どちらの立場で契約を結ぶのかを意識することが、自社にとって不利にならない契約を結ぶための第一歩です。

【雛形利用の前に】NDA必須12項目・完全チェックリスト

インターネットで入手できる雛形をそのまま利用することは、自社の状況に合わない条項が含まれている可能性があり、リスクを伴います。自社のビジネスを適切に保護するためには、これから解説する項目を理解し、自社に合わせて内容を修正することが不可欠です。情報を開示する側受領する側、双方の視点から解説します。

  1. 契約の目的:なぜ情報を開示するのかを具体的に定義します。
  • 開示側:目的を「〇〇に関する業務提携の検討のため」のように限定的に記述し、それ以外の目的で情報が利用されることを防ぎます。
  • 受領側:目的が狭すぎると、検討に必要な情報が得られない可能性があります。自社の作業範囲を考慮し、適切な目的設定を交渉します。
  1. 秘密情報の定義:何を秘密とするかを定めます。これはNDAで最も重要な条項の一つです。
  • 開示側:技術情報、財務情報、顧客リストなど、保護したい情報を網羅的にリストアップします。「秘密」と表示したものや、口頭で開示し後から書面で指定したものも対象に含めることが重要です。
  • 受領側:保護すべき範囲が不必要に広くないか確認します。特に**「秘密情報の除外規定」**は必ず確認すべき項目です。「開示前から知っていた情報」「独自に開発した情報」「相手の責任なく公になった情報」などは、秘密情報から除外されるという条項がなければ、追加を要求すべきです。
  1. 秘密保持義務:第三者への漏洩を禁止する義務です。例外として、弁護士や会計士などの専門家への開示が認められることが多いですが、その専門家にも同等の秘密保持義務を課すことを定めるのが一般的です。
  1. 目的外使用の禁止:第1項で定めた目的を達成するためにのみ情報を使用することを定めます。
  1. 複製の制限:秘密情報が記載された資料やデータについて、無断での複製を禁止します。業務上、複製が必要な場合は「目的達成のために合理的な範囲で必要最小限の複製を認める」といった修正を検討します。
  1. アクセス権者の限定:情報を知る必要がある役員・従業員にアクセスを限定し、それらの者にも契約内容を遵守させる義務を定めます。
  1. 返還・破棄義務:契約終了時、または開示側の要求があった場合に、情報を返還または破棄する義務です。「破棄したことを証明する書面」の提出を義務付ける条項を追加すると、より実効性が高まります。
  1. 有効期間と存続条項:NDA自体の有効期間(例:契約締結日から1年間)と、契約終了後も秘密保持義務が続く存続条項を定めます。
  • 開示側:情報の価値が維持される期間、義務も存続させる必要があります。顧客情報やノウハウは「最低でも5年間」、重要な技術情報なら「無期限」と設定することを検討します。
  • 受領側:義務が永久に続くことは管理コストの観点から現実的ではありません。情報の性質に応じた合理的な期間(例:1〜3年)への短縮を交渉します。
  1. 損害賠償:契約違反があった場合の金銭的な補償について定めます。
  • 開示側:「損害賠償額の上限」を設けず、発生した実損害額を請求できるようにします。また、損害額の立証が難しい場合に備え、「違約金」として具体的な金額(例:500万円)を定めることも有効です。
  • 受領側:無限の賠償リスクを避けるため「契約金額の範囲内」など、賠償額に上限を設定するよう交渉します。
  1. 差止請求権:情報漏洩が発生した場合、またはその恐れがある場合に、その行為をやめさせる(差し止める)権利があることを明記します。これは、損害賠償という事後的な救済だけでなく、被害の発生・拡大を未然に防ぐための重要な条項です。
  1. 準拠法:どの国の法律に基づいて契約を解釈するかを定めます。海外企業との契約では極めて重要な項目です。
  1. 合意管轄:裁判になった場合に、どこの裁判所を利用するかを定めます。自社の所在地を管轄する裁判所(例:「東京地方裁判所」)を指定することが、訴訟遂行上の負担軽減に繋がります。

契約後の情報管理体制の構築

NDAは、締結するだけでは機能しません。その内容に沿った情報管理体制を構築・運用することが不可欠です。

  • ラベリング:秘密情報を含む書類やファイルには「CONFIDENTIAL」「社外秘」といったラベルを明記します。
  • アクセス管理:サーバー上のデータであれば、フォルダやファイル単位でアクセス権限を厳格に設定します。
  • 管理台帳の作成:いつ、誰に、どのNDAに基づき、何の情報を開示したか、記録を残します。
  • 従業員教育:秘密情報を取り扱う際のルールについて、定期的に研修を実施します。

よくある質問

Q: 相手から提示されたNDAに、そのままサインしても大丈夫ですか?

A: 推奨しません。相手方が作成したNDAは、相手方に有利な内容になっている可能性があります。本記事のチェックリストを元に、自社に不利益な条項がないか確認し、少しでも疑問があれば修正を申し出るか、弁護士などの専門家に相談してください。

Q: NDAに収入印紙は必要ですか?

A: いいえ、秘密保持契約書は印紙税法上の課税文書に該当しないため、原則として収入印紙は不要です。

Q: フリーランス(個人)でも結ぶべきですか?

A: はい。組織的な支援がないフリーランスこそ、自らの権利と情報を守るために積極的に締結すべきです。クライアントから提示されない場合は、自ら契約書を準備して締結を提案する姿勢が、プロフェッショナルとしての信頼性を高めます。

Q: 相手がNDAに違反したら、どうすればいいですか?

A: 速やかに弁護士に相談してください。契約違反の事実を証明する証拠(メールのやり取りなど)を保全し、内容証明郵便による警告、裁判所への差止仮処分申立て、損害賠償請求訴訟といった法的措置を検討します。

Q: 電子契約サービスを使っても有効ですか?

A: はい、有効です。クラウドサインやGMOサインといった電子契約サービスは法的な証拠力が認められており、印紙代が不要、契約締結の迅速化、契約書の管理効率化といった利点があるため、活用が推奨されます。

筆者について

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