こんな人におすすめの記事です
- フリーランスや個人事業主として活動を始めたばかりの方
- クライアントから「源泉徴収をお願いします」と言われ、対応に困っている方
- 請求書の作成方法、特に源泉徴収税額の書き方が分からない方
- 源泉徴収と確定申告の関係性を正しく理解したい方
結論:源泉徴収は「所得税の前払い」。仕組みの理解が必須
クライアントに提出した請求書で「源泉徴収税額」の欄が空欄だったり、そもそも源泉徴収についてよく分からなかったり、という経験はありませんか。特に個人事業主やフリーランスとして活動を始めたばかりの方にとって、源泉徴収は最初の関門の一つです。
結論から言います。源泉徴収とは、報酬を支払う側の企業(クライアント)が、あなたに代わって、あらかじめ所得税の一部を国に納める制度です。個人事業主の立場から見れば、これは所得税の前払いに他なりません。この仕組みを正しく理解し、適切に処理することが、円滑な取引と正確な納税の第一歩となります。
この記事では、源泉徴収制度の基本から、対象となる報酬の範囲、具体的な計算方法、請求書の書き方、そして確定申告での最終的な精算方法まで、順を追って分かりやすく解説します。
第1章:源泉徴収制度の基本
源泉徴収とは、給与や報酬などを支払う者(支払者)が、その支払額から所得税などを差し引き、それを国に納付する制度です。なぜこのような制度があるかというと、国が効率的に税金を徴収するため、そして納税者が一度に多額の税金を納付する負担を軽減するためです。
会社員の場合、毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末調整で精算されます。個人事業主の場合も、特定の報酬を受け取る際に所得税が源泉徴収され、年に一度の確定申告で最終的な税額を計算し、精算するという流れになります。
第2章:【重要】源泉徴収の対象となる報酬・ならない報酬
個人事業主のすべての仕事が、源泉徴収の対象になるわけではありません。対象となる報酬は、所得税法第204条で限定的に定められています。代表的なものは以下の通りです。
- 原稿料、脚本料、挿絵料、翻訳料、通訳料、校正料など
- デザイン料(ウェブデザイン、グラフィックデザインなど)
- 講演料、教授・指導料
- 弁護士、公認会計士、税理士、司法書士など、特定の資格を持つ者へ支払う報酬
- プロ野球選手、プロサッカー選手、プロテニス選手、モデル、外交員などに支払う報酬
- 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬
- 宴会等で接待等を行うコンパニオンや、バー、キャバレー等のホステスに支払う報酬
- 契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
注意点:例えば、ウェブサイト制作業務において、デザイン部分は源泉徴収の対象ですが、コーディングやプログラミング部分は対象外とされています。このように、一つの業務に複数の性質が含まれる場合は、契約内容を精査し、どこまでが対象範囲かを発注者と確認することが重要です。
第3章:源泉徴収税額の具体的な計算方法
源泉徴収される税額の計算方法は、原則として以下のように定められています。
- 支払金額(報酬・料金)が100万円以下の場合 源泉徴収税額 = 支払金額 × 10.21%
- 支払金額(報酬・料金)が100万円を超える場合 源泉徴収税額 = (支払金額 - 100万円) × 20.42% + 102,100円
※この税率には、所得税(10%または20%)に加えて、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が含まれています。
計算例
- 例1:請求額が20万円(税抜)の場合 200,000円 × 10.21% = 20,420円
- 例2:請求額が150万円(税抜)の場合 (1,500,000円 - 1,000,000円) × 20.42% + 102,100円 = 203,200円
消費税の扱い
請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されている場合は、消費税を含まない税抜の報酬額を基に源泉徴収税額を計算するのが原則です。トラブルを避けるためにも、請求書は税抜額と消費税額を分けて記載しましょう。
第4章:請求書の具体的な書き方
源泉徴収が必要な業務の場合、請求書には以下の項目を記載するのが一般的です。
- 請求金額(税抜):報酬そのものの金額
- 消費税:請求金額に対する消費税額
- 合計金額:上記1と2を足した金額
- 源泉徴収税額:税抜の請求金額を基に計算した金額
- 差引支払額(振込金額):合計金額から源泉徴収税額を差し引いた、実際に振り込まれる金額
【記載例】
項目 | 金額 |
---|---|
請求金額(税抜) | 100,000円 |
消費税(10%) | 10,000円 |
合計 | 110,000円 |
源泉徴収税額(10.21%) | -10,210円 |
差引支払額 | 99,790円 |
第5章:確定申告で税金を精算する
源泉徴収された税金は、あくまで「所得税の前払い(仮払い)」です。年間の最終的な所得税額は、確定申告によって決定されます。
確定申告では、1年間の総収入から必要経費を差し引いて「所得」を計算し、そこから各種控除を引いて、納めるべき所得税額を算出します。この算出された所得税額と、1年間で源泉徴収された税額の合計を比較します。
- 源泉徴収された額 > 納めるべき税額 → 払い過ぎた分が還付されます。
- 源泉徴収された額 < 納めるべき税額 → 不足分を追加で納税します。
この精算手続きを行うためにも、クライアントから送付される支払調書(1年間の報酬額と源泉徴収税額が記載された書類)は、確定申告の際に重要な参考資料となります。
よくある質問
Q: 報酬の支払者が法人の場合、すべて源泉徴収が必要ですか?
A: いいえ。支払者が法人であっても、その報酬が所得税法第204条に定められた源泉徴収の対象業務でなければ、源泉徴収の必要はありません。
Q: クライアントが源泉徴収をしてくれませんでした。どうすれば?
A: 源泉徴収は支払者の義務です。もし徴収されなかった場合でも、あなた自身の納税義務がなくなるわけではありません。確定申告で、その報酬を含めた上で、年間の所得税を正しく計算し、納付する必要があります。
Q: 請求書に源泉徴収税額を書き忘れたら?
A: 速やかに修正した請求書を再発行しましょう。支払者であるクライアントが、源泉徴収税額を計算し、納税する義務を負っているため、正しい金額を伝える必要があります。
Q: 復興特別所得税とは何ですか?
A: 東日本大震災からの復興のための財源確保を目的として、2013年から2037年まで、所得税額に対して2.1%が追加で課される税金です。源泉徴収の税率に含まれています。
Q: 交通費や宿泊費も源泉徴収の対象になりますか?
A: 原則として、報酬の支払者が直接、交通機関やホテルに支払い、あなた自身がお金を受け取らない場合は、源泉徴収の対象にはなりません。しかし、報酬と交通費などが明確に区分されず「旅費込みで〇〇円」として支払われる場合は、その全額が源泉徴収の対象となるため注意が必要です。
筆者について
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