想定読者
- 初めて従業員を採用する小規模事業主
- 人件費の総額を正確に把握する必要がある経営者
- 採用後の資金計画まで見据えて判断したい人
結論
従業員1人を雇う費用は、給与額だけでは終わりません。 社会保険、労働保険、交通費、採用費まで含めて初めて本当の人件費が見えてきます。
時給や月給だけで採用判断をすると、想定より資金が減ります。 採用後に苦しくなる会社の多くは、売上不足だけでなく、人件費の見積もり不足を抱えています。採用前に必要なのは、給与ではなく総額で考えることです。
かかるお金は給与だけでではない!
求人を出す時、多くの人は時給や月給を基準に考えます。 しかし会社が負担する費用は、それだけではありません。
たとえば、月給20万円の従業員を採用しても、会社の負担は20万円で終わりません。 社会保険料の会社負担分、雇用保険、労災保険、交通費、採用費、教育コストまで加わります。
この差を見落とすと、採用後に利益が残らないという事態が起こります。 特に小規模事業では、1人分の人件費の見積もり違いが経営に直結します。
採用判断で見るべき数字は、給与額ではありません。 会社から出ていく総額です。
見えない人件費
人件費という言葉には、給与以外の費用も含まれます。 ここを分けて考えると、採用コストの全体像がつかめます。
会社が負担する主な費用には、
- 給与
- 賞与
- 社会保険料
- 労働保険料
- 交通費
- 採用費
- 教育費
- 福利厚生費
といったものがあります。 この中でも特に見落とされやすいのが、法定で発生する保険料です。
給与は目に入りやすい費用です。 一方で、保険料や採用費は後から効いてきます。だからこそ、採用前の段階で全体を把握する必要があります。
3つの固定負担
見えない人件費の中でも、毎月の負担に直結する項目は特に重要です。 ここを把握していないと、採用後の資金計画が崩れます。
社会保険料
社会保険料には、健康保険、介護保険、厚生年金保険があります。 会社はその一部を負担します。
この負担は小さくありません。 月給が上がるほど会社負担分も増えるため、給与額だけで採用コストを見積もると差が大きくなります。
法人では原則として加入が必要です。 個人事業でも条件を満たすと加入義務が発生します。パートやアルバイトでも対象になることがあります。
労働保険料
労働保険には、雇用保険と労災保険があります。 雇用保険は会社と従業員の双方が負担し、労災保険は会社が全額負担します。
特に労災保険は、業種によって料率が変わります。 事務系と建設系では負担感が大きく違います。業種ごとの差まで見ないと、正確な試算にはなりません。
交通費と諸手当
交通費は軽く見られがちですが、人数が増えると無視できません。 住宅手当や資格手当を出す会社では、さらに負担が増えます。
求人票に書いた条件は、そのまま固定費になります。 採用時の見栄えだけで条件を盛ると、後から利益を圧迫します。
時給1200円でも負担額はここまで増える
数字で見ると、見えない人件費の重さがよくわかります。 たとえば、時給1200円で月120時間働くパートを採用したとします。
給与だけで見ると、
- 時給1200円 × 120時間 = 144000円
です。 ここに交通費5000円が加わると、支給額は149000円になります。
さらに会社負担として、
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 労災保険料
が発生します。 条件によって差はありますが、会社負担分を加えると月額は17万円前後まで膨らきます。
時給1200円で採用したつもりでも、会社が負担する実質時給はそれより高くなります。 この差を知らずに採用すると、利益計画が狂います。
採用前に見るべき3つの数字
採用で失敗しないためには、感覚ではなく数字で判断する必要があります。 特に見るべきなのは、売上、粗利、総人件費の3つです。
1人あたり売上
従業員1人がどれだけ売上を生むかを見ます。 売上が人件費を上回るだけでは足りません。
材料費や家賃、広告費まで含めると、必要な売上はさらに上がります。 人を増やせば売上が伸びるという発想だけでは危険です。
粗利とのバランス
人件費は粗利から払います。 売上が高くても粗利が薄い業種では、採用の負担は重くなります。
飲食、小売、サービス業では特にこの視点が重要です。 採用前には、1人増やした時に粗利がどこまで残るかを確認する必要があります。
総人件費
最終的に見るべきなのは、給与ではなく総人件費です。 保険料、交通費、採用費、教育費まで含めた数字で判断します。
この数字が見えていれば、価格設定も変わります。 採用後に慌てる会社と、利益を残せる会社の差はここにあります。
よくある質問
Q: 従業員を1人雇ったら社会保険は必ず必要ですか?
A: 法人は原則として加入が必要です。個人事業でも条件を満たすと加入義務が発生します。パートやアルバイトでも対象になることがあります。
Q: 試用期間中でも保険料は発生しますか?
A: 発生します。加入条件を満たしていれば、試用期間中でも社会保険と労働保険の対象になります。
Q: 業務委託なら会社負担は発生しませんか?
A: 雇用契約ではないため、通常は社会保険料や労働保険料の会社負担は発生しません。ただし実態が雇用と判断されると問題になります。
Q: 人件費は給与の何倍で見れば良いですか?
A: 業種や条件で差はありますが、給与額だけで判断するのは危険です。保険料や諸経費まで含めた総額で試算する必要があります。
筆者について
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